畸形の天女 ☆☆☆

(畸形の天女 / 江戸川 乱歩ほか / 春陽文庫 1993)

先日の「黒い虹」に続き、春陽文庫版『合作探偵小説』シリーズの第5巻です。戦前の「黒い虹」と異なり、こちらは昭和28年から翌年にかけて探偵雑誌「宝石」に連載されたリレー小説ですが、4名の執筆者は乱歩以下、大下 宇陀児、角田 喜久雄、木々 高太郎という一流どころが揃っています。謎解きではなくサスペンス小説のため、ストーリーに大きな破綻はありませんが、やはり完結篇を手掛けた木々さんは苦労したようで、他のメンバーの倍のページを費やして締めくくっています。

合作の一(江戸川乱歩):貿易会社の社長、宮城圭助は、ボロを着た下層階級の人間に化けて(名前も松永昌吉と変えています)場末を放浪するという奇妙な二重生活を楽しんでいましたが、ふとしたことで知り合ったセーラー服の少女・北野ふみ子と深い関係になってしまいます。ふみ子と密会していた圭助は、一度だけふみ子を手籠めにしたことで彼女を自分の女だと考えている不良青年・斎田五郎にナイフで襲われ、抵抗したはずみに五郎を殺してしまいます。ふみ子と圭助は、逢瀬に使っていた廃屋の床下に死体を埋めて処分し、圭助は二度とふみ子に会うまいと決心します。本パートのみ、角川文庫の「十字路」にも、乱歩作品として独立した形で収録されています。

合作の二(大下 宇陀児):一度は二重生活を止める決心をした圭助ですが、我慢できずに再び松永昌吉となって街の徘徊を再開します。安全のため、北野ふみ子が住む界隈は避けていましたが、なんと圭助の会社にふみ子が訪ねてきます。ふみ子は、二人の犯罪が見つかるのではないかと危惧していました。ふみ子が通っている高校の理科教師・淵井義郎は、彼女が斎田五郎につきまとわれていたのを知っており、五郎を投げ飛ばしたこともあるといいます。しかも、淵井は例の廃屋の隣の2階に下宿しているのでした。さらに、廃屋が建っている空き地は近々、再開発される予定で、五郎の死体が見つかるのも時間の問題でした。それを聞いた圭助は、宮城貿易会社として高額で空き地を買い上げ、自ら管理人の松永昌吉として廃屋に住み込むことにします。しかし、ふみ子が淵井と師弟の関係を越えて急接近している(ように見える)ことに、圭助は心穏やかではありませんでした。

合作の三(角田 喜久雄):ふみ子は真剣に淵井先生を恋するようになり、学校をサボることも減って、圭助の誘いにも乗らなくなっていました。淵井もふみ子の想いに応えるような言動をしていましたが、同級生から淵井が故郷へ転任すると聞いてショックを受けます。しかも、淵井には故郷に許嫁がいて、転任と同時に結婚する予定であることもわかります。斎田五郎の捜索願が出され、淵井もかつて五郎と争った経緯から刑事に事情を聞かれたという話を聞いたふみ子は、「五郎は殺された、疑うなら調べてみろ」と淵井に告げる一方、圭助(昌吉)には「淵井が五郎殺しの真相に気付いた」と知らせます。あわてた圭助は、五郎の死体を掘り出し、コンクリート打ちを予定している穴に埋め直します。ふみ子は、圭助が元の社長に戻るための着替えを入れている大鞄を駅の荷物預り所から受け出すと、淵井が証拠品として鞄を持ち去ったと圭助に訴えます。ふみ子は淵井を空き地に呼び出し、淵井が五郎殺しを暴きに来たと思い込んだ圭助は、淵井を殴り殺して五郎と同じ場所に死体を埋めてしまいます。

合作の四(木々 高太郎):不良の斎田五郎にも家族がいたため、警察に捜索願が出されていました。一方、何の連絡もなく、予定の日になっても戻ってこない淵井義郎を心配した故郷の両親も、捜索願を出しています。さらに、着替えがないために圭助も家や会社へ戻ることができず、心配した夫人や会社が警察に捜索願を出しました。ふみ子から鞄を返された圭助は、失踪していたことを会社や家族に説明する理由として、ふと思い立って関西へ出張したところ、体調を崩してホテルで10日ほど静養していたことにし、無事に社会復帰(笑)を果たします。一方、五郎の失踪を麻薬密売に関連していると考えて捜査している大門刑事は、五郎と付き合いがあった北野ふみ子から話を聞こうとして、「斎田は殺された」と聞かされ驚きます。さらに淵井義郎失踪の手掛かりを求めて上京してきた本山刑事が淵井の下宿屋を訪れ、その隣には一時的に姿を消していた宮城圭助の会社が所有する土地があることも判明、三つの失踪事件に何らかの繋がりがあることが疑われました。おまけに、土地の管理人である松永昌吉は、ここのところ、ずっと姿を見せていません。空き地で不自然なコンクリート打ちが行われていたことを知った警察は、その場所を掘り返し、ついに五郎と淵井の死体を発見します。容疑者として、松永昌吉こと宮城圭助が逮捕され、取り調べが始まりますが、そこへ北野ふみ子が「真犯人は自分だ」と自首してきます。警察は、心理学者の大心池先生にふみ子の精神分析を依頼しようと考えますが――。

オススメ度:☆☆☆


畸形の天女 (春陽文庫) - 江戸川 乱歩
畸形の天女 (春陽文庫) - 江戸川 乱歩

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