秘密国家ICE ☆☆☆

(秘密国家ICE / フレッド・ホイル / ハヤカワ文庫SF 1981)

科学者作家ホイルの第2長篇です。第1作「暗黒星雲」を読んだのは学生時代でしたが、出版元が早川や創元でなく「法政大学出版局」だったのは、やはり当時はホイルがSF作家ではなく天文学者と認識されていたからでしょうか。

時は1970年(原書が発表されたのは1959年ですから、ほぼ10年後の近未来(^^;)、ケンブリッジ大学数学科の優秀な学生トーマス・シャーウッドは、英国政府の諜報機関(MI6かどうかは明記されていません)の幹部パーシーにスカウトされ、アイルランドに存在する謎の組織ICEに潜入するよう提案されます。ICEとは「アイルランド工業連合」の略称で、十数年前からアイルランド南西部に拠点を構えていますが、名前から連想されるような単なる業界団体などではなく、西側世界各所の優秀な科学者を手中に収め、常識では考えられないような高度な科学力を駆使して、類例のない合金や工業製品を生み出しています。エネルギー源として核融合を実用化したという噂もありますが、ICEの正体は謎に包まれており、英国政府も多数のスパイを隣国に送り込んでいるものの、これまで潜入に成功して情報をもたらした者はいませんでした。トーマスは一流の数学者であるばかりか、山歩きが趣味で体力もあり、冒険好きの青年でしたから、好奇心に駆られてパーシーの依頼を引き受けます。
英国西海岸の港へ向かう列車内で、トーマスの身分を偽装するためパーシーが仕掛けた(?)茶番劇を切り抜けたトーマスは、観光で首都ダブリンを訪れた学生という触れ込み(ほぼ本人の真の身分と同じですが)で入国を許されます。行動資金を得るためには、パーシーに指示されたダブリン駐在の諜報部員コルクフンと接触しなければなりませんが、アイルランド当局の目を引きたくないトーマスは、当事者にとっても意外な時間にコルクフンのアジトを訪れます(当然、コルクフンの正体が当局にばれていて泳がされている可能性も考えなければなりません)。首尾よく資金を手に入れた直後、警官隊の手入れがあり、トーマスは危うく難を逃れますが、アジトは爆破され、コルクフンと仲間たちは死亡したものと思われました。
逃亡したトーマスは、コルクフンに託された手紙をロングフォードのユニコーンホテルの支配人ハウスマンに届けるため、山歩きの扮装をして徒歩でロングフォードへ向かいますが、途中の森の中で、暴力を受けて死にかけている若者を見つけます。若者は「キャスリーン」という名前を言い残してこと切れますが、トーマスはユニコーン・ホテルで若者の姉であるキャスリーンと出会うことになります。しかし、ホテルに着いてみれば、コルクフンの同志だったはずのハウスマンはPSDに寝返っていました。PSDとは、ICEの謎を探るために活動する私的組織ですが、入手した情報を各国のスパイに高額で売る商売をしており、殺人も辞さないという過激な集団です。ICEの秘密(?)を記したノートを手に入れたキャスリーンの弟も、PSDに殺されたのでした。ノートを手に、キャスリーンと一緒にホテルを逃げ出したトーマスは、ハウスマン一味の追跡を振り切りますが、感情の行き違いから二人は別れて旅を続けることになってしまいます。
1週間、情報を収集しながら南下したトーマスは、次第にICE特別区に近づいていきますが、PSDの手先となっていた農家に一夜を宿を取ったのが運のつき、ハウスマン一味に捕らえられてしまいます。しかし、知恵と勇気で(笑)一味を壊滅させたトーマスは、キャスリーンと再会し再び別れたあと、西海岸へ向かう途中、思いがけなくも死んだはずのコルクフンと出会います。コルクフンの元部下で現在は漁師をしているマイクの存在を知ったトーマスは、マイクに頼み込んで、海が荒れた晩にモーターボートを積んだ漁船を出し、単身モーターボートに乗ったトーマスがICEの海岸へつけるよう手配します。しかし、針路を誤ったため、たどり着いたのは目的地よりもかなり南に位置するイニシヴィキレーン島でした。ここの別荘でトーマスは、ICEに所属する科学者たちと出会うことになります。そのうちの一人は、トーマスも知っているケンブリッジの先輩科学者ミッチェルでした。
翌日、女性物理学者ファニーに誘われて岩登りに出かけたトーマスは、断崖の途中で置き去りにされてしまいますが、経験と勇気を生かしてなんとか生還します。怒り狂って別荘へ戻ったトーマスを待っていたのは、ICEのスカウトでした。こうしてトーマスはあっさりと(笑)ICEに入り込むことができ、ICEのために研究に取り組むことになりますが、自分に課せられた使命を忘れてはいませんでした。やがて、ICEの科学力は自分の予想以上だったことを知ったトーマスですが、ファニーからICEの真の秘密を知らされることになります(いかにもホイルらしい真相です)。

オススメ度:☆☆☆


秘密国家ICE (1981年) (ハヤカワ文庫―SF) - フレッド・ホイル, 伊藤 哲
秘密国家ICE (1981年) (ハヤカワ文庫―SF) - フレッド・ホイル, 伊藤 哲

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