復讐への航路 ☆☆☆☆☆

(復讐への航路 / エリザベス・ムーン / ハヤカワ文庫SF 2005)

宇宙SF『若き女船長カイの挑戦』のシリーズ第2作です。
物語は第1作の直後から始まります(ストーリーは独立していますが、当然ながら第1作とのつながりも大きいため、そちらを先に読んでおくほうが望ましいのは言うまでもありません)。第1作の事件を切り抜けたカイラーラ(カイ)・ヴァッタは、“グレニーズ・ジョーンズ”から名前を変えた老朽船"ゲーリー・トバイ"をベリンタの宇宙港に停泊させたまま、次の積み荷を見つけようと忙しく動き回っています。ヴァッタ航宙を経営する父ジェラードから指示された当初の予定通り、惑星レオノーラ経由で惑星ラストウェイへ向かうつもりでしたが、“ゲーリー・トバイ”を処分するかどうかは迷っています。そんな折、“ゲーリー・トバイ”に時限爆弾が持ち込まれるという破壊工作が行われます。クインシーが発見したために事なきを得ますが、続いて本社に連絡を取ろうとしていたカイが暗殺者に襲われます。かろうじて脱出したカイは、サビーネ星系での彼女の行動に怒った宙賊が刺客を差し向けたのだと考えますが、アンシブル(超空間通信機)でもたらされた断片的なニュースによれば、他のヴァッタ航宙の船も同時多発で破壊工作に遭っているようでした。何者かがヴァッタ航宙自体を狙っていると感じ、カイは不安になります。
カイの心配通り、同じころスロッター・キーのヴァッタ航宙本社ビルや一族の屋敷が航空機による攻撃を受け、ジェラードを含むカイの家族や叔父スタブロスら幹部社員はほぼ全滅していました。生き残った最年長のグレイシー叔母は、単にフルーツケーキ作りが好きな口うるさい叔母――という仮面を捨てて本性(笑)を表し、スタブロスの娘(カイにとっては従姉妹)ステラに、ジェラードの脳から取り外したインプラントをカイのもとへ(もしカイが生きていれば)届けるよう命じます。ステラは十代の頃の尻軽で軽薄な行動がもとで、男と恋愛にしか興味のない頭が空っぽの娘というイメージを持たれていましたが、そのイメージを隠れ蓑に、ヴァッタ航宙のエージェントとして諜報活動に携わっていました(弁護士の資格も持っています)。
周辺宙域のアンシブルが不通となり、情報を得られなくなったカイは、予定を変えて直接ラストウェイを目指すことにし、船のセキュリティを高めるため、スロッター・キー航宙軍を除隊したばかりのマーティンを雇い入れます。ところが航行中、密航者が発見されます。破壊工作員ではなく、ベリンタの下層階級出身のジムという少年で、貧乏から逃れるために新天地を求めて密航したのだといいます。やむを得ずカイはジムを受け入れ、ジムはマーティンの新兵教育の洗礼を受けて鍛えられることになります。ラストウェイに到着した“ゲーリー・トバイ”ですが、ヴァッタ航宙が狙われていることは惑星当局も承知しており、取引はすべて現金先払いという条件でのみ寄港を認められます。しかし、ここでもトラブル続きでした。雇ったボディガードは殺し屋に変身し、買い出しに出たカイ以外のクルーも襲われます。ジムはジムで野良犬(子犬のテリアでした)を拾ったせいで警察の厄介になる羽目に――おかげでカイは何度も警察署へ出向くことになり、早く出て行けとあからさまに恫喝されてしまいます。それでもグレイシー叔母がフルーツケーキに潜ませていたへそくり(笑)を使って“ゲーリー・トバイ”に搭載するための兵器も買い付けます。さらに、スロッター・キー航宙軍のマックロバートのメッセージにより機雷も手に入れます。おまけに、マックロバートから届いた荷物にはスロッター・キー政府発行の敵船拿捕免許状(つまり私掠船としての活動を認めるというもの)までが入っていました。
