怪奇四十面相/宇宙怪人 ☆☆

(怪奇四十面相/宇宙怪人 / 江戸川 乱歩 / 江戸川乱歩推理文庫 1988)

以前の記事にも書きましたが、ミステリを読み始めた中学時代、乱歩作品で入手できたのは角川文庫版のみでしたが、そこにはジュブナイルものは収録されておらず、タイトルだけは知っていて実物を手に取れない時代が続きました。ですがその後、講談社から出た江戸川乱歩推理文庫(光文社文庫の全集より前です)には、ほぼ全作品が網羅されており、気付けば古書市場で比較的安く入手できるようになっています。目につくたびに買い揃えてきましたので、今後はちょこちょこと登場すると思います。

戦前に書かれた「怪人二十面相」「少年探偵団」(どちらも先行して出版された、同じ講談社の少年倶楽部文庫で読んでいます)で、名探偵・明智小五郎と小林少年率いる少年探偵団が神出鬼没の怪盗・怪人二十面相と対決するという設定は、完成していました。戦後の諸作品は、新たなアイディアのバリエーションは加えられていますが、「怪盗VS名探偵」という図式は変わっていません。そのため、ある程度マンネリになるのは避けられず、また読者の年齢層を低く想定していることから、"子供だまし"のような荒唐無稽さ、安直な展開やご都合主義も見られます。本書に収録されている2篇は、戦後に書かれた5作目と6作目(戦前の上記2作を含めれば、「少年探偵団」ものの7作目と8作目)で、それらの欠点が特に目立っているような印象です。おまけに、主役の一人である小林少年が完璧超人(笑)に描かれ過ぎて、ただの「自意識過剰の生意気な、いけすかないガキ」になってしまっているのが、感情移入を許してくれません。

「怪奇四十面相」:「透明怪人」事件で捕まって拘置所にいる怪人二十面相から、新聞社宛に手紙が届きます。自分は「怪人四十面相」と改名し、新たな計画に乗り出すというのです。2通目の手紙で、その計画は「黄金どくろ」の謎を解くことだと宣言されました。その後、拘置所を訪ねて二十面相と密談した明智小五郎は、なぜか事務所に戻らず、「透明怪人」事件をネタにした芝居を上演中の世界劇場へ向かいます。明智は、劇で明智役を演じている村上時雄の楽屋に入り込みますが、その後、舞台上でシナリオにない事件が突発し、舞台上に現れた二十面相は、警官隊に追われながらも屋上に仕掛けてあったアドバルーンにぶら下がって飛び去ってしまいます。
もちろん(笑)これはトリックで、二十面相は人形をアドバルーンに結び付け、自分は警官に変装して脱出しています。しかし、小林少年の目はごまかせず、乞食に化けた小林少年は偽警官を尾行していきます。ところが路地を曲がった二十面相は見事なトリックを使って姿を消し、小林少年は途方にくれますが、近くの屋敷で少女が泣いているのを聞きつけ、そちらへ向かいます。少女が言うには、自分は著名な科学者であるお父さんと二人暮らしなのですが、お父さんがいなくなってしまい、地下室にはお化けがいるのだそうです。地下室へ忍び寄った小林少年は、黄金色の骸骨が3体、謎の言葉で密談しているのを目撃します。やがて、骸骨の2体は屋敷を出ていき、もう1体は2階へ向かいました。しかし、怯えた少女が小林少年に促されて2階へ上ると、優しい父親が待っていたのです。やがて庭へ出た小林少年は、4体目の骸骨――つまり黄金色の骸骨が描かれたコスチュームを着ている二十面相に出会います。
翌日、変装(人間ではなく物に)して前夜の屋敷へ忍び込んだ小林少年は、再び3体の骸骨が密談するのを盗み聞きしますが、そのうちの1体は、本物(?)を麻酔で眠らせて入れ替わった二十面相でした。3人はそれぞれ黄金のどくろを手にしており(つまり、二十面相が宣言していた「黄金どくろ」です)、どくろに刻まれた謎の日本語を解こうとしていました。密談が終わって解散した後、小林少年は少女の父である黒井博士に正体を明かし、事情を聞き出します。黒井博士と他の2名(いずれも真っ当な職に就いている名士です)は、共通の祖先である黒井惣右衛門が隠した金塊の在処を探そうとしているのでした。3個の黄金どくろに刻まれた暗号を解けば在処がわかるということで、定期的に集まっては知恵を出し合っていたのです(だったら、わざわざ骸骨のコスプレをする必要はないと思うのですが(^^;)。
その頃、第4の黄金のどくろがあることを突き止めた二十面相は、どくろを所有している宮永という人物の屋敷に、古道具屋に化けて入り込んでいました。しかし、小林少年が介入し、狡知の限りを尽くした対決の末、いったんは小林少年の勝利かと思われましたが、結局、二十面相は第4のどくろを手に入れてしまいます。
もっとも、明智小五郎も小林少年や黒井博士から、どくろに刻まれている文句をすべて聞き出しており、暗号が示している金塊の隠し場所が三重県にある「どくろ島」の異名を持つ無人島だろうという結論に落ち着きます。「どくろ島」(キングコングはいません(^^;)の洞窟を舞台に、明智と小林少年対二十面相一味の対決が始まります。

