あでやかな標的 ☆☆☆

(あでやかな標的 / ベン・ベンスン / 創元推理文庫 1976)

昨日の「女狩人は死んだ」と同じウェイド・パリスものの1冊です。

マサチューセッツ州の小都市ウェリントンは、シカゴの暗黒街から流れてきた悪徳金融業者オーガスティンに牛耳られており、その影響力は市政や財界、警察上層部にまで及んでいました。ウェリントン市警のマディーラ警部から応援要請を受けた州警察のウェイド・パリス警視は、現地に駆けつけます。ささやかなサンドイッチ店を経営していたビューエル老人が行方不明になったと届が出ていますが、ビューエルは店の経営資金をオーガスティンから高利で借りており、返済を迫られていました。
数日後、波止場でビューエルの射殺死体が発見されます。市内のどこかでマンホールに投げ込まれ、それが下水溝を通って流されてきたと推測されました。パリスはマディーラ警部と協力して市中のマンホールをしらみつぶしに調査し、高級住宅地ドルーリィ・アヴェニューの公園前のマンホールでビューエルのものらしい血痕を発見します。公園からはビューエルの命を奪った弾丸の空薬莢も見つかりました。現場のすぐ隣の邸宅は、両親を事故で亡くした22歳のジェーン・モンカームが家政婦のアガサと二人で暮らしていました。令嬢が留守だと聞かされたパリスは、その晩もう一度訪問するからと伝言を残しますが、約束の時間に訪ねてみると、ジェーンは婚約者のポール・ホワイティング(市でも有数の実業家の息子)と、ヨットで開かれているパーティーに出かけたと聞かされます。パーティー会場になっている豪華ヨットへ行ってみると、そこにはウェリントン市長エセックスをはじめ、上院議員で弁護士のウェスティンガム、地元の銀行頭取スウォンシー、ヨットの持ち主で市会議員のポンフレット(スウォンシーとポンフレットはジェーンの後見人です)など、ウェリントンの政財界の錚々たる名士が顔を揃えており、もちろん、オーガスティンも愛人メラニーと一緒に出席しています。
招かれざる客であるパリスとマディーラ警部は追い出されそうになりますが、かなり酔っていたジェーンは引き止め、思いがけない発言をします。昨夜遅く、車を運転して帰宅した際、何者かが老人の死体をマンホールに投げ込むところがヘッドライトに浮かび上がったというのです。男の服装や人相もはっきり覚えていると断言します。彼女は、後見人のスウォンシーやポンフレットから、関わり合いにならないよう説得されていたのですが、黙っていることで良心の呵責に苦しんでいたのと、突然現れた大人の魅力あふれるパリス(35歳独身)が気に入ったらしく、周囲の反対を押し切って事情聴取に応じます。
ジェーンの証言から、オーガスティンの配下の殺し屋ジャックローンが容疑者として浮かび上がります。身分にそぐわない高級ホテルで暮らしていたジャックローンは逮捕されても、自分には強いバックがついているから、有罪になるはずがないとうそぶきます。案の定、すぐにウェスティンガム弁護士が現われて保釈を要求しますが、正義派の地方検事オハラはきっぱりとはねつけます。オハラとパリスは共同戦線を張って、ビューエル殺害事件をきっかけにオーガスティンの背後にいるウェリントン政財界の大物をあぶり出し、ウェリントンを支配する腐敗を一掃しようと目論んでいました。敵情視察にオーガスティンのオフィスを訪問して挑発したパリスは、殴りかかって来た用心棒を返り討ちにし、逮捕して収監することで、自分の本気度をオーガスティンに思い知らせます。
ジャックローンの裁判は翌週の月曜日に開かれることに決まりました。オーガスティンやその黒幕が、ジェーンが証言台に立たないように強硬策に打って出ることが予想されるため、パリスは腹心のマッケニー警部をはじめとする州警察の警官たちを呼び寄せ、自分を含めてモンカーム家の警備に当たらせます。慎重なパリスは、自分を応援に呼び寄せたマディーラ警部すら、100%信用してはいませんでした(そのことで、マディーラが切れて拗ねるシーンもあります(^^;)。ジェーンのもとには脅迫状が届き、送り主がオーガスティンの愛人メラニーだと突き止めたパリスは、用心棒と高跳びしようとしていたメラニーを逮捕し、徐々に外堀を埋めていきます。しかし、気分転換に庭に散歩に出たジェーンが銃撃され、パリスは犯人を追跡し、銃撃戦の末、相手を射殺します。
パリスは、ジェーンを守る手段として、誰も知らない岬のホテルにジェーンを匿い、月曜日まで外部と連絡を絶つことで、彼女の身を守ろうとします。ホテルの経営者夫婦はパリスを若い頃から知っている信用できる人物で、ジェーンとパリスの他、滞在者は婦人警官メアリとマッケニー警部だけでした。ジェーンの婚約者ポールや後見人にも、行き先はまったく知らせていません。まだ子供っぽい婚約者ポールに飽きていて、大人な魅力のパリスに魅かれており、パリスもジェーンに惹かれている自分に気付いていました。ただし、自分の気持ちを素直に表現するジェーンに対し、自分の立場や身分の違いを気にするパリスは及び腰で、対応は常に裏目――業を煮やしたジェーンは、禁令を破ってポールに連絡を取り、居場所を伝えて呼び寄せてしまいます。こうして、オーガスティンと黒幕にジェーンの居場所が漏れたと判断したパリスは、最後の罠を仕掛けて、誰がやって来るかを見届け、迎え撃つ決意を固めます。

オススメ度:☆☆☆


あでやかな標的 (1962年) (創元推理文庫) - ベン・ベンスン, 稲葉 由紀
あでやかな標的 (1962年) (創元推理文庫) - ベン・ベンスン, 稲葉 由紀

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント