湖畔のマリニア ☆☆☆

(湖畔のマリニア / 栗本 薫 / ハヤカワ文庫JA 2005)

『グイン・サーガ』の第104巻です。
前巻のラストでマリウスと再会したグインは、自分を探しに来たケイロニアの派遣軍を避け、マリウスを案内役として、女王リンダに会うべくパロへ向かおうとしていました。
人里も稀な山道を下りながら、グインはマリウスにおのれの不安を語ります。記憶をまったく失ったグインは、ラゴンやセム、イシュトヴァーンやマリウスの話から、自分がかつてどのような人物だったのか、何をしたのかを聞かされていますが、それは別人に起きた出来事のように聞こえ、実感がありません。そして、誰か悪意を持った者から、偽りの事実を聞かされたとしても、疑わずに信じてしまい、取り返しのつかない事態を招いてしまう可能性もあることを、グインは自覚して、恐れているのでした。楽天家のマリウスは、あまり意に介さないようですが――。
正体不明の数百騎の騎馬隊や、それを追っているらしい数騎の騎士たちと遭遇することはありましたが(グインの的確な判断で身を隠したため、見つかることはありませんでした)、点在する家や集落でマリウスが商売して(歌を歌ったり、春をひさいだり(^^;)食べ物を手に入れつつ、ふたりは平穏に旅を進めます。途中、急な豪雨に見舞われたマリウスは、グインを残してひとりで雨をしのげる家を探しに行き、とある湖水のほとりに建つ小屋のドアを叩きます。現れたのは、ミロク教徒の若い女性と、その息子だという2歳の男の子スーティでした。ローラと名乗る女性は、夫を戦いで亡くし、スーティと二人暮らしをしており、手作りの焼き菓子や果実の砂糖漬、衣服などを湖水の対岸にある自由開拓民の集落ガウシュで売って生計を立てているといいます。しかし、料理の腕や物腰から、かつてかなりの上流貴族に仕えていたことがうかがえました(このあたりで、ローラの正体はピンときますが(^^;)。スーティの目を見たマリウスは、どこか見覚えがあるという印象を受けます。マリウスからイシュトヴァーンとアムネリスの間に生まれた息子ドリアンのこと、アムネリスが自害したことを聞かされたローラは、ショックで気を失ってしまいます。マリウスは、ローラ(実はアムネリスの侍女だったフロリー)がアムネリスに仕えていたことを察し、さらにスーティの父親が誰かということにも気づきます。
マリウスに連れられて訪れたグインを見たフロリーは感激し、マリウスには反抗的な態度を取ったスーティもグインにはすぐに懐いてしまいます。フロリーはアムネリスの女官だった頃から、イシュトヴァーンとの出会い、一夜だけの契り、主アムネリスを裏切ったことを悔いて入水自殺を図ったこと、助けられてからスーティを身ごもったことを知り、ミロク教に入信して、ここに安住の地を得たことなどを語ります。イシュトヴァーンを崇拝し、擁護するフロリーの姿勢に、マリウスは面白くありませんでしたが、やがてイシュトヴァーンへの敵愾心からか、フロリーを手籠めにしてやろう、と不埒なことを考えるのでした。
翌朝、グインとスーティを小屋に残し、マリウスとフロリーは、ボートに乗ってガウシュの村へ商いに出かけます。途中、仮病を使って湖上の小さな島へ上陸したマリウスは、お得意の口八丁手八丁でフロリーを口説き、想いを遂げようとしますが、意外にも頑強な抵抗を受け、未遂に終わってしまいます。ガウシュの村へ着いたふたりは、村長のヒントンに歓迎されますが、そのとき村へ闖入してきたのは、前日に目撃した数百騎の騎馬隊でした。銀色の仮面で顔全体をおおった騎士に率いられた「光団」と名乗る騎馬隊は、宿舎と食料を要求しますが、小さなガウシュの村には、とてもそんな余裕はありません。事態が険悪になってきたとき、これも前日に目撃した数騎の騎士が出現し、「光団」のリーダーを“風の騎士”と呼んで、仲間に加えてくれるよう頼み込みます。その隙にマリウスとフロリーは、こっそり湖水を渡って、グインとスーティの待つ小屋へ戻ります。

今回のマリウスは、淫魔ユリウスが憑依したのかというくらい、狡猾な色事師としての顔を垣間見せており(まあ、この世界の風来の吟遊詩人には典型的なタイプなのでしょうけれど)、なんか、性格が嫌な方向に変わっちまったなあ、という印象を受けました。今後も、この路線で行くのでしょうか(^^;

オススメ度:☆☆☆



湖畔のマリニア グイン・サーガ(104) (ハヤカワ文庫 JA) - 栗本 薫
湖畔のマリニア グイン・サーガ(104) (ハヤカワ文庫 JA) - 栗本 薫

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