怪盗ニック登場 ☆☆☆

(怪盗ニック登場 / エドワード・D・ホック / ハヤカワ・ミステリ文庫 2003)

「サム・ホーソーンの事件簿」に並ぶ作者の代表シリーズ、『怪盗ニック』の第1作品集。ハヤカワ版の本シリーズは、日本で独自に編集されたものです。なお、現在では創元推理文庫から、シリーズ全作品を発表順に網羅した「怪盗ニック全仕事」シリーズが発売されていますので、こちらを入手するのがよいかと思います。
ニック・ヴェルヴェットは、様々な依頼人に頼まれて盗みを行うわけですが、なぜか「価値のないもの」しか盗まないという特徴があります。しかし、依頼人はそのような「無価値のもの」に対して大枚(ニックの相場は最低2万ドルです)を支払うわけで、複雑な「訳あり案件」に違いないわけですが、ニックは複雑怪奇な状況を解き明かしつつ、目的を達成するわけです(必ずしも依頼人の意に沿う結果とは限りませんが)。ニックと同棲している恋人グロリア、ニックの尻尾をつかんで逮捕してやろうと鵜の目鷹の目の銭形――じゃない、ウェストン警部補が準レギュラーとして登場します。
本書には、いずれ劣らぬニックの奇妙な冒険が12篇、収められています。

「斑の虎」:3人組の男女からの依頼は、グレン・パーク動物園で飼育されている珍しい斑模様の虎を盗み出してくれというものでした。3人組の唯一の女性ジニーを相棒に動物園からまんまと虎を盗み出したニックですが、自分が一杯食わされていたことに気付きます。

「真鍮の文字」:今回ニックが受けた仕事は、イーストン河沿いに立つサトメックス社(SATOMEX)の外壁に取り付けられている、同社の名前を綴った真鍮製のアルファベットのうち、S、E、Xの三つを盗んでほしいというものでした。ウェストン警部補や女子高生新聞記者シンディーらにつきまとわれながら、ニックは盗みを成功させ、ついでに依頼者の真意も看破します。

「大リーグ盗難事件」:カリブ海の共産主義国家ハバリ共和国のエージェントから、同国の大統領を喜ばせるため、同国のナショナルチームと戦うメジャーリーグのチームを誘拐して同国へ連れてきてほしいという依頼を受けたニックは、リーグのお荷物チームの千葉パイレーツーーじゃない、ビーヴァーズを拉致することに成功します。しかし、その裏には巧妙なクーデター計画が隠されていました。

「カレンダー盗難事件」:今回の依頼内容は、連邦刑務所で服役中の窃盗犯オドンネルが監房の壁に掛けているカレンダーを盗み出すことでした。弁護士の助手に化けてどうにかカレンダーを盗み出したニックは、そのカレンダーに、オドンネルが隠匿した盗品の隠し場所の手掛かりが隠されていることを知ります。

「青い回転木馬」:カナダ国境に近い田舎町に設置されたメリーゴーランドの中から、青く塗られた木馬を盗み出すよう依頼されたニックは、貧しい父娘が経営する公園のメリーゴーランドへ赴きます。しかし、ニックの他にも木馬を盗もうとする一味がいました。ニックは、青い木馬になにかが隠されているのではないかと考えますが――。

「恐竜の尾」:グロリアと馬術競技会を見物に出かけたニックは、恐竜の骨格標本の作成を仕事にしているキンケイドと知り合い、仕事の依頼を受けます。それは、マンハッタンの自然史博物館に展示されているティラノサウルス・レックスの尻尾の骨を盗んでほしいというものでした。自然史博物館では、最近、展示品の貴重なダイヤモンドが行方不明になっていました。

「陪審員を盗め」:マスコミにも注目されているサテン事件(サテン家の庭に作られた迷宮で、サテン氏の愛人がサテン夫人に射殺された事件)を担当する陪審員全員を盗んでほしいという依頼を受けたニックは、苦労の末、陪審員全員を誘拐して、依頼人ホイップル氏が指定したサテン邸へ連れていきます。ここで、サテン事件を改めて裁き直そうというのですが――。(ヘンリ・セシルの長篇法定ミステリ「法定外裁判」も、これと同じ発想ですね)

「皮張りの棺」:故人が自ら手配して作らせたという豪華な棺桶を盗み出すよう依頼されたニックは、故人が遺した土地の相続争いが背後にあることを知ります。棺桶に隠された謎とは――。

「からっぽの部屋」:重病で手術を目の前にしたロージャーから盗みの依頼を受けたニックは悩んでいました。ロージャーが指定した弟ビンセントの家の離れの部屋に忍んで行ってみると、そこはからっぽで、盗み出すものなどありません。おまけにビンセント夫人にショットガンで脅される始末――。果たしてロージャーが盗んでほしいと思っていたものは?(実は、前半の描写を読んだとき、真相に気付いてしまいました)

「くもったフィルム」:かつての映画スターで今はエキストラもどきの脇役に落ちぶれているウェイドがニックに盗んでほしいと依頼したのは、とある映画の空港でのロケ現場を撮影し、しかも失敗したフィルムでした。

「カッコウ時計」:ラスヴェガスのナイトクラブで働くコメディアンのビリングズからニックが受けた依頼は、ビリングズの勤務先のオーナー、マセットが事務所に掛けているカッコウ時計を盗むことでした。どうやら、カッコウ時計には、かつて事務所で発生した殺人事件の真相を暴く証拠が隠されているようですが――。

「将軍の機密文書」:ウォーターゲート事件のような政治スキャンダルを暴こうとしている野心家のジャーナリストからニックが受けたのは、アパートメントの高層階に住むスパングラー将軍が毎朝、焼却シュートに捨てるゴミを気付かれぬように手に入れることでした。ゴミの中に、スキャンダルにつながる手紙があると確信しての依頼でしたが――。

オススメ度:☆☆☆


怪盗ニック登場 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
怪盗ニック登場 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

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