血蝙蝠 ☆☆☆

(血蝙蝠 / 横溝 正史 / 角川文庫 1981)

戦前の昭和13~16年に発表された短篇のうち、それまで単行本に収録されていなかった作品を集めたもので、拾遺集とも言うべき作品集です。横溝さんには珍しい純粋SF(!)を含む9作品が収録されています。

「花火から出た話」:下宿でのらくら暮らしていた船員上がりの風間は、物故した高名な科学者・新城の銅像の除幕式を見物に行った際、花火と一緒に飛んで来た猫目石の指輪を手に入れます。やがて、3人の怪しい男たちが風間の周囲に出没するようになりますが、狙いは猫目石の指輪のようでした。どうやら、指輪を手に入れた者が新城博士の一人娘・珠実と結婚できるらしいのですが――。

「物言わぬ鸚鵡の話」:口のきけないマヤのために友人が買ってきてくれた鸚鵡は、舌が抜かれていました。不思議に思ったマヤの兄は、鸚鵡の元の持ち主を訪ねた結果、思わぬ事件を引き起こすことになります。

「マスコット綺譚」:ここの「マスコット」とは、原義通り「幸運の護符」のことです。縞瑪瑙の首飾りは、マスコットとして次々と女優から女優の手に渡りますが、マスコットを失った女優は、みな不幸な目に遭ってしまいます。もちろん、それは呪いなどではなく、現実的な事情がありました。

「銀色の舞踏靴」:観劇していた新聞記者の三津木俊助は、二階席から落ちてきた銀色の靴を拾います。落とし主らしい女性を追いかけますが、その女性はちゃんと両足に靴を履いていました。そして劇場へ戻ってみると、二階席では銀色の舞踏靴を履いたダンサーが変死していました。続いて、同じように銀色の靴を履いた女性が交通事故死しますが、二人とも某雑誌の美人コンテストの入賞者でした。もう一人の入賞者・鮎沢由美も命を狙われているのではないかと考えた三津木は、由利先生に相談します。クリスティの某長篇と同じトリックが使われています。

「恋慕猿」:カフェの常連客、川口は影の薄い青年で、いつも直実という一匹の猿を連れていました(川口は猿芝居の元・劇団員で、直実も芝居を演じていたそうです)。川口は、珠子という囲い者(つまり金持ちのお妾さん)と古なじみのようで、しきりに口説いているようでしたが、常に袖にされています。いつも直実の面倒をみてやっている女給の瞳は、そんな川口を気の毒に思っていました。ある晩、直実が羽子板を持って瞳の部屋へやって来ますが、羽子板には血がついていました。その羽子板は珠子のコレクションひとつで、珠子は部屋で殺されており、川口が指名手配されます。しかし、瞳はそうは考えていませんでした。

「血蝙蝠」:鎌倉に遊びに来ていた若者グループが、「蝙蝠屋敷」と呼ばれる幽霊屋敷で肝試しをすることになります。一番手の通代は、恐る恐る屋敷の離れに足を踏み入れますが、そこでは若い女が殺されており、殺害者らしい男の笑い声までが聞こえてきて、通代は気を失ってしまいます。その後、通代は気味の悪い不具の男につきまとわれ、たまたま電車に乗り合わせていた三津木俊助に助けを求めます。しかし、通代は自宅の密室で刺殺されてしまい、由利先生は意外な真相を明らかにします。

「X夫人の肖像」:絵画展で好評を博している「X夫人の肖像」という絵を見た児玉隆吉と妙子の夫妻は、奇異の念に打たれます。そのモデルが、隆吉の叔父と結婚した直後、男と駆け落ちしたお澄(妙子の親友)にそっくりだったからです。その絵を描いた画家の八木を訪ねた二人は、数奇な物語を聞かされます。

「八百八十番目の護謨の木」:殺人の汚名を着て行方をくらませた婚約者の無実を証明すべく、美穂子はボルネオのゴム農園を訪れます。

「二千六百万年後」:語り手は、理想的な社会を求めて深い眠りにつき、数千年、数百万年先の未来を訪れます。最初に目覚めた時代では、人類は有翼に進化して自由に空を飛び回っていました。しかし、次に訪れた未来では、有翼人と卵生人との間で長きにわたる戦争が続いていました。結論:誰にとっても理想郷などという世界は存在しません。

オススメ度:☆☆☆


血蝙蝠 (1981年) (角川文庫) - 横溝 正史
血蝙蝠 (1981年) (角川文庫) - 横溝 正史

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