ミステリー食事学 ☆☆☆☆

(ミステリー食事学 / 日影 丈吉 / 現代教養文庫 1982)

日影丈吉さんといえば、デビュー作「かむなぎうた」に代表される幻想的ミステリから、『ハイカラ右京』シリーズなど、個性的な作風と寡作という点でもユニークですが、さらにフランス文学に造詣が深い(ルルーやシムノン、ボワロ&ナルスジャック作品の翻訳もしています)ばかりかフランス料理の研究家でもあり、実際に本格的なフランス料理をつくってしまうという腕前の持ち主でもあります。ミステリ作家、ミステリ研究家、フランス料理研究家という特色を組み合わせ、才能を遺憾なく発揮したのが、本書だと言えるでしょう。

内容も、食事を扱ったミステリーや、ミステリーに登場する食品や料理を使ったトリック、といったタイトルから想像されるものばかりではありません(それはごく一部)。「食」につながる材料調達(原始時代から続く狩猟)、小泉武雄さんの「奇食珍食」にも劣らないゲテモノ料理や怪しい食材、食欲から連想するもう一つの欲(性欲)の話、喫茶店や紅茶・コーヒーの歴史に関する薀蓄、デザートの歴史、季節の行事と食べ物、消えてしまった食物、なぜか(笑)吸血鬼や悪魔に関する論考、各国のミステリとミステリ作家の特色と料理との関係、これも料理と関係ない怪談話の薀蓄、最後は当然ながら食べ物の成れの果て――ンコとトイレに関する話題で終わりになるという周到さ(^^

もちろんご本人がつくったというフランス料理(だけではなくイギリス料理も少々)のレシピも、いくつも載っています。しかも、シムノンの作品に出てくる、メグレ警部が奥さんにつくってもらって実際に(?)作品中で食べている料理ばかり(笑)。もちろん、料理や食材をテーマとしたミステリ作品の解説やトリックの詳細(未読の人にはネタバレになりますので注意が必要ですが、作者は「当然、もう読者の皆さんはお読みだと思うが」と断りを入れています。もうマニア向けの書物だと割り切っているのでしょう)なども、たっぷりと堪能できます。
書かれたのは昭和30~50年代ですので、作者が体験した戦中戦後を含め、当時の風俗なども懐かしく描かれています。

目次を挙げておきますので、内容を想像して楽しんで(笑)ください。読みたいかたは、現在ではKindle版が分冊で安く入手できるようです。

1.女性と犯罪
 女と毒薬/凶器としての食品/料理残虐考

2.男性と料理
 男の味蕾/男のする話/料理哲学/狩猟の歴史/スパイの周囲/人類は餓死寸前/性と食欲/植物も恋愛する/美人郷の不美人

 ここらでお茶を……
 喫茶風俗/デザートの話

3.へんな食品考
 食べない食べ物/おめでたい食べ物/血液幻想/悪魔の饗宴/まぼろしの食べ物

4.ミステリー風土記
 推理小説の本場/料理技術の本場/ポラールは風変りか?/赤と白/アメリカ・アメリカ

5.ミステリーの季節
 炉辺の名探偵/庶民性の問題/霊魂よ、どこへ行く/怪談・西と東/食べ物の行きつくところ

オススメ度:☆☆☆☆


ミステリー食事学 (1981年) (現代教養文庫〈1046〉) - 日影 丈吉
ミステリー食事学 (1981年) (現代教養文庫〈1046〉) - 日影 丈吉

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