太陽レンズの彼方へ ☆☆☆☆

(太陽レンズの彼方へ / チャールズ・シェフィールド / 創元SF文庫 2005)

ハードSF連作短篇集「マッカンドルー航宙記」の続編です(というか、原書は1冊の作品集で、その後半)。前半を読んでから、もう15年も(笑)経ってしまいました。前半の5作品に対して、こちらは4作品が収録されています。それぞれストーリーは独立していますが、背景となる宇宙が共通なのと、他の作品と直接つながっている作品もあるため、2冊続けて読むことをお勧めします。

主人公アーサー・モートン・マッカンドルーは、太陽系隋一と言われる天才物理学者で、人類に貢献する発見や発明(最大の貢献は、画期的な宇宙航行システムである相殺駆動機関でしょう)をいくつも成し遂げていますが、天才の例に漏れず浮世離れしており、実社会での生活能力はほぼ皆無です(笑)。普段は、太陽系内を気ままな軌道を取って移動するペンローズ研究所に勤務しています(外宇宙を観測するには宇宙空間が理想的ですから)。世知に長けたベテランの宇宙船パイロット、ジーニーとは腐れ縁(というか、お互いの妥協の産物である深い相思相愛関係)で結びついており、公私ともにバランスの取れた理想的なパートナーとなっています(なんせ、前巻収録の「放浪惑星」では、子供までもうけています)。この二人が、様々な宇宙の謎や悪辣な陰謀に挑みます。

「影のダークマター」:マッカンドルーからの他人行儀な依頼状を受け取ったジーニーは、ペンローズ研究所に赴きますが、着いてみると、以前は自由な気風にあふれていた研究所が完全な官僚支配に毒されていることに気付きます。新任の研究所長ジャーヴァーの方針だということでしたが、ジャーヴァーを送り込んだのは、マッカンドルーとジーニーの宿敵である上院議員アンナ・グリスでした。グリスは前巻所収の「“マナ”を求めて」で、ジーニーに鼻っ柱をへし折られ、マッカンドルーには左腕を切断された(グリスの命を救うためでしたが)ことから、復讐の機会を狙っているはずでした。ジャーヴァーは、マッカンドルーの進言を受け入れて“失われた”ダークマターを探索するため、宇宙船ホアチンを恒星間空間へ向かわせる計画を実行しようとしており、そのパイロットとして、マッカンドルーが推薦したジーニーを採用したのでした。マッカンドルーとジーニーに同行するのは、小役人を絵に描いたようなパーミカンと、ギャングの用心棒を絵に描いたたようなヴァン・ライルの二人でしたが、二人ともグリスの手先だということは明らかでした。案の定、出発してしばらくすると、二人は権力をかさに着て徹底的な嫌がらせを繰り返しますが、そればかりか、ジーニーが気付いたところでは、目的地に到達したらジーニーとマッカンドルーを始末して、自分たちだけ帰還しようと計画しています。現場に着いたマッカンドルーは質量探査機を使ってダークマターの観測を開始し、実際に宇宙空間へ出て確認しようとします。チャンスと見たパーミカンとライルは、外へ出たマッカンドルーとジーニーを追い、命を狙ってきますが――。

「新たなる保存則」:「影のダークマター」では、ダークマターの作用のおかげで生還できたマッカンドルーとジーニーですが、グリスは失敗にもめげず、新たな罠を仕掛けていました。斬新な保存則理論が発見されたという餌(笑)に飛びついたマッカンドルーは、地球のパタゴニア沖に設置されたニュートリノ発生装置“ジオトロン”に向かい、彼を心配したジーニーも後を追います。二人はヴァン・ライルに捕らえられ、車椅子に縛り上げられて、別室でグリスが見守る中、腐食性の液体タンクに投げ込まれるという死刑を執行されることになります。

「太陽レンズの彼方へ」:わずか103光年先で発生した超新星を観測するため、マッカンドルーは太陽レンズが焦点を結ぶ宙域にホアチンで赴こうとしますが、スポンサー(ペンローズ研究所を維持するためには、それなりの資金が必要です)の意向により、若手研究者フォガティとレポーターのベントンが派遣されることになってしまいました。マッカンドルーの身を案じてエウロパから駆け付けたジーニーに、マッカンドルーはフォガティが受信したというかすかな救難信号について語ります。その信号は、内容と発信源の方向から、かつて(相殺駆動が開発される以前)深宇宙に向けて何隻も送り出された世代型恒星間宇宙船“方舟”の一つだと推測されました。超新星を観測する代わりに方舟を探索するため、フォガティとは別の宙域に向かったマッカンドルーとジーニーは、相手がAI開発者たちが乗り組んでいた“AIの方舟”だと気付きますが、人類の乗員は皆殺しにされており、方舟はAIが支配していました。報告を聞いた太陽系政府はAIを潜在的脅威をみなし、破壊することも辞さない構えで軌道要塞を向かわせます。

「母来たる」:アシモフの某短篇みたいな邦題ですが(笑)。たまたまペンローズ研究所に立ち寄ったジーニーは、翌日マッカンドルーの母メアリがやってくると聞いて、驚きます(マッカンドルーの母親が健在なことすら、知らされていませんでした)。やがて訪れたメアリは、予想していたような人のいい年寄りではなく、色気ムンムンの(笑)妖艶な熟女でした。メアリは、一人息子のマッカンドルーが生まれた直後に行方をくらませた父親ハインリヒについて語り、失踪する前に圧縮物質に関する大発見をしたと豪語していたこと、その証拠らしきノートとビデオが故郷の家に残っていることを伝えます。いてもたってもいられなくなったマッカンドルーは、すぐに故郷スコットランドへ向かい、父が残した記録を手に入れます。そして、ハインリヒが宇宙船ファフナーで小惑星帯に向かい、消息を絶ったことを突き止めると、すぐにジーニーと二人、小惑星帯へ向かいます。そこで見つけたのは、圧縮物質の微小なかけらでしたが――。

オススメ度:☆☆☆☆


太陽レンズの彼方へ―マッカンドルー航宙記 (創元SF文庫) - チャールズ シェフィールド, Sheffield,Charles, 昭伸, 酒井
太陽レンズの彼方へ―マッカンドルー航宙記 (創元SF文庫) - チャールズ シェフィールド, Sheffield,Charles, 昭伸, 酒井

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