ミステリ百科事典 ☆☆☆☆

(ミステリ百科事典 / 間 羊太郎 / 現代教養文庫 1983)

この手のタイトルの書籍は何冊も出ていると思いますが、本書はその中でも古典でマニアックな部類に属するもの。実は後半部がかなり割愛されていて、雑誌に掲載された(もともと連載していた旧「宝石」誌の廃刊に伴い、掲載誌やタイトルを変えて続いていたわけです)すべてを収録した完全版が、現在は文春文庫から出ています。
実は著者の間羊太郎さんは、80年代に奇想SFで一世を風靡した式貴士さんと同一人物です。
大先達、江戸川乱歩さんの「類別トリック集成」や「探偵小説の『謎』」を嚆矢とする内外ミステリ・トリックの百科全書的読み物ですが、本書はテーマの分け方が一風変わっています。ミステリ百科というと、例えば「本格もの」、「倒叙もの」、「法廷もの」、「ハードボイルド」、「警察小説」、「サスペンス・スリラー」、「スパイもの」といった作品のジャンルで分けるケースや、「密室」、「アリバイ」、「意外な犯人」、「意外な武器」、「隠し場所」といったトリックによって分類するケースなどが考えられますが、本書はどちらでもありません。目次を見ると、「第1巻 人体(眼・手・血・首)」、「第2巻 生物(猫・犬・虫・花)」、「第3巻 風物(雪・氷・クリスマス)」、「第4巻 事物(電話・時計・人形・蝋燭・手紙・郵便・遺書)」、そして「別巻(宝石・たばこ・ギャンブル)」となっています。つまり、ミステリでよく扱われる小道具――犯行手段やトリックの手段とは限りません――をピックアップしては、それらが印象的な使われ方をする作品を、筆の向くまま気の向くまま、ネタバレ御免で(笑)次々と紹介していくわけです。それも本格ミステリに限らず、怪奇幻想小説やSF、映画や演劇にまで及びます。しかも、著者(ワセダ・ミステリ・クラブ出身の筋金入りのマニアです)はすべて実際に読んでいるわけで、ほめるところはほめますが、内外の巨匠が高く評価している作品でも「それほどのものとは思えない」と一刀両断にしたり、「このトリックはいただけない」と鋭い突っ込みを入れたり、楽しく読めます。ただ、先ほど書いたようにネタバレのオンパレードですから、未読の作品が出てくると、飛ばして読みました(笑)。解説の新保博久さんは「一どきに明かされてしまっては、どの作品がどのトリックか覚えきれず、あとでその作品を読む際には実害はない」と書いておられますが、人間の記憶力をバカにしちゃいけません。「忘れなきゃ」と思うものほど、記憶に刻み込まれてしまうものです(笑)。
紹介されている作品を、半分近く読んでいたのは、「大したものだ」と思うべきか「まだまだだな」と猛省すべきか微妙なところですが……(^^;
もちろん、書かれたのが1960年代ですから、それ以降の約半世紀に出たミステリに対する言及はありません。確かに科学的な記述が誤っていたり、特に電話や時計といった機械類の記述が現代のものと合わなかったり、時代の古さを否めない部分もありますが(その意味で、記述をうのみにして他で書いたりすると、大けがを負う可能性は大です)、紹介される作品の本質については、決して新鮮さを失ってはいません。かつて、こんなにすごいトリックや作品があったのか、と思いを新たにすることになります。まさに温故知新ですな(^^

オススメ度:☆☆☆☆


ミステリ百科事典 (1981年) (現代教養文庫〈1041〉) - 間 羊太郎
ミステリ百科事典 (1981年) (現代教養文庫〈1041〉) - 間 羊太郎

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