魔女も恋をする ☆☆☆☆

(魔女も恋をする / 風見 潤:編 / 集英社文庫コバルトシリーズ 1980)

昭和の後期、まだ「ラノベ」などという呼称が存在せず、少年少女向けの小説が「ジュニア小説」と呼ばれていた時代、代表的な文庫として集英社コバルトシリーズというレーベルがありました(一般向けの「集英社文庫」が発刊される前です。現在も「集英社コバルト文庫」として健在)。ラインアップを見る限り、朝日ソノラマの「ソノラマ文庫」とライバル関係だったように思いますが、中学生当時、創元文庫とハヤカワ文庫に集中していたこともあり、ほとんど意識したことがありませんでした。ですが、ソノラマ文庫同様、コバルトシリーズからも、当時の日本のSF作家のビッグネームが書いたジュニア向け作品や、国内・海外作品のアンソロジーが、かなり出ていたようです。
これから3冊続けて紹介する「海外ロマンチックSF傑作選」(タイトルは「SF」ですが、純粋ファンタジーも含まれています)も、主に十代の少女をターゲットとして編まれたもののようです。不覚にも存在を知らず、ご好意で3冊まとめていただいたものです(その節は、ありがとうございました。ようやく順番が回ってきました)。

編集方針としては、すでに他のアンソロジーや個別の短篇集などに収録されているものは避け、あまり知られていない(あくまで当時の話)作家の、入手しにくい作品を中心に選んでいるそうです。
本書には、5人の作家による5作品が収められていますが、初読みの知らない作家は1名(ハッチンズ)だけでした。

「魔女も恋をする」(ロイ・ハッチンズ):ウォンダ・ウィルキンズは、母の後を継いで、ヴァーモント州の農村を守る魔女の役割を担っていました。もちろん古来から伝わる魔術ですから、天候を左右したり、家畜に病気を起こさせたり治療したり、作物を不作にしたり収穫を増やしたり、様々なことができます。ウォンダが26歳にになったとき、町へ出ていっていたコグウェル家の息子ヘンリイが戻ってきます。ハンサムなヘンリイに村の娘たち(オールドミスを含む(^^;)は色めき立ち、ウォンダのもとに惚れ薬の依頼が殺到します。しかし、タイトルの通り「魔女も恋をする」わけで、ウォンダはヘンリイの気を引こうと、様々な魔法を駆使しますが、その結果、村は大荒れとなってしまいまいます。それを知ったヘンリイが取った行動とは――。

「ユニコーンの谷」(トマス・バーネット・スワン):スワンの作品は、十代の頃「薔薇の荘園」(ハヤカワ文庫SF)を読んでおり、その後、「ミノタウロスの森」「幻獣の森」(共にハヤカワ文庫FT)を読んでいますが、本作「ユニコーンの谷」は中篇「薔薇の荘園」の前日譚なのだそうです。13世紀のイギリス――歩く植物であるマンドレイク族(つまりマンドラゴラ)に両親を殺されたスティーヴンは、領主の猟犬の飼育係となり、学問好きの領主の息子ジョンと親しくなります。両親の復讐を果たしたいスティーヴンは、マンドレイク族の居場所を突き止めるにはユニコーンを捕まえればいいと、亡き母から聞かされていました(スティーヴンの母は若い頃ユニコーンと出会ったことがあるという噂でした)。ユニコーンを見つけるには、処女と一緒でなければならず、スティーヴンが知っている処女(かもしれない娘)といえば、ハンサムで女好きなスティーヴンを袖にし続けている(笑)ノルマン人少女ミリアムだけでした。スティーヴンはミリアムとジョンを連れて森の奥で一夜を過ごすことになり、マンドレイク族の襲撃を受けますが、ミリアムの呼びかけに応えて現れたユニコーンに救われます。

「光、天より墜ち・・・」(マーガレット・セント・クレア):カーが検証局の役人として勤務している惑星では、鳥から進化した種族ナイアが、地球人を楽しませる見世物として命をかけて集団で戦わされていました。そんな戦いで死んだ兄の遺体を引き取りに来たナイア族のライシャに、カーは惹かれます。ナイア族の文化と歴史を研究したカーは、ライシャの種族に安住の地が与えられるよう活動を開始しますが・・・。作者セント・クレアは、長篇「アルタイルから来たイルカ」(ハヤカワSF文庫)を十代の頃に読んでいます。短篇集「どこからなりとも月にひとつの卵」(サンリオSF文庫)は、そのうち登場。

「完全なる富者」(ジョン・ブラナー):科学者デレク・クーパーは、研究には理想的な環境の海辺の漁師町で、長年の研究テーマである“クーパー効果”の実用化に成功します。それは、データさえあれば死者をも蘇らせることができるというものでした。町で知り合ったナオミの訪問を受けたクーパーは、この町自体が、彼の研究を完成させるために、世界有数の財力を持つナオミが手配して作り上げたものだと聞かされます。半信半疑のクーパーに、ナオミは自分の目的を打ち明けますが、深く考えずに口にしたクーパーの言葉から、思いもかけない悲劇が起きてしまいます。作者ブラナーは、創元・ハヤカワ文庫から何冊もSF長篇が訳出されています。

「第十時ラウンド」(J・T・マッキントッシュ):人類は、人間を(精神だけですが)並行宇宙へ移送する技術を実用化していました。時代を指定して並行宇宙に精神を送り込み、あちらの宇宙にいる自分自身に同化することができるのです。しかし、このサービスは高価で、何度も受けられるものではありません。しかし、小説家のジーン・プレイヤーは、10回目の移送に臨むところでした(どこの宇宙でもベストセラー作品を書くことが決まっているため、お金に困ることはありません)。彼の目的は、愛するベリンダを親友ハリイから奪い、結婚することでした(つまりは、時間警察が介入してきそうな歴史改変の試みですね)が、これまでの9つの宇宙では、ジーンがどう行動しても、常にベリンダはハリイと結婚しています。今回、ジーンは決定的瞬間に介入する決意を固めていますが、準備期間中、公園でチャーミングな娘ドリーと出会います。これは、過去9回では起きなかったことでした。今度こそうまくいくと確信したジーンは、行動に移りますが、思わぬ邪魔が入り――。この人も初読みだと思っていましたが、調べてみると、アンソロジー「クリスマス13の戦慄」に収録された短篇「フェイカーの惑星」を読んでいました(^^;

第2巻、第3巻も、続いて登場。

オススメ度:☆☆☆☆


魔女も恋をする―海外ロマンチックSF傑作選1 (1980年) (集英社文庫―コバルトシリーズ) - 風見 潤
魔女も恋をする―海外ロマンチックSF傑作選1 (1980年) (集英社文庫―コバルトシリーズ) - 風見 潤

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