死神に愛された男 ☆☆☆

(死神に愛された男 / カトリーヌ・アルレー / 創元推理文庫 1986)

アルレー後期の長篇です。

パリのファッション業界屈指のモラティエ商会に努めるデザイナー、ポール・ラティノは、真面目な目立たないタイプでしたが、それなりに仕事はでき、社長夫人フランソワーズに才能を評価されていました。また、ポールは、幼馴染で田舎から一緒にパリに出てきたリーナ(モラティエ商会でタイピストをしています)と婚約していますが、奔放で多情で上昇志向が強いリーナに振り回され、持て余している感は否めません。パリのファッション業界のきらびやかさを知ってしまったリーナは、平凡なポールとの結婚に乗り気でなくなっていますが、ポールは本能的に気付いていながらも目をつぶり、二人の幸せな家庭生活という空想(妄想?)に慰めを見出しています。
しかし、破局は目に見える形で迫っていました。社長のルノー・モラティエは、中年を過ぎてもセンスは抜群のプレイボーイで、地位と財産、センスと洗練された行動を武器に、フランソワーズという美しい妻がありながら、様々な女性と行きずりの情事を楽しんでいます。ポールがリーナを叔母に引き合わせようと思っていた週末、スウェーデンに出張するルノーに秘書として同行を命じられたリーナは、ルノーの手練手管にあっさりと陥落し、一夜を共にしてしまいます。ルノーは当然ながら、一夜だけの情事と考えていましたが、玉の輿狙いのリーナは、パリのファッション界を牛耳るルノーの愛人になることばかりか、フランソワーズを追い落として社長夫人に収まる野望を抱き、具体的に計画を練り始めます。同じ週末、フランソワーズに招待されて社長宅で晩餐を共にしたポールは、社長夫人から夫の女癖について愚痴を聞かされ、庭に生えている毒草を使ってルノーを殺そうと思うこともしばしばだ、という告白を受けます。
空港へリーナを迎えに行ったポールですが、ルノーとリーナの関係を疑ったことで(疑われて当然なのですが)リーナとの仲は険悪になります。リーナは既にポールを見限っていましたが、ポールは自分を偽って、そのことに気付かないようにしていました。一方、リーナも当てが外れたことに、パリに戻ったルノーは、リーナをタイピストの一人(というか、一時的に関係を持っただけの部下のひとり)として扱うだけで、社長の愛人になったというリーナの幻想も打ち砕かれます。諦めきれないリーナが強引に迫ると、ある晩、ルノーは自分の屋敷(フランソワーズは旅行中で留守)にリーナを連れて行きますが、そこでは怪しげな男女が乱交パーティを行っており、それに交じったリーナは様々なポーズで淫らな写真を撮られてしまいます。しかし、したたかなリーナは撮影に使われたカメラを持ち出し、フランソワーズに送り付けてやろうと考えます。そしてリーナは、理不尽にも自分の怒りをポールにぶつけ、きっぱりと別れを告げるのでした。
絶望したポールに追い打ちをかけるように、アメリカから来たデザイナーの青年マチューがモラティエ商会に入社し、その才能と人当たりの良さで、社内の人気をさらってしまいます――特にショックだったのは、ポールの唯一の心の支えだったフランソワーズが、手放しでマチューにちやほやしていることでした。そして、さらにショックな出来事がポールを襲います。
リーナが、ルノーの屋敷のガレージで、バックで入ってきたルノーの車に轢かれて死んでしまいます。ガレージは電球が切れていて真っ暗で、誰もいないと思ったルノーが勢いよく車を入れたためでした。リーナは下半身を潰され、頭を強く打って、ほぼ即死だったといいます。フランソワーズ(と、一緒にいたマチュー)によれば、社長への急ぎの伝言があるとリーナが電話で伝えてきたため、夕食に来るよう招待したということでしたが、リーナが真っ暗なガレージにいた理由はわかりませんでした。ポールは、リーナにしつこく迫られたルノーが、リーナをガレージに呼び出してひき殺したのではないかと疑います。
その後、ルノーのはからい(?)で、ポールはモラティエ商会のミラノ支店長に栄転することとなり、前任者ロレンツィとの引継ぎも兼ねて、ルノーと共にイタリアへ向かいます。パイロットの資格を持つルノーは、ポールとロレンツィを連れて軽飛行機でモロッコへ向かいますが、エンジンの不調から飛行機は砂漠に墜落し、ロレンツィは即死、ルノーも重傷を負ってしまいます。唯一、かすり傷で済んだポールは、助けを求めて(あるいは、ルノーを見捨てて)現場を離れ、出会った遊牧民に救われますが、救助隊を案内して現場に戻った時には、ルノーは事切れていました。
知らせを受けたフランソワーズはマチューに付き添われてモロッコへやって来ます。ロレンツィとルノーの遺体の移送や葬儀の手配など、てきぱきと働くマチューを、フランソワーズも頼りにしているようで、それを目にするポールは、ストレスと嫉妬で根拠のない妄想に苦しみます。既にマチューはフランソワーズと深い関係にあり、次期社長の座を手に入れようとしているのではないか、ルノーがリーナを殺したことをマチューは知っていて、それを秘密にすることでルノーとフランソワーズに恩を売っていたのではないか・・・。フランソワーズの勧めでパリへ戻り、静養のためルノーの屋敷の一室で過ごすことになったポールは、自分の疑惑を証明(あるいは否定)する証拠を求めて家探しをし、フランソワーズの寝室の隠し戸棚から、複数の男女と淫らなポーズを取る全裸のリーナの写真を見つけます。しかし、写真を持ち出したことをマチューに気付かれ、フランソワーズの仲裁も功を奏さず、ふたりは真剣な殴り合いを演じます。マチューの出自を知らされ、フランソワーズの支持も失ったと感じたポールは屋敷を飛び出し、自殺を考えますが、マチューを道連れにしてやろう(つまり、自分がマチューに殺されたことにすればいいわけです)と決意し、策をめぐらせます。その結果――。

タイトルの「死神に愛された男」は、「何をやっても裏目裏目に出てしまって、どんどん自分をどん底に追い込んでしまう」ポールを指しているようですが、アルレーが描きたかったのは「ほんと、男ってバカよね」ということなのでしょう。(自戒を込めて(^^;)

オススメ度:☆☆☆


死神に愛された男 (創元推理文庫) - カトリーヌ アルレー, 信也, 安堂
死神に愛された男 (創元推理文庫) - カトリーヌ アルレー, 信也, 安堂

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