帝国を継ぐ者 ☆☆☆☆

(帝国を継ぐ者 / ウィリアム・C・デーツ / ハヤカワ文庫SF 2005)

「天空の秘宝」に続く、『ギャラクティック・バウンティ』シリーズの第2巻です。日本語版はこの巻で打ち止めですが、本国では第4巻まで出て、完結しているようです。
主人公サム・マッケイド以下、登場人物の何人かは前作と共通していますから、第1巻から読むのがベストですが、ストーリーは独立していますから、この巻だけでも十分に楽しむことができます。

「天空の秘宝」の冒険を終えた銀河の賞金稼ぎ(つまりギャラクティック・バウンティ)サム・マッケイドは、前回のターゲットだったブリッジャー大佐の娘セーラと結婚し、セーラが首席政務官を務める惑星アリスで束の間の余暇を楽しんで(?)いました。しかし、アリスで最も危険な猛獣アイスキャットとの死闘から生還したばかりのサムに、前回も厄介な仕事を押し付けてきた地球帝国航宙軍情報部のスワンソン=ピアスから呼び出しを受け、セーラと共に軌道上の巡宙艦"ヴィクトリー"に赴きます。ピアスの依頼は、地球帝国皇帝の崩御を受けて、数年前から行方不明になっているアレクサンダー皇子を探し出してほしいというものでした。皇帝には二人の後継者がいましたが、様々なことに手を出した挙句、姿を消してしまったアレクサンダーと異なり、妹のクローディア皇女は航宙軍で鍛えられたタカ派でした。もしクローディアが皇位を継げば、人類と敵対するイル・ローン人に対して強硬策を取ることは明らかで、そうなれば人類とイル・ローン人の間で全面戦争になる可能性もありました。全面戦争を避けたい情報部としては、皇帝の喪が明けるまでに何としてもアレクサンダーを見つけ出して、彼を皇位に就けなければならないわけでした。詳しい話を聞こうとしていると、"ヴィクトリー"は不意に出現した宇宙艦から魚雷攻撃を受けますが、相手はイル・ローン艦や宙賊ではなく、航宙軍の戦闘艦のようでした。つまり、ピアスの行動に気付いたクローディア皇女が手を打ってきたわけです。おまけに、クローディアは暗殺者ギルドに働きかけ、サム・マッケイドの暗殺を依頼したこともわかります。
セーラの後押しで(人類とイル・ローン人が全面戦争になれば、前線に近い惑星アリスが危険になるのは当然で、アリスの首席政務官として、セーラは何としてもアレクサンダーに皇帝になってもらわなければなりません)ピアスの依頼を引き受けたサムは、前作でも一緒に戦った巨漢戦士リコと環境適応人間(オクストーン人のような人間凶器)フィルを連れ、元航宙軍の偵察艇(現在はサムの持ち船)"ペガサス"で地球へ向かいます。ピアスの情報では、クローディア皇女の親友レディ・リネアがアレクサンダーの行方に関する手掛かりを握っているといいます。宿に落ち着いたサムは、リコとフィルが陽動作戦で暗殺者ギルドや皇女派の航宙軍の注意を引き付けている隙に、レディ・リネアの屋敷を訪問します。レディ・リネアは皇女の親友ではありますが、アレクサンダーの恋人でもありました。レディ・リネアは、サムに多面体のダイスを示し、アレクサンダーは皇位と関係ない一人の青年として人生を歩むべく、"ジョーヨーの小惑星"に向かったことを告げます。"ジョーヨーの小惑星"とは、中空の小惑星全体を娯楽の殿堂とした太陽系一の歓楽地でした。
早速“ペガサス”で“ジョーヨーの小惑星”へ向かおうとしたサムの一行ですが、クローディア皇女の公式の“招待”を受け、死を賭けた三次元戦闘ゲームの会場へ連れて行かれます。そこで待っていたのは、ゲームの勝者である暗殺者ギルドの暗殺部隊でした。銀河系中に生中継される“公認暗殺”の対象となったサムは、リコとフィル、そして“いいシーン”を放送したいアナウンサーの援護(笑)を受けて勝利を収め、“ジョーヨーの小惑星”へ向かいます。
“ジョーヨーの小惑星”へ着いたサムは、スタッフからいじめられている金属球を助け、自室に連れて行きます。サイはサイボーグの略で、もとは生身の人間でしたがギャンブルに熱中するあまり自分の身体を次々に賭けていき、ついに脳以外をすべて取られて、現在はオーナーのジョーヨーのためにスパイ活動をしていました。サムは、レディ・リネアから見せられたダイスが使われるのは“運命ゲーム”と呼ばれ、勝てば自分が望んだ新たな人生に足を踏み出せる一方、負ければ別の意味で新たに過酷な運命を課されることになる、という情報をサイから得ます。アレクサンダーが運命ゲームに挑戦したことは間違いなく、サムはサイに、ゲーム参加者の運命に関するデータをハッキングして入手するよう頼むとともに、さらなる情報を求めて運命ゲームの仕切り役であるシルクという女性にコンタクトしますが、サムの行動を怪しんだオーナーのジョーヨーに捕えられてしまいます。結局、サムは過酷な奴隷惑星ワームへ送られることになりますが、なんとワームは、偽名を使っていたアレクサンダーが送り込まれた(サイが入手したリストに載っていました)のと同じ惑星でした。
