眠れる人の島 ☆☆☆☆

(眠れる人の島 / エドモンド・ハミルトン / 創元SF文庫 2005)

「キャプテン・フューチャー」など、スペース・オペラが著名なハミルトンですが、それとは別にハードなアイディアのSF作家、怪奇幻想作家としての顔も有しています。後者の代表作品を集めたのが河出文庫版「フェッセンデンの宇宙」(そのうち登場)ですが、そこから漏れた傑作群を、同じ編者の中村融さんが2冊の作品集にまとめたものが、「反対進化」と本書です。ハミルトンがデビューしたのは、あの(笑)『ウィアード・テールズ』で、以降も同誌にコンスタントに作品を発表していたようです。本書には、そんな怪奇幻想味の濃い作品が5作収められています。

「蛇の女神」:メソポタミアで古代の蛇の女神ティアマトの神殿の遺跡を発掘していた考古学者マックリンは、夢の中で海底を訪れ、眠りに就いているティアマトの姿を目にします。そしてマックリンはティアマトの呼びかけに応え、英雄マルドゥクがティアマトの一族を封印した洞窟を開けようとしているところを、同僚に見つかって目覚めます。その後、神殿の奥を探索した発掘隊は、マルドゥクの王笏や、ティアマトを目覚めさせると碑文に記された鐘を発見します。マックリンは鐘を鳴らすのを思いとどまりますが、同じようにティアマトの呼びかけを受けていた同僚のルースが、鐘を鳴らしてしまいます。上司や同僚から気が狂ったと思われながらも、マックリンは覚醒したティアマトと蛇神の一族を再び封印するため、マルドゥクの王笏を手にティアマトのもとを訪れます。

「眠れる人の島」:乗っていた船が遭難し、ただ一人生き残ったギャリスンは、飢えと渇きで朦朧としながら救命いかだで漂っていました。しかし死を覚悟したその時、前方に小島が現れ、ギャリスンは無事に上陸します。安心して眠りに落ちたギャリスンが目を覚まして島を探索すると、そこには豊富な果物が実り、様々な種類の動物が生息する桃源郷でした。そしてギャリスンは、白人の少女マイラーと出会いますが、少女は最初からこの島にいると言い張り、自分のほかに島にいるのは「眠れる人」だけだと語ります。好奇心にかられたギャリスンは「眠れる人」を見に行きますが、マイラーから「絶対に眠れる人を目覚めさせてはいけない」と釘を刺されています。マイラーは、この島も自分もギャリスンも「眠れる人」が見ている夢で、彼が目覚めたらすべてが消え去ってしまうと考えていました。一笑に付したギャリスンですが、やがて楽園のようだった島に猛獣や野蛮人が出没するようになり、マイラーは「眠れる人」が悪夢を見始めたのだ、と言います。野蛮人の群れに追われたギャリスンは、マイラーの頼みで「眠れる人」を目覚めさせますが――。

「神々の黄昏」:ノルウェーの森を半裸でさまよっているところを保護されたエリック(もちろん、保護してくれた養父母が名付けたもので、本名はわかりません)は、スートフォルスの村で過ごす間、人間に化けたトロルと呼ばれて村八分にされていました。養父母の死後、アメリカへ渡ったエリックですが、自分の出生の真実を確かめるべく、ノルウェーに戻ります。白い目で見られながらも聞き込みを続けたエリックは、ついにルーンストーン・ヒルという手掛かりを得ます。ルーン文字が描かれた岩場で、おぼろな夢の記憶を頼りに儀式を行ったエリックは、気付くと異世界にいました。そこは北欧神話の神々が済む世界で、エリックは邪神ロキと魔の蛇ヨルムンガンド、妖狼フェンリルに襲われながらも、アスガルドへ入り込みます。オーディンやトールと対面したエリックは、自分は剣の神チュールだということを知ります。チュールはムスペルヘイムで領主スルトとロキの密約に気付いたために命を狙われ、魔女ヘラの手で異世界(つまり人類の世界)へ送られていたのです。その頃、ロキはアスガルドを滅ぼすために魔の炎を放とうとしており、ラグナロクが起きようとしていました。ロキの攻撃を阻止すべく、チュールは盟友トールと共に急ぎますが――。

