推理小説展望 ☆☆☆☆

(推理小説展望 / 中島 河太郎 / 双葉文庫 1995)

先日の「名探偵WHO’S WHO」の記事でも書きましたが、「世界の名探偵50人」をバイブルに本格的にミステリの世界に足を踏み入れたのは、中学1年の春でした。当時、ハヤカワ・ミステリ文庫はまだ創刊されていなかったため、海外作品は創元推理文庫、国内作品は角川文庫を中心に読んでいたわけですが、それらの文庫の巻末の解説でたびたび出会うのが、中島河太郎さんの名前でした。最初に読んだ文庫本100冊を調べてみたら、なんと6割近くが中島さんの解説でした(^^
そんなふうに非常になじみのある人にもかかわらず、1冊になった著書を読むのは、今回が初めてです。本書は、1965年に出版され、翌年に日本推理作家協会賞を受賞した労作です。

全体は2部に分かれており、第1部は「推理小説講座」、そして約7割を占める第2部は「海外推理作家事典」となっています。
第1部では、探偵小説(「探偵小説」という呼称が「推理小説」に変わった理由は後述)の定義、このジャンルが形成された経緯、以降の展開の歴史など、サブジャンルの分類など、海外と国内の双方に目を向けて、包括的かつ詳細に解説しています。特に、明治期の日本における初期の海外作品の導入や日本独自の作品の発生などについては、同じ二葉文庫の『日本推理作家協会賞受賞作全集』から出ている「明治の探偵小説」と併読すると完璧でしょう。戦前の「探偵小説」は、謎解きがメインとなる「本格」探偵小説と、それ以外の「変格」探偵小説(怪奇幻想小説、SF、スパイ・冒険小説、犯罪スリラーなどがすべて含まれています)に分かれていました。戦後、「偵」という漢字が当用漢字表から外れたたため(現在は常用漢字として復帰)新聞雑誌で「探偵」と表記できなくなり(「探てい」にしなければならない)、「探てい小説」に代わる呼称が必要になりました。そこで生まれたのが「推理を主眼とする小説」(戦前の「本格探偵小説」とほぼ同じ定義)を意味する「推理小説」という言葉でした。その後、紆余曲折を経て、謎解きの本格ものを指すのは推理小説、より広い範囲をカバーするのが「ミステリ」として、一応は定着しているようです。また現在では「推理小説」と「探偵小説」は同義ですが、推理小説のうち探偵が主役となるものを「探偵小説」と呼ぶべきだ、という主張もあるかもしれません。また、「推理小説」の元祖はポオ作品で、推理小説作家の第1号はポオであることは、異説はあれど、揺るがされることはないようです。この第1部には、1956年から1964年までの各年について、日本で出版された内外の推理小説や作家・作品の傾向などが概説されています。この時代は、松本清張さんが台頭し、いわゆる社会派推理小説が主流となっていく時期で、本格謎解きものや名探偵の復活は、80年代の“新本格”の興隆を待つしかないようです。
第2部「海外推理作家事典」は、合わせて144人(複数ペンネームの場合は一人とカウント)が紹介されていますが、時代が古いだけに、名前も知らなかった作家が34人、名前は知っていても作品を読んだことのない作家が22人いました(残り88人は読んでいるということですね(^^;)。同じミステリの事典や入門書でも、登場する探偵役にスポットを当てたもの(先日の「名探偵WHO'S WHO」など)や、作品にスポットを当てたもの(いわゆる「傑作集」やベスト作品リストなど)は多く出ていますが、作家自身について詳細に紹介しているものは少なく(他に乱歩の「海外探偵小説作家と作品」があります)、貴重な文献だと言えます。ただし、当然ながら、1965年以降に登場した作家、発表された作品には触れられていませんから、現在ではガイドブック・入門書としてよりも、一種の古典として読むべきかもしれません。

オススメ度:☆☆☆☆


推理小説展望 (双葉文庫―日本推理作家協会賞受賞作全集) - 中島 河太郎
推理小説展望 (双葉文庫―日本推理作家協会賞受賞作全集) - 中島 河太郎

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