虎の牙/透明怪人 ☆☆☆

(虎の牙/透明怪人 / 江戸川 乱歩 / 江戸川乱歩推理文庫 1987)

引き続き、乱歩の少年探偵団もので、「怪奇四十面相」の直前に書かれた長篇2作です。こちらは、「怪奇四十面相」や「宇宙怪人」に比べて、比較的まとも(笑)です。

「虎の牙」:世田谷区の屋敷町の空き地で野球をしていた少年たちの前に、奇妙ないでたちの初老の男が現れます。伸ばした髪や口ひげは虎の毛皮のような黄色と黒の二色に分かれており、鼈甲ぶちの眼鏡に真っ赤な唇の男は“魔法博士”と名乗り、近所の洋館に引っ越してきたのだと語ります。そして空中から野球道具を取り出して少年たちに与えると、魔法の屋敷を見学しに来るよう誘うのでした。その後、少年のひとり天野勇一の家で、不思議な出来事が起こります。ウサギ小屋が滅茶滅茶に壊され、木の幹には鋭い牙か爪でえぐったような傷がついていました。おまけに、四つの庭で宙に浮いたウサギが少しずつ空気に溶け込むように消えてしまいます。
その後、再び魔法博士に誘われた勇一は、親類の小林少年(もちろん少年探偵団の団長)に一緒に来てもらうことにします。他にも招待された近所の少年少女や親たちと一緒に魔法博士の屋敷を訪れた二人は、鏡の間や迷路、舞台上での奇術(現代風に言えばイリュージョン)に驚かされます。最後に勇一が、空中浮遊術の対象として舞台に呼ばれ、宙を漂った挙句、足からだんだんと姿が消えてしまいます。猛獣のうなり声と共に魔法博士もいなくなり、舞台は騒然とします。窓から外を覗いた小林少年は、ヤモリのように壁を這い下りていく怪人(顔は魔法博士のそれでした)を目撃します。通報を受けて駆け付けた警官と共に近所を捜索した小林少年は、近所の神社の柱に鋭い牙か爪の痕を発見します。
1週間後、探偵団に所属する3人の少年、花田、石川、田村と共に勇一の家を訪ねた小林少年は(本来なら、怪事件の謎を解くため明智小五郎に出馬を仰ぐところですが、明智は病気で寝込んでいるといいます)、勇一から自筆の手紙が届いていることを知らされます。居場所は言えないが、大事にされているので心配しないでほしい、というものでした。その晩、花田少年は部屋の窓に現れた虎に催眠術をかけられたようになり、誘拐されてしまいます。連れて行かれたのは魔法博士の洋館でしたが、花田は勇一少年と出会い、檻に入れられている巨大な虎を目にした後、麻酔で眠らされ、気付くと近くの原っぱに倒れていました。花田少年の通報を受けた警官隊が魔法博士の洋館に乗り込みますが、屋敷はもぬけの殻で、虎や勇一がいた形跡もありません。
探偵事務所のベッドで静養していた明智は、小林少年から事件のあらましを聞くと、何事かを少年に耳打ちします。その指示に従って(?)怪しい紙芝居の老人を尾行した小林少年は、老人(もちろん魔法博士の変装)の罠にかかって捕えられ、花田少年と同じように洋館に幽閉されます。ところが、あることに気付いた小林少年は、魔法博士の大掛かりなトリックに思い当たるのでした(読者も、ピンと来るはずです)。魔法博士と対峙する小林少年ですが、魔法博士は、次は明智探偵を招待するつもりだと嘯き、偽警部を使って、あっさりと明智を拉致してしまいます。しかし、当然ながら、それは明智の計略で(拉致されたのは替え玉でした)、逆襲に転じた明智は魔法博士の正体(もちろん見え見えですね(^^;)を暴き、怪盗対名探偵の真の対決の幕が切って落とされます。魔法博士――いや怪人二十面相は、隠されたトリックを使って屋敷を脱出し、明智夫人の文代を狙いますが、探偵夫婦と少年探偵団の連係プレイのほうが上回っていました。