一方、星間通信局の船でラストウェイを目指していたステラは、途中で立ち寄った惑星アルレイで、爆破されたヴァッタ航宙の貨物船唯一の生き残り、トビー(14歳のヴァッタ一族の少年で、見習いとして乗り組んでいました)を引き取りますが、トビーが保護されていた警察署を出た途端、殺し屋の集団に襲われます。逃げ込んだ骨董店で、ステラはかつての恋人ラフェと再会します。ラフェは裏社会に顔が利く有能な男で(始末屋ジャックみたいなもの?)、さっそく仲間たちを動員して殺し屋を返り討ちにし、ラストウェイへ向かうステラとトビーに同行することになります。その後は特に妨害されることなく、3人はラストウェイに到着し、“ゲーリー・トバイ”を訪れます。
カイとステラは情報交換し、カイは初めて家族の死を知ります。しかし、カイは悲しみを振り払い、一族を襲った黒幕を暴き出して復讐することを誓います。ジゴロとしても一流の(笑)ラフェはカイにモーションをかけますが、カイはステラと同様、ビジネスライクにラフェを期限付きパートナーとして雇うことを言明します。ステラは、持参したジェラードのインプラント(ヴァッタ航宙の経営幹部のみが知ることを許された、あらゆるデータが詰まっています)を取り付けるようカイに勧めますが、カイは前作で負った重傷のため、現時点でインプラントを埋め込むにはリスクが大きすぎる状況でした。そのとき、カイにも縁の深いマッケンジー軍事援助会社の戦艦が連絡してきます。星系の星間通信局のアンシブルが普通になってしまったため、本部と連絡がつかず、食糧も尽きつつあるので援助してほしいというのです。カイはマッケンジー艦隊と契約を結び(“ゲーリー・トバイ”が私掠船免状を持っていることが問題になりましたが)、“ゲーリー・トバイ”を護衛を依頼します。市場に買い物に出かけたクルーが再び殺し屋に襲われ、危機感をおぼえたカイは、ラストウェイ当局の命令を無視して“ゲーリー・トバイ”を発進させます。小型艇による特攻攻撃を切り抜けて宇宙空間へ出た“ゲーリー・トバイ”はマッケンジー艦隊と合流しますが、カイのアイディアで、ラストウェイに足止めされていた他の自由貨物船の何隻かに護衛を提案し、見事に契約をまとめます(こうすれば“ゲーリー・トバイ”の負担は減り、マッケンジー社の収入は増え、貨物船の船長たちは安心して次の目的地へ向かえます)。ラフェ(彼の意外な出自はすでに明かされています)の調査により、ラストウェイのアンシブルが不通になったのは星間通信局内部の裏切りが原因と判明し、カイはマッケンジー社の特殊部隊とラフェに命じてラストウェイ通信局の裏切り者を一掃させ、通信を復旧させます。
その後、船団は最寄りのハイパースペース突入点へ向かいますが、カイはヴァッタ航宙船籍の船“フェア・カリーン”が接近してくるのに気付きます。単独で残り、“フェア・カリーン”に近づいた“ゲーリー・トバイ”は、“フェア・カリーン”の船長オスマン・ヴァッタからの連絡を受け、ベテラン船長のオスマンは、ヴァッタ航宙が狙われているという話を聞くと(本人は知らなかったと言っています)、経験の浅いカイを守ってやるから合流するように迫ります。ベテランクルーのクインシーから、オスマンはヴァッタ一族を追い出された悪党だと知らされたカイは、老獪なオスマンにも引けを取らない心理的駆け引きを繰り広げます。業を煮やしたオスマンは実力行使に出て、巧妙な作戦で“ゲーリー・トバイ”に急襲をかけます。そして“ゲーリー・トバイ”の背後には、オスマンの仲間と思われる襲撃艦2隻が迫っていました。武力では圧倒的に劣勢な“ゲーリー・トバイ”は、知恵を絞ったカイの作戦と、カイ自身の命知らずの肉弾攻撃で反撃を試みます。
オスマンは退けたものの、オスマンは敵の手ごまに過ぎず、ヴァッタ航宙を襲った黒幕は正体を隠したままです(読者の前には、序盤でちらりと姿を見せていますが)。決着は次巻に持ち越されるのでしょう。そのうち登場。

オススメ度:☆☆☆☆☆


復讐への航路―若き女船長カイの挑戦 (ハヤカワ文庫SF) - エリザベス ムーン, Moon,Elizabeth, 伯好, 斉藤
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