宇宙神の不思議 ☆☆☆☆

(宇宙神の不思議 / 二階堂 黎人 / 角川文庫 2005)

水乃サトルが探偵役を務めるミステリシリーズの第5作ですが、大学生時代のサトルを描く「~の不思議」ものとしては「奇跡島の不思議」に続く第2作です。「奇跡島」を読んだのは15年以上前で、ストーリーなどまったく忘れていましたが、あの島で事件に巻き込まれてサトルに救われた武田シオンがワトスン役(?)としてサトルとコンビを組みます。

シオンは美容師を目指して専門学校に通っていますが、ボランティア活動を通じて知り合った一つ年上の小川宣子と付き合っています。宣子は、岡山の児童施設「横川希望養護施設」の門前に置き去りにされ(推定で当時3、4歳ですが、それ以前の記憶がありません)、名前や実の両親に関する手がかりもなかったという過去があります。幸い、施設に引き取られた宣子(この名前も、園長によって名付けられたものです)は1年後に養父母の小川夫妻(「成功金属工業」という町工場を経営していました)に引き取られて幸せに育ちましたが、養父が癌で死亡し、心を病んだ養母も後を追うように自殺して、天涯孤独となってしまいました。養父の仕事仲間で親友だった山中徳次郎の支援を受けた宣子は、上京して看護学校で勉強するかたわら、八王子の老人ホームで介護のアルバイトをしており、入所者の髪を整えるボランティアに参加したシオンと知り合ったわけです。
ところで、宣子が通っている看護学校も老人ホームも、彼女が育った「横川希望養護施設」も、岡山に本部がある新興宗教団体「天界神の会」の関連施設で、宣子の養父母の小川夫妻も後見人代わりの山中も「天界神の会」の信者でした。「天界神の会」は仏教系の宗教法人ですが、仏教の仏様はすべて、人類を導くために宇宙から降臨した善なる宇宙人(=宇宙神)でるという、デニケンが大喜びしそうな(笑)教義を主体とし、信者の中には宇宙人と出会ったことがあるとかアブダクション体験があると主張する人々も多いといいます。いささか胡散臭い団体ではありますが、サトル(ありとあらゆるマイナーな(笑)サークルに関係しています)が大学のサークル「新興宗教研究会」で得た情報によれば、強引な勧誘や布施の強要などといったトラブルもなく、病院や福祉施設の運営に力を入れており、地域社会からの評判もいい宗教団体とのことでした。宣子も信者だということを聞いて不安がっていたシオンも、一安心といったところです。
宣子が働いている老人ホーム「天界神玉村恵みの苑」の入所者も、「若い頃UFOで金星へ行った」とか「今も悪い宇宙人を見つけては善なる宇宙神に通報している」とか主張する老人ばかりでした。その中の一人、島村民惠は子供の頃の記憶の欠落に苦しんでおり(宣子と同じですね)、系列の病院で逆行催眠による調査を受けたところ、かつて住んでいた秋川村という名前(海と富士山が近くに見えたそうです)を思い出しましたが、同時に大勢の村人と一緒にUFOに乗せられてどこかへ連れ去られたという記憶も蘇ってきました。海と富士山という手掛かりから息子夫婦の協力で伊豆周辺を調査したところ、確かに秋川村は存在していましたが、現在はダムの底に沈んでおり、役所の記録を調べても島村民惠という住人がいた記録は存在しませんでした。天界神を信じる民惠は、悪い異星人が村人全員を誘拐して連れ去り、後に記憶を消して別の場所に解放したのだと信じています(物心ついた民惠の最初の記憶は、青森の漁村で生活していたことでした)。民惠の主治医の田名網教授の勧めで宣子も逆行催眠を受けたところ、幼い頃に灰色の宇宙人(いわゆるリトルグレー)に何度も誘拐されてUFOに連れ込まれ、奇怪な器具を身体に差し込まれたりチップを埋め込まれたりした記憶が生々しく蘇ったというのです。悩んだ宣子はシオンに相談し、こういった奇妙奇天烈な謎を解くにはもってこいの人物がいると、サトルのもとに持ち込んできたわけです。
田名網教授から宣子の逆行催眠時のビデオを見せてもらい、民惠の話を聞いた後、サトルとシオンは宣子と共に彼女が育った岡山県へ向かいます。宣子の後見役である山中夫妻(倉敷市で「ヤマナカ不動産」を経営しています)の歓待を受けた翌日、3人はヤマナカ不動産の社員・山本(元地回りのヤクザで、いろいろな意味で使える人物です(^^;)の運転する車で、宣子の養母・小川小夜子が自殺した家を訪ねますが、途中、目ざとい山本が、自分たちを尾行している黒ずくめの男(MIB?)がいることに気付きます。尾行をまいた後、小夜子の自殺現場を調べたサトルは、小夜子は自殺したのではなく殺されたのかもしれない、とつぶやきます。事件の詳細を聞こうと警察署へ立ち寄ったサトルは、岡山県警の緑山刑事と知り合うことになります。その後、「横川希望養護施設」も訪ねますが、有力な手掛かりは得られません。しかし、「天界神の会」本部を訪ねると、「成功金属工業」の元事務員で現在は本部の経理を担当している野萩佐多子(幼かった宣子にとって姉代わりのような存在でした)から、小川夫妻が宣子を引き取った事情などを聞き出します。小川夫妻には光夫という一人息子がいました(しばしば病院へ通っていたということで、病弱だったのかもしれません)が、工場で起きた火災が原因で焼け死んでしまったため、1年後に養護施設長の世話で宣子を養女に迎えたということでした。サトルのアンテナに引っかかったのは、当時小川夫妻の工場は経済的に困窮しており、火災保険金と光夫の生命保険金が入ったおかげで再建できたという事実でした。