「透明怪人」:小学6年生の島田少年と木下少年は、古道具屋のショーウィンドウを覗き込む不気味な男を目撃し、好奇心にかられて後をつけ始めます(実は、さらにその後を尾行している男がいるのですが、それには気付きません)。男は町の寂しい一角に建つ煉瓦の廃屋に入り込むと、二人が覗いているのを知っては知らずか、シャツ、ズボン、帽子、靴と靴下を脱ぎ、かぶっていた真っ白な仮面を外していきます。その結果、男の姿はかき消えてしまいました――つまり、男は透明人間だったのです。驚いている二人に、尾行していたもう一人の男性――東洋新聞社会部の記者、黒川が声をかけ、自分は特ダネを透明人間の謎を追っているのだと語ります。実際、黒川は何度か、透明人間の仕業としか思えない怪奇な出来事を目撃しているといいます。
透明人間の実在を証拠立てるように、今度は木下少年の目の間で、デパートに透明人間が出現して(←これは間違い。ピンク・レディーが歌っているように「現れないのが透明人間です」(^^;)騒ぎを起こします。続いて、島田少年の家で誰もいないのにローラースケート靴が動き、障子に不気味な影が映ります(慌てて窓を開けても、誰もいません)。実は、島田家には真珠塔と呼ばれる高価な置物がありました。黒川記者が空気男と名付けた怪人は、真珠塔を狙っているようで、大胆にも犯行時刻を記した予告状までよこします。警察と少年探偵団に警備を固めてもらい、島田少年の父、黒川記者らは真珠塔を収めた金庫がある地下室にこもりますが、予告された午後9時を過ぎると、金庫から真珠塔は消え去っていました。
島田家の庭先から出て来る怪しい影を見たというルンペンの証言で、服を着た空気男が車で逃走したことが明らかになりますが、その車のトランクには、少年探偵団の副団長・大友少年が潜んでいました。空襲で焼け野原となったままの原っぱの防空壕を改造したらしい空気男のアジトに潜入した大友少年ですが、空気男が服を脱いだり水を飲むのを目撃した後、不気味な老人に捕まってしまいます。老人は、人間を透明にする薬品を完成させたと語り、現在、3人の透明人間がアジトにいるつ告げた後、大友少年も麻酔をかけられて透明人間にされてしまいます。怪老人は、透明人間の軍隊を作れば、世界征服も可能だと嘯くのでした。
一方、小林少年をはじめ少年探偵団の面々は、大友少年の行方を捜していましたが、大友少年が道々残していった少年探偵団バッジが手掛かりとなり、防空壕の入り口を発見します。中村警部が率いる警官隊や黒川記者と共に探偵団は防空壕へ踏み込みますが、透明人間は隙をついて脱出し、大友少年も見つかりませんでした。ここに至って、警察も名探偵・明智小五郎の出馬を求めることにします。ところが、それにタイミングを合わせるように、明智宛に例の怪老人から手を引けという脅迫の電話が入ります。文代夫人と何やら打ち合わせた明智は、車で警視庁へ向かおうとしますが、透明人間の罠にかかり、連れ去られてしまいます(このあたりの展開が毎回ワンパターンなのは、仕方がないことでしょうか(^^;)。中村警部と黒川記者は運転手に化けた透明人間を追いますが、逃げられてしまい、現場には次は明智文代を狙うという予告状が残されていました。
中村警部や黒川記者は、文代の身辺警護を固めますが、敵の陽動作戦にかかり、文代は連れ去られてしまいます。ところが、これこそが透明怪人を操る怪老人(当然ながら、正体はおわかりですよね(^^;)に対して仕掛けられた罠でした。捕えられた怪老人は警視庁に連行されますが、取調室には3人の明智小五郎が現れる始末。真犯人は、どの明智小五郎なのでしょうか。

オススメ度:☆☆☆


虎の牙;透明怪人 (江戸川乱歩推理文庫) - 江戸川 乱歩
虎の牙;透明怪人 (江戸川乱歩推理文庫) - 江戸川 乱歩

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