黄色い目をした猫の幸せ ☆☆☆☆

(黄色い目をした猫の幸せ / 高里 椎奈 / 講談社文庫 2005)

『薬屋探偵妖綺談』の第2巻です。出版されたのは2番目ですが、書かれたのは第1巻「銀の檻を溶かして」よりも前で、本巻が実質的な第1作だそうです。
主人公3人組(正しくは3妖怪組(^^;)についての詳細は、第1巻の記事をご覧ください。ちなみに本巻の表紙イラストの中央が深山木秋、左奥がリベザル、右手前の小動物が座木の本体(笑)です。

今回、深山木薬局を訪れた“裏稼業”の依頼人は、緑ヶ丘中学校3年生の椚良太でした。田舎のおばあちゃんに深山木薬局紹介されたという良太は、別の中学(上流坂中学)の1年生、佐倉康を「妖怪に食べさせちゃってほしい」と頼みます。しかし、驚いたリベザルが口をはさんだせいで、良太は事情を話さないまま、怯えて逃げていってしまいます。
翌日、ストリートバスケットのゲームに出るために上流坂に出かけた秋は、段ボールに入って捨てられていた子供の死体(頭と両手足がありません)の発見に立ち会うことになってしまいます。その後、所轄の刑事たち(古参の衒崎、知性派の高遠、若手でミーハーの葉山で、どこか主役の3人と対応しているような、いないような(^^;)の訪問を受けた秋たちは、被害者が佐倉康であると知らされます。佐倉少年の死を知った椚良平が、自分のせいだと訴えたため、刑事たちは深山木薬局の面々が康の殺害に関係しているのではないか(秋は死体の発見現場にもいましたし)と疑い、参考人として事情聴取しようとしたのです。警察署へ赴いた秋は、高遠の巧妙な尋問を逆手にとって、今後の捜査に必要な情報を聞き出すのでした(自分たちが良太の依頼を中途半端にしてしまったことで、責任を感じています)。
良太の通う緑ヶ丘中学と康の通う上流坂中学のサッカー部は交流があり、ふたりともサッカー部でした。良太の叔母に当たる椚空音は緑ヶ丘中学の教師をしており、職員室で康の死を聞いてしまった良平が、泣きながら空音に自分がしたことを訴えたわけです。見かけの(笑)年齢が近い子世もあり、リベザルが良太に近づいて情報収集する一方、イケメン青年の座木は空音に接近して椚家の情報収集を試みますが、男性に免疫がない真面目女教師・空音は座木にめろめろに(笑)なってしまいます。どうやら、椚家には複雑な家庭事情があるようで(そのことをほのめかされて、良太と康の間にいさかいが起きたといいます)、良太は血のつながっていない母・良海と妹・良乃に対して、屈折した思いを抱いているようでした。公園でのサッカーを通じて仲良くなったリベザルに、良太は「母さんや妹なんて、いなくなっちゃえばいいんだ!」と言い放ち、その声は、たまたま公園のトイレにいた葉山刑事の耳に入ってしまいます。
一方、殺された佐倉康の家は名家で、父親の隼人は梶枝大学で日本近代史の助教授を務め、母親の享菜は著名な花火職人でした。しかし、享菜は息子の死のショックで精神に異常を来し、奇妙な言動を繰り返しているといいます。そして、佐倉家の蔵にあった大花瓶から、山梔子の花と一緒に活けられた康の両腕が発見されます。さらに日をおいて、両脚は通勤ラッシュの駅のホームのベンチ脇に置かれているのが見つかります。
警察では、本庁の面々は変質者の犯行と見てプロファイリングにより容疑者を絞っていましたが、所轄の刑事たち、特に高遠と葉山は深山木薬局の3人を容疑者から除外することができず、本庁とは別路線で捜査を進めています。3人が挙動不審であることも(つまり、自分たちで独自に事件を調査していたからですが)、高遠の疑惑を増幅させています。もっとも、葉山は美少年の秋にめろめろに(笑)なっていて、不順な動機もあるようですが。しかし、警察をあざ笑うかのように第二の殺人が起こります。良海と良乃が殺され、血の海の中でうつろな表情をしている良平が発見されたのです。無傷の良平は病院へ収容されますが、完全に心を閉ざしてしまっていました。
秋は、良太の出生の事情について詳しい話を聞くべく、良海と空音姉妹の祖父である甲斐智充を田舎に訪ね(腰痛に悩む智充を楽にする薬を処方するという表向きの理由で)、マッサージでほぐれた智充の口から、いくつかの重要な事実を聞き出します。高遠(実は京都の名家の出身)は自費で私立探偵を雇って秋と座木の過去を洗わせ、一つの仮説を立てます。犯人は良平が邪魔者だと考えている人間たちを手にかけており、良平を(歪んだ意味で)深く愛している者ではないかと考え、消息のしれない良平の父親を犯人と想定していました。この仮説の下に、再び座木と秋を尋問しようとしますが、あっさりと論破されてしまいます。
その後、佐倉康の焼かれた頭蓋骨が、父・佐倉隼人助教授の研究室にあった段ボール箱から発見されます。それと並行するように、佐倉隼人のゼミの受講生である南雲圭一(秋の言葉によれば、南雲も人間に交じって暮らしている妖怪のひとりで、土曜日は部屋に閉じこもっていなければならない習性があるそうです)が、連続車上荒らしの犯人として衒崎刑事に逮捕されますが、彼の部屋から血まみれの包丁が発見されます。警察は、今度こそ真犯人が見つかったと色めき立ちますが――。
その頃、良平を心配するリベザルは、彼が入院している病院を訪れますが、良平に何もしてやれない自分自身が情けなく、涙にくれてしまいます。親切そうな女性に慰められたリベザルは、誘われるままに女性の部屋についていきますが、そこには病室から拉致された良平が気を失って倒れていました。あわやというところで現れた秋と座木は、事件の真相を語るのでした。

オススメ度:☆☆☆☆


黄色い目をした猫の幸せ 薬屋探偵妖綺談 (講談社文庫) - 高里椎奈
黄色い目をした猫の幸せ 薬屋探偵妖綺談 (講談社文庫) - 高里椎奈

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