角兵衛獅子 ☆☆☆

(角兵衛獅子 / 大佛 次郎 / 少年倶楽部文庫 1975)

雑誌「少年倶楽部」に、昭和2~3年に連載された、初のジュブナイル版「鞍馬天狗」小説です。作者は、この3年前に「鞍馬天狗」ものの第1作(短篇)を発表しており、昭和40年まで長短篇合わせて47作品を発表しているそうです。本作は、鞍馬天狗を「小父さん」と呼んで慕う杉作少年の初登場作、天狗の小父さんと杉作の"馴れ初めの記"でもあります。

身寄りのない杉作少年(10~12歳くらい?)は、粗暴な親方、隼の長七に命じられ、大道で角兵衛獅子を演じて小銭を稼いでいました。その日、杉作は、せっかく稼いだ銭を入れた財布を落としてしまい、年下の相方、新吉と共に途方にくれていました。手ぶらで戻れば、親方から手ひどい折檻を受けることは目に見えていたからです。ところが、松月院という寺から出てきた侍が、事情を聞くと、失くしたのと同じ額の銭を与えてくれたのです。おかげで、無事に帰れたものの、その話を聞いた親方は色めき立ちます。長七は十手を預けられた目明しでもあり、京都ににらみを利かせる新選組の配下でした。杉作が銭をもらった侍は「倉田」と呼ばれていたことを語ると、長七は、その男こそ新選組を悩ませている勤王派の刺客、倉田典膳こと鞍馬天狗だと見破ったのです。
翌日、長七に連れられて新選組の精鋭と共に松月院へ向かった杉作は、鞍馬天狗が新選組の侍たちを独りで翻弄するのに目を見張ります。そして、逃げる鞍馬天狗を単筒(つまりピストル)で狙った近藤勇の邪魔をしてしまいます。激高する長七ですが、恩人を助けようとした杉作の事情を知った近藤は杉作を責めませんでした。しかし、腹に据えかねた長七は、その晩、杉作をいいようにいたぶろうとします。そこへ踏み込んできたのは、誰あろう鞍馬天狗本人――長七を縛り上げた鞍馬天狗は、杉作を初めとする少年たち全員を、薩摩屋敷の西郷吉之助(上野で犬を連れている銅像の小父さんですね(^^;)に預け、子供たちは安心して過ごせるようになります。
その後、数日に一回は必ず薩摩屋敷を訪れていた鞍馬天狗が姿を見せないようになり、西郷も心配していました。我慢できなくなった杉作は、町に出て当てもなく天狗の小父さんの消息を探ろうとしますが、その晩、野宿をしようとしていた杉作は、鬼女の面をかぶった若い女性("くらやみのお兼”と呼ばれるくノ一)と新選組の土方歳三との会話を耳にします。何でも、幕府の要人が数日以内に密談をするようなのですが、その伝令役をお兼に命じているようでした。その直後、杉作は、早馬に乗った武士を追いかける鞍馬天狗に出会い、馬に乗せられて追跡に同行することになります。鞍馬天狗が追跡していたのは、大阪城に幕府の密書を運ぶ侍でしたが、捕まえてみると替え玉でした。諦めない鞍馬天狗は、本当の密使を突き止めて密書を奪うと、西郷への伝言の手紙を杉作に託し、自ら密使・原木十蔵に化けて、大胆にも大阪城の城代に面会しようと目論みます。
西郷のもとへ向かおうとした杉作ですが、長七とお兼に見つかり、手紙を奪われてしまいます。ところが、なぜかお兼は手紙を長七に見せずに破り捨て、長七が慌てている間に杉作も逃げ出します。手紙の内容を知ったお兼は、新選組に注進し、大阪城に伝書鳩が飛ばされます。原田十蔵として、大阪城で城代と密談し、重要な機密情報を収集していた鞍馬天狗ですが、伝書鳩の急報によって正体を見破られ、奮戦空しく多勢に無勢で捕らえられ、地下の水牢に閉じ込められてしまいます。
一方、杉作から報せを受けた西郷ですが、大局から状況を見ている西郷は、なかなか動こうとしません。しかし、薩摩屋敷の中間、元盗賊の黒姫の吉兵衛が、杉作の話を聞いて行動に出ます。一緒に大阪へ向かい、大阪城近くの居酒屋で、城に潜入した侍が捕まったという情報を得ます。身軽な杉作は、橋の下を伝って城内に侵入することに成功しますが、鞍馬天狗の捕まっている場所の手掛かりは得られず、城にやってきていたくらやみのお兼に見つかりそうになる始末――。
一方、厄介者は早めに始末をつけるべきだと考えた城代は、屈強の使い手を二人、水牢に送り込みますが、鞍馬天狗の返り討ちに遭い、刀と単筒まで与えることになってしまいます。また、お兼の後をつけた杉作は、床下から城代とお兼の会話を盗み聞きますが、存在を悟られ、侍たちに追い詰められます。しかし、身軽さと運にも助けられ、なんとか脱出して、外でやきもきしていた吉兵衛と再会します。
ついに城代は新選組の近藤勇の出馬を要請し、鞍馬天狗と一騎打ちさせようと考えます。それを知った吉兵衛と杉作は京都に取って返し、西郷に相談すると、勤王派の武士たちを集めて、近藤の大阪行きを妨害させようとします。しかし、剣豪・近藤勇は愛刀・虎徹を振るって包囲を突破すると、大阪城へ到着し、ついに鞍馬天狗と近藤勇が対峙することとなります。両雄の対決の行方は――。

オススメ度:☆☆☆


角兵衛獅子 (少年倶楽部文庫1) - 大佛次郎
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