妖怪草紙 ☆☆☆

(妖怪草紙 / 荒俣 宏&小松 和彦 / 学研M文庫 2001)

文化人類学者で民俗学の視点から妖怪や呪(まじな)いの研究を続けるアカデミズム代表の小松和彦さんと、アマチュアの立場から妖怪学の研究を続けてきたディレッタントの泰斗・荒俣宏さんが、日本の歴史の裏面にうごめくあやかしや妖怪に関して、薀蓄の限りを傾ける対談集です。

内容を簡単に紹介していきましょう。

「序論・安倍晴明伝承を遊覧する」:陰陽師の代表格・安倍晴明に関して、小松さんが史料に基づいて簡単に解説しています。

ここからは、おふたりの対談となります。
「第一談 暗闇の章」:平安や室町の世では実体を有して「存在」していた妖怪たちが、江戸期に入ると読本や芝居に登場する「絵空事」になってしまった事情を考察します。妖怪が登場するときに出る「音」のバリエーションが極端に少ない、という意外な事実も。

「第二談 河童の章」:水の化け物としてもっともポピュラーな「河童」の系譜と、実在の生き物(カメやスッポン)との関係、陰陽師や大工が使役した人形との関連など、知っていたようであまり知らなかった事実を知ることができます。また、後の身分制度への影響なども考察されています。

「第三談 龍宮の章」:「異界」の代表としての「龍宮」を分析するとともに、龍宮へ行った者が授けられる「玉」の正体、「龍」の存在意義などが語られます。そこから派生して、物語のヒーローたち(桃太郎や一寸法師)の敵対者としての「鬼」や怪物たちの哀しみにも思いを馳せます(たしかに「鬼が島」の鬼たちは、悪いことをしているわけでもないのに、一方的に「退治」されて、宝物を強奪されてしまいますね(^^;)。

「第四談 天狗の章」:当初は彗星や流星などの「凶星」を表していた「天狗(アマツキツネ)」が、人間型に変貌していく経緯を概観するとともに、日本古来の呪術の系譜を解説します。

「第五談 釣糸の章」:「釣り」と妖怪や怪談には、かなり深い関係があります(前日読んだ荒俣さんの「ゑびす殺し」なども、こちらと併読すると、もっと楽しめたと思います)。それに釣り糸に限らず、「糸」というものは、現世と異界をつなぐ重要なアイテムであるわけです。さらに、社会には「魔が潜む場」が必要であるという、至極もっともな議論も。

「第六談 狐狸の章」:キツネもタヌキも化けますが、その本質には大きな違いがあります。ほかにも「化ける獣」はいますが、狐狸に比べると、どれもマイナーです。

「第七談 付喪の章」:道具や器物が化ける「付喪神」は、ヨーロッパにはないそうです。現代の都市伝説でも、「器物が化ける」話のバリエーションが様々に存在しています。

「後論・メトロポールに幽霊が出るまで」:今後、東京で「魔のもの」が出現・跳梁する場所は、荒俣さんの考えでは六本木だそうです。あそこは妖怪が出なくても「魔界」という気がしますが(^^;

オススメ度:☆☆☆


妖怪草紙 (学研M文庫) - 宏, 荒俣, 和彦, 小松
妖怪草紙 (学研M文庫) - 宏, 荒俣, 和彦, 小松

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