失われた遺産 ☆☆☆

(失われた遺産 / ロバート・A・ハインライン / ハヤカワ文庫SF 1989)

『ハインライン傑作集』の第1巻です。いずれも1940年代に発表された中短篇が4作品(2作は戦前のごく初期作品、2作は戦後に書かれた作品)収められています。やや古めかしさが残りますが、ハインラインの原点とも言える作品群でしょう。

「深淵」:連邦保安局の工作員ギリアド大尉は、月世界植民地から、地球の未来を左右する超兵器の秘密を記したマイクロフィルムを地球に持ち帰ります。しかし、安全な場所へ行き着く前に、正体不明の敵の執拗な攻撃に遭うことになります。工作員としての知恵とテクニックを駆使して難を逃れ、どうにかフィルムを局の秘密私書箱に向けて送り出すことには成功しますが、身柄は保守派の過激組織を束ねるケイスリー夫人に拘束されてしまいます。牢獄に閉じこめられたギリアドは、同房のボールドウィンという男に暗号を使ったコンタクトを受け、信用して秘密を明かすと同時に、協力して脱走することにも成功しました。しかし、局へたどり着いてみると、フィルムは指定の場所に届いておらず、ギリアドは逆スパイの疑いをかけられてしまいます。局と袂を分かち、ボールドウィンのもとに身を投じたギリアドは、ボールドウィンの一派は超能力を持つ新人類で、ギリアドにも素質があることを知らされます。ボールドウィンの思想に共鳴したギリアドは、かれら新人類の工作員として訓練を受け、やがて太陽系を救うために命を賭けることになるのでした。

「時を超えて」:純理形而上学の教授フロスト博士は、催眠術を使った精神集中によって、肉体ごと異なる時空へ移動することが可能だと証明しました。博士のゼミに所属する5人の学生も、博士に倣って時空を超えた旅に出かけますが、それぞれの信念や世界観によって、たどり着いた先はまったく別々の世界でした。5人の男女の学生とひとりの老教授が遍歴する異世界とは――。SFのようですが、異世界ファンタジーの趣もあります。

「失われた遺産」:超能力を研究する青年心理学者フィリップ・ハクスレイは、研究対象だった超能力者が事故で脳手術を受けた結果、まったく能力を失ってしまったことを知り、切除された部位に超能力の秘密があるのではないかと推測します。友人の脳外科医ベン・コバーンと女子学生ジョーンの協力で、人間の超能力について研究を続けるハクスレイは、勤務先のウエスタン大学の学長ブリンクリー博士ににらまれ、強引に休暇を取らされてしまいます。気晴らしにドライブに出かけた3人は、先住民の聖なる山とされているシャスタ山の頂上近くで遭難し、アンブローズと名乗る初老の男性に助けられます。彼はメキシコで失踪した作家アンブローズ・ビアスその人でした。広い洞窟に収容された3人は、足を骨折したコバーンが一晩で全快する奇蹟を目の当たりにします。ビアスをはじめとするシャスタ山に隠棲した人々は、超能力を持った長命人で、人類を見守り導こうとしている善なる存在でした。訓練を受けた3人は、若者らしい性急さで世界を変えようと活動を開始しますが、思わぬ邪魔が入ります。善の超能力者を抹殺しようという邪悪な超能力者集団が姿を現したのです(当然ながら、世界を裏から操る政財界の秘密結社で、ブリンクリーも、その一員でした)。いったんシャスタ山へ帰った3人は、長老たちとともに作戦を練り、決定的な行動に打って出ることにします。

「猿は歌わない」:資産家のフォーゲル夫妻は、夫ブロンソンがペガサスをオーダーメイドで買いたいと考えたため、火星人の技術によって遺伝子改変による新種の動物を開発しているフェニックス育種工場を訪れます。内部を見学していた夫妻は、単純労働に携わるために大量生産されている“労働猿”が、働けなくなった後に“処分”されることを知ります。動物虐待だと怒ったミセス・フォーゲルは、処分されることになっていたジェリーという労働猿を引き取り、弁護士と相談して“労働猿”の「人権」を認めさせるべく裁判に踏み切ります。

オススメ度:☆☆☆




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