異国漂流物語 ☆☆☆

(異国漂流物語 / 荒川 秀俊 / 現代教養文庫 1995)

今は絶版になっている現代教養文庫の「リバイバル・コレクション」(90年代の復刊フェアの一種)の1冊で、初版は1969年でした。
著者の荒川さんは気象学者ですが、気象が人間生活に与える影響を研究する中で、「漂流」や「漂着」に関心を持ち、上代から近世まで文献記録を渉猟し、日本と日本人が関わった「漂流」(日本人が遭難して、孤島や海外へ流れ着いた事例)「漂着」(外国人が遭難して、日本へ流れ着いた事例)の事件をまとめ上げたそうです。
本書では、前半で上代から中世までの説話集など(今昔物語集や日本霊異記、日本書紀など)に載っている、信憑性に欠けるおとぎ話風エピソード、後半では江戸期を中心に、当事者が明確になっていて、しっかりと記録が残っている事件を多数紹介しています。ちなみに前半のエピソードを集めたのは著者の娘さんで、これは彼女の卒論のテーマだったそうです。親娘揃って筋金入りの「漂流」オタクだというわけですな(笑)。

前半では、女護ガ島や鬼の住む島など、怪しげな土地への漂着や、浦島伝説の原型、神仏の功徳で命が助かったという信仰の大切さを訴える説話など、実話とは思えないエピソードから、遣唐使など大陸と日本を行き来した人々の苦難など、史実として認定されている事例までが紹介されています。
後半では、有名なジョン万次郎の漂流を初めとして、日本の漁船が遭難して、近くは小笠原や鳥島、朝鮮半島、中国本土、フィリピンや千島列島、アリューシャン、果ては北米西海岸にまで漂着した様々な事件を紹介しています。アリューシャンからロシアの都ペテルブルグへ護送され、さらに大西洋を渡ってアメリカへ、そして太平洋を越える――という初の世界一周をした日本人の話など、いくつかのエピソードは、どこかで読んだ記憶がありました。ですが、当時は鎖国政策を取っていたため、外国船に救われた漂流者が日本へ帰国すると、キリシタンでないことを証明できるまで監禁され、犯罪者扱いされたことや、わざわざ航路を変更して漂流者を送り届けてきた外国船を日本側が砲撃して追い払おうとしたことなど、知らなかった事実もたくさんありました。このような歴史の流れが、海外の難民を扱う日本のやり方につながっているのかもしれません。
また、紹介されているエピソードのほとんどは、船ごと大勢で漂流するケース(著者曰く「十五少年漂流記」型)が多く、ひとりで漂流するケース(同じく「ロビンソン・クルーソー」型)はほとんどないことが分かります。もちろん、後者の場合は「生き残れない」ケースが多いため、記録に残っていないだけなのでしょうけれど。
ちなみに、UFOに乗った宇宙人ではないかと言われたこともある「うつろ舟」の説話も紹介されていましたが、「まったくバカげた、でたらめのでっち上げ」と、あっさり切り捨てられていました(^^; まあ、著者はまじめな学者さんですから・・・。

オススメ度:☆☆☆



異国漂流物語 (現代教養文庫 677)
異国漂流物語 (現代教養文庫 677)

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