たんぽぽ娘 ☆☆☆☆☆

(たんぽぽ娘 / 風見 潤:編 / 集英社文庫コバルトシリーズ 1980)

「海外ロマンチックSF傑作選」の第2巻です。第1巻に続き、リリカルなSF・ファンタジー短篇が8作品、収められています。初読みの作家は2名(ワルシャフスキーとリー)でした。

「たんぽぽ娘」(ロバート・F・ヤング):妻アンに急用ができたため、ひとりきりで2週間の休暇を過ごさなければならなくなった中年男マークは、散歩に出た丘の上で、たんぽぽ色の髪をしたジュリーという若い娘と出会います。ジュリーは、23世紀からタイムマシンでやって来たと語り、その無邪気な作り話にマークは話を合わせ、ふたりは年齢を越えて惹かれ合うようになります。しかし、ある日、父が死んでタイムマシンを修理できなくなったという言葉をを最後に、ジュリーは姿を消してしまいます。虚しい心を抱えて家へ帰ったマークですが――。ヤングの作品集は、以前は「ジョナサンと宇宙クジラ」(ハヤカワ文庫SF)くらいしかありませんでしたが、現在はハヤカワ、創元、河出文庫などから続々と刊行されています。とっても良いことです。見つけたら直ちにゲットです(^^、

「風の人々」(マリオン・ジマー・ブラッドリイ):スターホーム号が新惑星の調査を終えて地球に向けて出発するとき、医師のヘレンは残ることを決意します。彼女は男の赤ん坊ロビンを生み落としており(父親は、乗員のひとりと考えるしかありませんが、ヘレンは夢の中で何者かと関係を持ったというおぼろげな記憶があります)、子供は恒星間飛行に耐えられないからでした。ヘレンは、女手一つでロビンを育て、ロビンは思春期を迎えます。ある日、ロビンは「風の中に人の声が聞こえる」と言い出します。後に『ダーコーヴァ年代記』や『アヴァロンの霧』が訳出されて一世を風靡するMZBも、この時点では日本で全く無名の作家でした。

「ペンフィールドへの旅」(イリヤ・ワルシャフスキー):新婚旅行中のスキー事故で新妻イングリッドを失くしたリン・クレッグは、40年が経った今でも、自分が機敏に行動していれば助けることができたのではないかと考え、後悔していました。タイムマシンで事故の瞬間に戻ることができないと悟ったグレッグは、最後の手段として、悪魔を呼び出して願いをかなえてもらうことにしますが――。

「詩」(レイ・ブラッドベリ):詩人デイヴィッドは、世の中のあらゆる事象を詩に封じ込める才能の持ち主でした。詩に描かれた事象は、世の中から消え去ってしまうのです。妻リサは、宇宙のあらゆる星々を詩にしようとするデイヴィッドを止めようとします。

「われら誇りもて歌う」(ジュディス・メリル):ウィルとスーのバース夫妻は、栄誉ある火星開拓の植民メンバーに選ばれていました。ところが、出発前夜、スーは「自分は行けない」と言い出します。「怖気づいたのか、それとも男でもできたのか」と問い詰めるウィルに、スーは「愛している」と答えるだけでした。作者メリルは、『年刊SF傑作選』などのアンソロジストとして有名ですね。

「チャリティからのメッセージ」(ウィリアム・M・リー):250年の時を隔てて同じ熱病に冒された少年と少女は、お互いの感覚や意思を通い合わせることができるようになります(アニメ「君の名は」のテイストです(^^;)。18世紀初頭に生きていたチャリティと20世紀半ばに生きる少年ピーターは、互いの目と耳を通して過去と未来の世界を垣間見ることができました。しかし、チャリティが未来の歴史について口にしたために、彼女は魔女の疑いをかけられ、判事の前に引き出されることとなります。ピーターは必死に細かな歴史書を調べ、彼が突き止めた事実を使って、チャリティは無罪を勝ち取ることができました。そのこともあって、聡明なチャリティは、未来のことを知るリスクに気付き、ピーターに別れ(?)を切り出します。しかし、チャリティは時の経過に耐えるメッセージを、ピーターのために残していました。

「なんでも箱」(ゼナ・ヘンダースン):作者の代表作の一つ。内気な小学生スー・リンは、目に見えない箱に慰めを求めているようでした。担任教師の心ない言葉で箱を失ってしまったスー・リンは、見るからにふさぎ込んでしまいます。ところが、思わぬところから箱が見つかって――。作品集「悪魔はぼくのペット」には「スー・リンのふしぎ箱」というタイトルで収録されています。ヘンダースン作品としては、『ピープル・シリーズ』(「果てしなき旅路」「血は異ならず」どちらもハヤカワ文庫SF)も必読です。

「翼のジェニー」(ケイト・ウィルヘルム):奇形に関しては第一人者のリンドクウィスト医師を訪ねてきた少女ジェニーには、背中に立派な翼がありました(ちゃんと空を飛ぶこともできます)。ジェニーは、祖父とふたりで身体の秘密を隠しつつ、放浪生活を送ってきた身の上を語りますが、彼女の目的は、翼の切除ではありませんでした。ある青年(普通の人間)に恋をして結婚を考えているジェニーは、自分には子供をもうける能力があるのか、生まれてくる子供には翼があるのかどうかを診断してほしいと頼み込みます。力づけられる返事をもらって恋人のところへ戻ったジェニーは、自分が騙されていたことに気付きますが――。本作は、とり・みきさんの「SF大将」で、見事にパロディ漫画化されています(^^

オススメ度:☆☆☆☆☆



たんぽぽ娘―海外ロマンチックSF傑作選2 (1980年) (集英社文庫 コバルトシリーズ) - 風見 潤
たんぽぽ娘―海外ロマンチックSF傑作選2 (1980年) (集英社文庫 コバルトシリーズ) - 風見 潤

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