血と薔薇 コレクション2 ☆☆

(血と薔薇 コレクション2 / 澁澤 龍彦:編 / 河出文庫 2005)

「血と薔薇 コレクション」の第2巻。オリジナルの雑誌「血と薔薇」と本コレクションの構成については、「コレクション1」の記事をご覧ください。
本巻のテーマは「フェティシズム」です。では、内容を簡単に紹介していきます。

「『血と薔薇』宣言」:いわゆる編集者からの「巻頭言」

「鍵のかかる女」(撮影:立木 義浩):タイトルを具体的に言えば「貞操帯をした女」――それをテーマにした写真。

「少女」(吉岡 実):少女をテーマにしたエロでグロでSM的な詩。

「悪魔のエロトギア 西欧美術史の背景」(澁澤 龍彦):キリスト教の「悪魔」の原型となった異教の神々から説き起こして、キリスト教の社会や文化・風俗にさりげなく残されたそれらデーモンの姿、特に絵画や彫刻といった中に息づく"悪魔芸術"を論じた重厚なエッセイ。

「聖道門への憧れ」(稲垣 足穂):鎌倉時代以降、急速に世俗化してしまった日本仏教を否定して原始仏教への回帰を唱えるとともに、キリスト教を柱とする西洋文化が歪めてしまった"男女の本質"を憂えて、絶対性を追い求める熱い訴え(正直、きちんと理解できたとは言えません(^^;)。

「アポリネールの秘めごと歌」(ギヨーム・アポリネール):第一次大戦中、従軍していたアポリネールが休暇からの帰途、列車内で出会ったマドレーヌという女性に惹かれ、熱心に文通を始めます。それらの手紙には、マドレーヌの肉体を礼賛し、セックスを連想させる隠喩に満ちた詩が添えられていました。(現代ならスマホでもっと過激なことが簡単にできるはずですが(^^;)

「ネクロフィリアの画家 クロヴィス・トルイユ紹介」(澁澤 龍彦):澁澤さんが「フランスの横尾忠則」と呼んで称賛する画家トルイユの経歴と作風を、代表作の数々とともに紹介しています。もともと蝋人形職人だったと聞くと、その独特の人物描写もうなずけます。

「愛慾公会議」(オスカー・パニツァ):ローマ教会の専横に悩む天上の神(老衰で死にかけています)は、悪魔に命じて地上に災いをもたらそうとします。愛らしい女性の姿で悪魔が人々の間に蔓延させたのは、梅毒でした。

「蓮から「さかしま」に」:「さかしま」は、ユイスマンスの小説のタイトルとして有名ですが、元々は「さかさま」の別表現です。ここでは、「さかしまの男女の交わり」(つまり「女性上位」ですね)を生き生きと(笑)描いたインドの古詩がいくつも紹介されています。

「ポーノグラフィーの美学」(中田 耕治):ポルノグラフィ(つまり官能小説)をテーマにしたスティーヴン・マーカスの大著を紹介しながら、マーカスの造語「ポーノトピア」について考察します。つまりポルノ小説はユートピア小説に非常に近く、どちらもファンタジックな幻想を描いている、というものです。どちらもワンパターンで、同じことのバリエーションが繰り返される、という指摘は、特にポルノであれば「やることは一つで(笑)、あとはどこまでバリエーションを増やせるか」ですから、当然とも言えますね。

「毛皮を着たヴィーナス」(撮影:石本 泰博):マゾッホの代表作のタイトルをイメージさせる、フェティッシュな写真の数々。

「シンデレラの靴」(種村 季弘):靴に対するフェティシズムと足に対するフェティシズムは、結びつき、重なり合うようでもあり、厳然たる違いがあることもあるようです。当然ながら、どの種類の靴にこだわるかも、人それぞれです。これらが、いくつかのエピソードを通じて詳細に考察されています。

「レチフと靴フェティシズム」(生田 耕作):「コレクション1」で自伝的作品「ムッシュー・ニコラ」が紹介されているレチフ・ド・ラ・ブルトンヌですが、彼が靴フェチだったことは作品の描写からも明らかです。ただし、それは比較的健全な(笑)もので、靴はレチフの性生活にとって必須のものではなく、重要な彩りの一つに過ぎなかったそうです。いいんだか悪いんだか(笑)。

「未来のイヴI~V」(司 修/中村 宏/落合 茂/谷川 晃一/司 修):リラダンの未来小説「未来のイヴ」のタイトルから、イマジネーションを自由に飛躍させたイラストや造形が5点、掲載されています。

<殺人機械> 特集の一つ。エッセイ1編とブラックなイラスト4点が掲載されています。
「カフカの「処刑機械」とデュシャンの「大硝子」 カルージュの分析」(東野 芳明):カフカが小説「流刑地にて」で描いた処刑機械と、マルセル・デュシャンのポップ・アート「大硝子」の細かな機械構造との共通性を論じたもの。
「蒸気機関車式殺人機械」(中村 宏)
「人間蒸留装置 改良H・M13型之図」(池田 龍雄)
「電気ウナギによる殺人機械」(長 新太)
「正体の知れない恐怖、悪夢、狂気が映像化され自らを破壊する受像装置」(堀内 誠一)

「八重霞」(武智 鉄二):作者は、映画「白日夢」(愛染恭子主演)を撮った監督です。語り手の鉄二(作者自身?)は、虎の門交番近くで為っていた公衆電話に出てしまったために、不可思議な体験をすることになります。自分を知っているらしい相手の女の言葉に誘われ、霞が関ビルの存在しない13階に登ろうとした鉄二は、奇怪な白い靄に飲み込まれ、気付くと見知らぬ男性の内部に入り込んでいました。その男性テツジンは女性ユラと交合中でしたが、どうやら快楽を得るために行為をしているのではないようでした。とはいえ、鉄二も気持ちよくなって励んだため(笑)相手の女性は普段の2倍の快感を味わうことになります。鉄二が入り込んだパラレルワールドでは「セイショク法」なる法律が定められており、テツジンは容疑者ユラを取り調べていたのでした。元の世界に戻った鉄二は、霞が関ビル13階の秘密を探り、そこに時空の歪みがあることを察知します。

「地獄の絵師ー渓斎池田英泉」:春画で名高い浮世絵師、池田英泉の作品を紹介しています。

「英泉えがく艶画のサドマゾヒズム」(高橋 鑯):早熟の天才絵師、池田英泉の数奇な半生と作風の変遷を描きます。

「悪場所の秘儀」(廣末 保):歌舞伎や芝居が演じられるのは「悪場所」であり、そこでは古来より価値観や社会的身分の逆転が起こります。

「デモンの軌跡」(出口 裕弘):ヨーロッパにおける「デモーニッシュな思想」の変遷を概説し、何人かの哲学者を経てバタイユに帰結させます。

オススメ度:☆☆

血と薔薇―コレクション〈2〉 (河出文庫) - 龍彦, 澁澤
血と薔薇―コレクション〈2〉 (河出文庫) - 龍彦, 澁澤

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