斬首人の復讐 ☆☆☆☆

(斬首人の復讐 / マイケル・スレイド / 文春文庫 2005)

スレイドの長篇第6作で、しかも第1作「ヘッドハンター」の真の完結編です。さらに第4作「髑髏島の惨劇」、第5作「暗黒大陸の悪霊」の流れも受け継いでおり(この2作で生き残った(!)主要登場人物も重要な役どころで登場します)、この3作を先に読んでおくことをお勧めします。また、初期3作(「ヘッドハンター」、「グール」、「カットスロート」の概要は、「髑髏島の惨劇」の記事で紹介していますので、ご覧ください)。

ブリティッシュ・コロンビア州のトーテム湖周辺では、先祖の土地を白人から取り戻そうと運動を続ける先住民グループが林道を閉鎖し、立てこもっていました。状況を偵察していたカナダ騎馬警察の射撃の名手、“狂犬”ことエド・ラビドウスキィは、凍った滝の滝壺の洞窟で、首を切断された男性の他殺死体を発見します。それと時を同じくして、騎馬警察本部のディクラーク警視正宛に、人間の干し首が届けられます。先住民らの伝統に則って作られたと思われる干し首ですが、その口は連続した金属の輪で封じられていました。
ディクラークは、「髑髏島」の数少ない生き残りの一人である少女キャット(現在はディクラークの事実上の養女となっています)とフランスで休暇を楽しんでいましたが、知らせを聞いて急遽帰国します。一方、滝壺の遺体に関する手がかりを求めて、先住民グループのうち穏健派のリーダー、モーゼス・ジョンの事情聴取に向かった“狂犬”、「ヘッドハンター」でも活躍した婦人警官スパン、先住民出身のボブ・ジョージ巡査部長は、事情聴取のさなか武闘派のリーダー“グリズリー”一味の銃撃を受け、ジョンは死亡、スパンも撃たれます。死の直前、モーゼスは付近で「ホワイト・マン」を目撃したと証言しますが、ヘリコプターのパイロットで周辺の事情に詳しい“山男”ことレイフ・ダッドは、「ホワイト・マン」とは白人の男ではなく、アルビノの先住民で一匹狼の狩人、通称“ウィンターマン・スノー”のことではないかと語ります。検死の結果、滝壺の身元不明の遺体は、肛門を犯されていたことが判明します(ただし、精液は発見されませんでした)。女性検死医ジル・マクベス(「暗黒大陸の悪霊」事件で悲惨な目に遭い、それ以来ニック・クレイヴンと深い関係になっています)に惹かれるディクラークですが、ディクラークとジルが急接近するのに気づいたニックは、上司に対する忠誠心とジルへの恋心の板挟みになって苦悩することになります。
ディクラークは、プロファイリングのため、首を切る殺人犯の心理を解明すべく、「ヘッドハンター」事件でも協力を仰いだドクター・ルーリクと同僚の女流精神科医アンダ・カーライルと面談しますが、アンダが亡き妻ジュヌビエーヴ(「ヘッドハンター」事件の巻き添えで命を落としています)のイメージにそっくりなことに驚きます。アンダに心惹かれるディクラークの心からジルは次第に消えていきますが、クレイヴンはそのことを知りません。
その後、ホワイト・マンの第2の犠牲者と思われる白人画家フリント(トーテム湖近くの山小屋で過ごしていました)の首なし死体が発見されます(遺体の状況は、滝壺の死体と同じでした)。付近を調査していたジョージは、先住民の呪術小屋を発見しますが、その内部には4人の白人の顔の皮をかぶせられたトーテムポールが立っていました。
騎馬警察本郡のデータベースで、干し首に残された古い傷跡などの特徴に近い人物(データがあれば)を検索していたディクラークは、ブロン・レンという凶悪犯(小児レイプの常習犯)で、最近25年の刑を終えて出所したばかりの男をヒットします。ブロン・レンの部屋を家宅捜索したクレイヴンは、秘密の隠し場所から、レンの被害者となった幼い少年少女の裸体写真と体毛のサンプルが数多く収められたアルバムを発見します。
この時点で、トーテム湖周辺で暗躍する首切り殺人犯(通称“刎刑吏”)と干し首を送りつけた人物は別人だという見解が有力になっていました。後者と「ヘッドハンター」事件との共通性に目を付けたディクラークは、スパンと共に「ヘッドハンター」事件を洗い直す決心を固めます。スパンは当時、「ヘッドハンター」と目された黒人のポン引きハーディを追い詰め、射殺したばかりか、ジュヌビエーヴの死のきっかけとなった悪徳警官(?)フラッドを、自ら重傷を負いながら射殺しています。しかしディクラーク自身はジュヌビエーヴが急死してから事件と向き合うことができず、調書に目を通すこともしていませんでした。改めて操作資料を見直したディクラークは、ミステリ好きの(だから「髑髏島」にいたわけですね(^^;)キャットのアドバイスも得て、「ヘッドハンター」はハーディではなく、真犯人は生き延びているのではないかという判断に傾きます(それを裏付けるように、「ヘッドハンター」の子供時代の名前であるスパーキィの回想シーンが、物語に何度も挿入されています)。
一方、アルビノの先住民“ウィンターマン・スノー”の過去を調査していたジョージは、先住民を強制的に改宗させるために設立されたカトリック系の学校、聖セバスチャン校の1954年の学級写真の中に同じ名前のアルビノの少年を発見します。
「ヘッドハンター」事件の資料を精査していたディクラークは、何枚かの現場写真から、これまで見逃していたいくつかの事実を発見します。その結果、真の「ヘッドハンター」が生きていることを確信したディクラークは、「ヘッドハンター」の隠れ家を突き止め、忍び込んで、戻って来た相手を銃撃戦の末、射殺します(犯人は、作品「ヘッドハンター」の思わせぶりなラストから、そうではないかと疑っていた人物でした)。
「ヘッドハンター」事件は一応の解決を見ましたが、“刎刑吏”事件は終わってはいません。新たな被害者が何人も出ており、殺害現場を発見したジョージも弓矢で射抜かれて重傷を負っています。事件を追って、ディクラークはトーテム湖近くの村グナヌートへ赴きますが、同行したキャットが“刎刑吏”に拉致され、山小屋へ幽閉されてしまいます。犯人から挑発されたディクラークは、単身、キャットを救うために指定された場所へ向かいます――かつて実の娘ジェーンをテロリストに誘拐され、殺害されているディクラークにとって、キャットは何としても助け出さねばならない相手でした。狼の群と戦って銃弾を使いつくしたディクラークがたどり着いたとき、山小屋から解放されたキャットは、冬眠から覚めた巨大なグリズリーと“刎刑吏”の双方に追い詰められていました・・・。
ともかく「ヘッドハンター」も“刎刑吏”も射殺されて、事件は落着したかに見えましたが、ディクラークはさらにその裏を読んでいました。事件を裏から操っていた黒幕の正体とは――。

オススメ度:☆☆☆☆


斬首人の復讐 (文春文庫)
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