世界悪女物語 ☆☆☆

(世界悪女物語 / 澁澤 龍彦 / 河出文庫 2003)

河出文庫から出ている『澁澤龍彦コレクション』、この「世界悪女物語」は「東西不思議物語」に続いて2番目に出ている作品。ところが、ほかのコレクション初期の作品は、ほとんど学生時代に新刊で買っているのに、これだけは未読のままでした。今、思い返しても、なぜ買わなかったのかわかりません。なにか、いけないことが(笑)書いてあると思っていたのでしょうか。
四半世紀ぶりにようやく手にした中身は、歴史に名を残す女性12人(正確には13人)を紹介するものでした。「悪女」とは言ってもスケールが違い、あえて定義するなら「美貌と愛欲で権力を握り、歴史に大きな影響を与えた女性」でしょうか。もちろん例外もあって、血筋や立場ゆえに歴史の渦に巻き込まれてしまったケースもあります。なお、「世界」と名付けた以上は日本人も載せるべきだと考えて、澁澤さんも候補を挙げてみられたようですが、いずれもスケールが小さすぎて掲載に踏み切れなかったとのこと。
ルネサンス期イタリアのルクレチア・ボルジア、「血の伯爵夫人」と呼ばれたエルゼベエト(エリザベート)・バートリ、パリを揺るがした毒殺魔ブランヴィリエ侯爵夫人、イングランドのエリザベス女王(現女王ではありません)、その仇敵だったスコットランド女王メアリ・スチュアート、黒魔術や黒ミサを行ったというカトリーヌ・ド・メディチ、フランス革命に消えたマリー・アントワネット、ローマ皇帝ネロの母親アグリッピナ、エジプト最後の女王クレオパトラ、6世紀のヨーロッパの戦乱に咲いて散ったフレデゴンドとブリュニオー(このふたりについては、名前すら聞いたことがありませんでした)、唐代の女帝・則天武后、ナチの宣伝相ゲッベルスの妻マグダ(彼女のことも知りませんでした)と、世界史の中で一時代を築いた女傑(「悪女」よりも、「女傑」と呼ぶ方がふさわしい気がします)を、歴史的背景や当時の風俗をからませながら、鮮やかな筆致で描き出します。
澁澤さんはヨーロッパの原典を丹念にあたり、いたずらにセンセーショナルな誇張をすることなく、ある意味、慈愛に満ちた目線で、激動の人生を送った女性たちを語ります。その意味で、澁澤さんの著作を孫引きして中身の薄いノンフィクションもどきを量産している現代のライターとはまったく異なり、歴史教養エッセイとして安心して読むことができます。

オススメ度:☆☆☆


世界悪女物語 (河出文庫 121B)
世界悪女物語 (河出文庫 121B)

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