東京へ戻ったサトルは、3体の異星人の襲撃を受けます――もちろん本物ではなく、「宇宙人侵略対策地球評議会」に所属する変人の先輩たちでした(短篇集「名探偵水乃サトルの大冒険」所収の「空より来たる怪物」にも登場しています)。飲んべえで食いしん坊の超肥満体ですが、全国の大学の姉妹サークル(笑)に幅広い人脈を持つ情報収集の達人ブタモ、機械いじりの天才でハッキングの達人ハカセ、オネエ言葉のゲイですが行動派で武道の達人ハラキリの3人は、奇人変人ではありますが頭脳は優れているため、サトルの話を聞くと、すぐに犯罪の匂いを嗅ぎつけます。再び老人ホームを訪れて民惠の娘を話していたサトルとシオンは、警視庁の刑事に任意同行を求められます。岡山の「横川希望養護施設」の院長が撲殺されたというのです。どうやら、サトルが養護施設を訪ねたという匿名の通報があり、そのために刑事が出張って来たようでした。このことが原因で、宣子は老人ホームのバイトをクビになってしまいます。
その後、民惠が体験した多数の村人のアブダクション事件(「宇宙人侵略対策地球評議会」が関心を抱くには十分でした)の謎が解けたと信じたサトルたちは北海道へ向かいますが、見事に空振りで戻ってきます。再び岡山へ赴いたサトルたちは緑山刑事を訪ねますが、緑山も養護施設の横川院長殺害事件に関して、サトルたちの話を聞きたがっていました。サトルは事情聴取を受けるのと引き換えに、成功金属工業の火災と小川光夫の焼死事件、宣子が養護施設入口に捨てられていた件、宣子の養母・小川小夜子の疑惑の自殺の件、さらに岡山でサトルたちを尾行していた黒衣の男の件などについて、警察の捜査結果を聞かせてもらいます。新情報として、施設の入口に置き去りにされていた宣子を発見した警察官と小川小夜子が光夫を出産した際の担当看護師・玉木初恵が兄妹で、いずれも「天界神の会」の信者だったことなどが知らされます。サトルは玉木初恵が今どうしているか尋ねますが、緑山が確認したところ、姿を消して音信不通になっているようでした。山中家でパーティを楽しんだ翌朝、合流したハカセとハラキリとともに、小夜子の遺体が発見された家を再訪したサトル、シオン、宣子の3人は、遺体の発見当時は密室だった謎を解くべく(密室を作り出す仕掛けがわかれば、他殺である可能性が高まります)実験します。サトルの実験は見事に成功しますが、そこに黒衣の男が出現します。山本に捕らえられた男は、ハカセが製作した"宇宙人拷問用"のスタンガンの洗礼を受けて、自分は大阪の私立探偵で「天界神の会」の広報係の命令を受けて尾行していたのだと白状します。ところが、隙を見て逃げ出した男は、去り際に「俺の本名は小川光夫だ」と言い捨てます。
すべての裏に「天界神の会」があると感じたサトルとシオンは、ついに「天界神の会」東京本部へ乗り込んで教団幹部と対決する決意を固めますが、応対した最高幹部、教団代表の小泉祐三郎にあしらわれたばかりか、無事な玉木初恵と対面した後で出口に向かう途中、別室に連れ込まれて意識を失ってしまいます。やがて目覚めると、そこは富士山の裾野にある教団の研修施設で(上九一色村のサティアンではない)、救出に来てくれたブタモ、ハカセ、ハラキリによれば、麻薬を注射されて意識を失ったまま移送されていたようです(どうやら、教団内に小泉代表の現実路線に反対する過激な一派がいて、その連中がなにかに利用しようとして二人を拉致監禁したものと思われました)。初恵からの手紙を密かに受け取ったサトルは、再び仲間たちと岡山へ向かいますが、新たな事件が発生していました。小川光夫を名乗った黒衣の男――本名・志水寛太――が他殺死体で発見され、山中の家に避難させていた宣子が脅迫状を受け取っていました(脅迫状には「小川光夫」と署名がありました)。緑山刑事を含めて関係者が集まった山中家の応接間で、サトルは一連の事件の犯人を指摘し、宣子のアブダクションに関する記憶の真相も明らかにします。そして後日、島村民惠の異様な多人数アブダクションの記憶についても、サトルによって真相が明かされるのでした。

巻末にUFO関連の参考文献リストが載っていますが、半分も読んでいるというべきか、半分しか読んでいないというべきか(^^;

オススメ度:☆☆☆☆


宇宙神の不思議 (角川文庫) - 二階堂 黎人
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