光子帆船フライング・クラウド ☆☆

(光子帆船フライング・クラウド / A・バートラム・チャンドラー / ハヤカワ文庫SF 1986)

『銀河辺境シリーズ』外伝の第1巻です。
ただし、日本語版『銀河辺境シリーズ』の“本編”(便宜上、こう書きます)と“外伝”の関係は複雑です。本編の第1巻「銀河辺境への道」の記事でも推測しましたが(今回、その推測がほぼ正しいとわかったわけです(^^;)、もともと作者チャンドラーが書いていた銀河辺境を舞台にしたシリーズには特定の主人公がいない、時代もまちまちな群像劇だったわけです。ですが、そのうちチャンドラーは、主要キャラクターのひとりジョン・グライムズが宇宙軍の新米士官だった時代から成長を追っていく一連の作品群を書き始め、それが日本語版の『銀河辺境シリーズ』として訳出され、それに気を良くした作者はシリーズを書き続けて、ついに全15巻を数えるまでになりました。そして、それ以外の本来のシリーズ作品が、今度は日本では“外伝”として訳されたというわけです。その第1巻が、この「光子帆船フライング・クラウド」。すっかり貫禄のついたジョン・グライムズ准将も重要な役どころで登場しています。

銀河辺境の輸送会社「リム・ランナーズ」所属の老朽宇宙船「リム・ドラゴン」は、度重なる故障やトラブルをなんとか解決しつつ、ようやく目的地の惑星ローンのフォーローン宇宙港へ無事着陸しました。その直後、主要なクルーたち――一等航宙士ラルフ、語り手でパーサーのマルカム、主計士官のサンドラ、船医ジェンキンス、テレパス通信士のスメスウィック――は運航本部長の元へ出頭を命じられます。「リム・ランナーズ」の運航本部長こそ、銀河辺境に名を轟かすジョン・グライムズ准将その人でした。
グライムズは、かつて西部星区でコンタクトした反物質世界の異星人から入手した微量の反物質を使って、まったく新たな超光速駆動を備えた光子帆船「フライング・クラウド」号を実験航海させようとしていました。その乗組員として白羽の矢が立ったのが、呼び出された「リム・ドラゴン」のメンバーだったわけです。特にラルフは、惑星の水上を走る帆船の操縦に秀でていることから、船長に任命されます(つまり、惑星大気圏における「フライング・クラウド」の操縦法は、帆船にそっくりだということです)。惑星ローンの湖沼地帯でたっぷりと操帆の腕を磨いたあと、一行は「フライング・クラウド」で宇宙へと旅立ちます。一行は、前述の5人に加えて、若い女性機関士ペギーと新聞記者のマーサが乗り組んでいます。しかし、この男女7人の間で、出発直後から愛憎劇が火種としてくすぶることになります。
航行は順調でしたが、ラルフにふられ、マルカムに冷たくされたペギーは、こうすれば光速を簡単に超えられると称して、ジェンキンス医師を巻き込み、機関室にある仕掛けを施します。気付いたマルカムが止めようとしますが、ペギーは実行し――。
その結果、光速を超えた「フライング・クラウド」は、いくつものありうべき運命――パラレルワールドを体験していくことになります。そのドラマには必ずクルーの7名が登場しますが、地位も男女の関係もまちまちです。そして必ず深刻なトラブル(謀反だったり事故だったり)に見舞われて、同じようなシチュエーションで悲劇的な運命をたどることになります。しかし、そのパターンに気付いた一行は、ついに無限ループを抜け出すことに成功し、未知の惑星に着陸しようと試みますが、惑星の住民たちとテレパシーでコンタクトしたスメスウィックは、恐るべき事実を知ります・・・。

中盤以降の展開やラストはアンダースンの「タウ・ゼロ」などに近い印象を受けますが、アイディアを十分に消化しきれていないようで、描き込み不足を感じます。ほかの“外伝”に期待しましょう(^^

オススメ度:☆☆
(実際の読了日:2012/2/8)


光子帆船フライング・クラウド (ハヤカワ文庫SF―銀河辺境シリーズ外伝)
光子帆船フライング・クラウド (ハヤカワ文庫SF―銀河辺境シリーズ外伝)

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