「邪眼の家」:腕利きのゴースト・ハンターのジョン・デール博士(ヘッセリウス博士やジョン・サイレンスやカーナッキの同類)と助手の哈ハーリーは、ヘンリー・カーリンという銀行家の訪問を受けます。ヘンリーの息子ドナルドは、ローズ・ミオーネという娘と恋仲になっていますが、ローズに会うたびに衰弱していくといいます。ヘンリーの家政婦によれば、ローズを含むミオーネ一族はいずれも邪眼の持ち主であり、ドナルドは邪眼を向けられたせいで命を脅かされているのでした。博士とハーリーは早速調査に出かけ、実際に近所ではミオーネ家が邪眼の持ち主として忌避されており、邪眼のせいで健康を害したと訴える住民も一人ではありませんでした。デール博士はローズの祖父ピーターと対決し、ピーターが悪魔の儀式を行って邪眼の能力を手に入れて以来、息子のジョゼフ、孫娘のローズも否応なく邪眼を受け継いでいることを知ります。ジョゼフもローズも邪眼を捨て去りたいと望んでいることを聞かされたデール博士は、二人の協力を得て、ピーターの邪眼を消失させようとしますが、同時に、怒りを抑えきれなくなった付近の住民たちがミオーネ家に襲い掛かってきます。

「生命の湖」:ハガードやメリットの伝奇冒険小説(「ソロモン王の洞窟」や「黄金郷の蛇母神」)を思わせる短めの長篇です。アメリカの億万長者ブランドは、老齢で死期が迫ったため、アフリカの奥地キリドゥに存在するという「生命の湖」の場所を突き止め、不老不死をもたらす生命の水を手に入れるための探検隊を派遣します。高額の謝礼(成功報酬ですが)で困窮した家族を救うために任務を引き受けたベテラン冒険家クラークを隊長に、自分の船を火災で失ったクエル船長、賞金稼ぎのボクサー上がりのマイク・シン、テキサスのカウボーイであるリンク、元アメリカ陸軍士官モロウ、お尋ね者の銀行強盗ケインという6名の猛者が乗り組んだヴェンチャー号は、国境を警備するフランス軍艦を振り切ってベムブ河に入り込み、禁断の地キリドゥへ入り込みます。大破した船を捨てた一行は、ボートで可能な限り川を遡ると、いよいよジャングルに足を踏み入れます。キリドゥの蛮族の波状攻撃を何度も切り抜けた一行は、「生命の湖」を守っていると言い伝えられる「死の山脈」の麓にたどり着きますが、そこはカルデラ火山かクレーターの巨大な外輪山でした。しかも外輪山の裾野は、足を踏み入れる生き物をすべて焼き尽くす炎に守られており、一行は唯一の進入路である濁流渦巻く水路をいかだで下り、ようやく外輪山の内部へ入り込みます。
そこには、深紅に染まった都があり、接近した探検隊は、同じように接近していた黒い甲冑姿の一隊と戦闘になりますが、生きて捕虜にした相手のリーダーは若い美女でした。そこに現れたのは紅い都の軍隊で、一行を深紅の都ク・ラムのザルゴ王のところへ賓客として連れて行きます。クラークが捕えた娘はルレインといい、ク・ラムと敵対し、「生命の湖」を守っているドルドナの王女でした。ザルゴ王はルレインを引き渡すよう要求しますが、クラークは(ルレインに騙されて殺されそうになりながらも)拒否します。ザルゴ王はドルドナを侵略し、生命の水を手に入れようとしており、クラークに協力を要請してきます。ザルゴ王を信用しきれないクラークは、宴会で泥酔したふりをして、ザルゴ王の密談を盗み聞き、自分たちはドルドナを陥落させるために利用されるだけで、その直後に皆殺しにされる運命にあることを知ります。ルレインを連れてク・ラムを脱出した一行は、ドルドナに到着しますが、「生命の水」を分けてほしいというクラークの頼みはルレインの父キモル王に一蹴されてしまいます。その晩、クラークはルレインの手引きでドルドナの地底深く下り、ついに「生命の湖」に至ります。不死の誘惑に駆られたクラークですが、ルレインの忠告(飲んだら"守護者"によって死よりも恐ろしい運命を背負わされる)に従って、かろうじて踏みとどまります。しかし、キモル王に見つかり、二人は神聖冒涜の罪で殺されそうになりますが、探検隊メンバーが介入してきます。そこへ、ザルゴ王の率いるク・ラム軍が大挙して押し寄せ、「生命の湖」をめぐる壮絶な攻防戦が展開されます。多勢に無勢でクラークの隊員たちは一人ずつ斃されていき、クラークとルレインも洞窟の最奥部に追い詰められます。ところが不死の誘惑を優先したザルゴ以下の兵士たちが「生命の水」を飲むと、インスマウス面の(笑)守護者たちが出現して――。

オススメ度:☆☆☆


眠れる人の島 (創元SF文庫) - エドモンド・ハミルトン, 中村 融
眠れる人の島 (創元SF文庫) - エドモンド・ハミルトン, 中村 融

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