「宇宙怪人」:いつの頃か、空飛ぶ円盤(UFOという言葉は、この時代には人口に膾炙していません)が世界中で目撃されていました。日本でも、東京の空を正体不明の発行体が飛び、新聞記者や警官など、信頼できる目撃情報も増えています。そんな中、ロズウェル――じゃなかった、丹沢山中に空飛ぶ円盤が墜落し、不気味な有翼のトカゲのようなヒューマノイド(アメリカで目撃された「モスマン」が元ネタなのかと思いましたが、モスマンが目撃されたのは、本作が書かれた10年以上後でした)が、木こりによって目撃されます。その後、銀座で円盤を目撃した平野少年(少年探偵団のメンバーの友人)の周辺に奇妙な出来事が頻発します。近所のSF好きの北村青年が失踪し、一か月後に戻ってきますが、彼は有翼人に誘拐されて円盤の中で日本語を教える役目をさせられていたというのです。また、円盤の中では、分子破壊光線(?)のデモンストレーションを見せられ、逃げるなと命令されていましたが、見張りがいなくなり、円盤の入り口が開け放しになっていたのをチャンスと見て脱出し、山道を下りて来たといいます。
話を聞いた明智小五郎は、謎めいた言葉を残しますが、銀色の仮面を付けた有翼の怪人は、都内のあちこちに出没し、平野少年の姉でバイオリニストのゆりかの寝室の窓の外にも不気味な姿を覗かせます。ゆりかが怪人に狙われていると考えた父親の平野氏は、厳重なコンクリートの離れにゆりかを入れ、警官隊や明智探偵、少年探偵団らに厳重な警備を依頼します。そこへ夜陰に乗じて有翼怪人が侵入しますが、そこは怪人を捕えるために警察が仕掛けた罠でした。ところが、催眠ガスで眠らせたはずの怪人は姿を消し、屋敷で匿われていた本物のゆりかを拉致してしまいます。しかし、明智が怪人の前に立ちはだかり、怪人はやむを得ずゆりかを残して逃げていきます。
やがて、世界各地に有翼人が出現し、日本と同じような事件を引き起こすようになっていきます。一方、明智事務所に著名な科学者の虎井博士から連絡があり、自分は有翼怪人に狙われていると訴えてきます。状況を確認しに博士の研究所を訪れた小林少年は、不思議な召使ロボットや助手の美少年に戸惑いながらも、東京湾の海底に作られた秘密実験室に下りていき、潜航艇を操る虎井博士と協力して、海底に出現した宇宙怪人と戦うことになります。そこへ現れた明智は、宇宙怪人の正体とトリックについて、身も蓋もない(笑)謎解きをするのでした。

オススメ度:☆☆


怪奇四十面相;宇宙怪人 (江戸川乱歩推理文庫) - 江戸川 乱歩
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