ワームでは、残虐な所長のトーブや腹心のホワイティの支配の下、囚人たちが地下での過酷な労働に従事させられていました。惑星の名のもとになった巨大なワーム(ヤツメウナギの化け物のようなイメージ。FFによく出てきますね)が生んだ卵が変質した貴重な宝石を採取するという、死と背中合わせの労働です。サムは信頼できそうな古参の囚人スピゴットと懇意になり、様々な情報を得ますが、多数の囚人の中にアレクサンダーらしい人物は見つかりません。嫌われ者の牢名主的存在の囚人アニマルを殺したサムは、囚人たちの新リーダーに祭り上げられてしまいます。その時、ウォーカーと名乗る不思議な能力を持った青年が夢の中でサムにコンタクトし、「探し物の在処を知っている」というメッセージを残します。やがて、ワームに追われたスピゴットを助けようとしたサムは、行きがかり上ホワイティを殺してしまい、囚人たちの反乱を先導する立場になってしまいます。地上に出てトーブの指揮ドームを襲撃した囚人たちは、ウォーカーの犠牲で反乱を成功させます。生前のウォーカーがサムにした話によれば、ウォーカー(本名ポラード)は“道”を追求する宗教集団(『デュマレスト・サーガ』の宇宙友愛教会のようなもの?)の一員で、サムのような人物が現れるのを待っていたのでした。
軌道上で待機していた“ペガサス”に迎えに来てもらったサムは、ウォーカーが教えてくれたアレクサンダーがいる惑星の座標を目指して発進しますが、宇宙空間ではクローディア皇女率いる航宙軍艦隊が待ち受けていました。大胆な操艦でかろうじてハイパースペースへ逃れた“ペガサス”ですが、航宙軍はウォーカーが発射した暗号通信ミサイルを拿捕しており、“ペガサス”が向かう座標が判明してしまいます。
次の目的地、惑星ウィンドは、その名の通り常に強風が吹き荒れ、砂嵐が地上を席巻する世界でした。サム、リコ、フィルは宇宙港の酒場で、空賊ウィンド・ライダーズと険悪になっていた黒人女性マーラを助けますが、マーラはポラードの恋人で、アレクサンダーがいる“鐘の家”へサムたちを案内するためにやってきたのでした。砂嵐の中でも動ける巨大獣ヌアーグに乗って出発した一行ですが、途中、ウィンド・ライダーズの襲撃を受け、ヌアーグを失いますが、“道”教団が送り込んでくれた無人の風力車で旅を続けますが、途中の居留地トレイルヘッドは航宙軍の皇女の腹心テラー少佐の部隊により焼き払われていました。テラー少佐の部隊はクローラーで“鐘の家”へ向かっていましたが、ウィンドの砂嵐を甘く見ていた部隊はクローラーを失って孤立し、忍び寄ったサムたちにあっさり武装解除されてしまいます。
ようやく“鐘の家”に到着したサムは、探し求めていたアレクサンダーと出会いますが、“道”の教えに影響を受けた皇子は、聞いていたような気まぐれな青年ではなく、次期皇帝にふさわしい人格者になっていました。テラー少佐とウィンド・ライダーズの逆襲を切り抜けた一行は、“ペガサス”で出発しようとしますが、軌道上には皇女の率いる航宙軍艦隊が待ち受けていました。それを察したサムは、旧式の救命艇を使ってアレクサンダーだけを地球へ向けて脱出させる計画を練りますが――。

舞台となる惑星が目まぐるしく変わり、その都度、思わぬ味方が現れるという、やや予定調和的展開はありますが、説得力のある“燃える展開”なので、まったく無問題です。スピーディに話が進み過ぎて、やや不満が残るという欠点はありますが、時間の余裕があるときに一気読みをお勧めします。

オススメ度:☆☆☆☆


帝国を継ぐ者―ギャラクティック・バウンティ (ハヤカワ文庫SF) - ウィリアム・C. ディーツ, Dietz,William C., 伯好, 斉藤
帝国を継ぐ者―ギャラクティック・バウンティ (ハヤカワ文庫SF) - ウィリアム・C. ディーツ, Dietz,William C., 伯好, 斉藤

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