旭日の艦隊3 ☆☆☆

(旭日の艦隊3 / 荒巻 義雄 / 中公文庫 2005)

文庫版『旭日の艦隊』の第3巻です。今回は艦隊による大きな戦闘も少なく、前半では戦争に臨む日本(大高首相)とドイツ(ヒトラー総統)の思想や世界観を対比させて描かれるとともに、後半では世界史を裏から支配する“影の世界政府”の全貌が露わになります。

「英本土上陸開始」:ナチス・ドイツの総統ハインリッヒ・フォン・ヒトラー(アドルフではない)は、ヨーロッパに残る唯一の敵、英国本土を占領すべく準備を進めています。無数のグルマン砲を密かに鉄道で英仏海峡のフランス側に運び、新型上陸用舟艇の整備や空挺部隊の訓練にも余念がありません。そして、上陸日はヒトラーの霊感により、8月15日に決定しました。ドイツに投資して成功したアメリカの自動車王ハンフリー・フォード(ヘンリーではない)は、さらに甘い汁を吸おうとはるばるやって来たものの、ヒトラーの毒気に当てられて、這う這うの体で逃げ帰ってしまいます。
一方、イギリス政府では、穏健派(弱腰派?)のチェンバレン首相と強硬派のチャーチル元首相との対立が深刻化し、チャーチルがスコットランドのエジンバラを拠点にクーデターを起こして新政権を打ち立てるという噂まで流れています。グレートブリテン島の北方、オークニー諸島のスカパ・フロー海軍基地に停泊している旭日艦隊の司令、大石蔵良元帥は、諜報機関ハギス所属の林中佐から、英国とドイツの最新情報を聞き出していました。大高首相とも連絡を取りつつ、迫るドイツ軍の英本土上陸を迎え撃つ作戦の立案にも余念がありません。
日本の大高首相は、ヒトラーが信奉するアーリア人至上主義と真っ向から対立する人種の垣根を越えた共存共栄思想に基づき、世界に働きかけようとしています。英本土防衛の一環として、ヨーロッパでナチスの迫害を受け、満州に亡命してきた若者たちを構成員とする特殊部隊“霞”を編成し、スカパ・フローに送り込みます。
8月15日、ゲルマン砲による猛攻撃と同時に、ドイツ軍の上陸作戦が開始されます。ドイツ軍は海岸線の英軍陣地を蹂躙し、楽々と内陸へ進軍しますが、それは大石の進言を受け入れた英軍による作戦でした。奥地まで引きずり込んで、消耗戦を仕掛け、機を見て大打撃を加えようというわけです。そのため、目障りなゲルマン砲の拠点は霞部隊の奇襲で使用不能にしてしまいます。

「影の帝国」:大高首相は、エジプト人ジャーナリストのタルジーを招き、影の世界政府についての情報を得ようとしていました。大高の妖精に応え、タルジーは自分の持っている情報すべてを開陳します(ここで語られる中身は、トンデモ陰謀論のエッセンスをいいとこ取りしてまとめ上げた、という感じでしょうか(^^;)。
同じころ、アメリカ最高裁判事のひとりパーマーは、ミネアポリス郊外に広がる大富豪シーガー家の邸宅を訪れていました。今夜こそ、彼は影の世界政府の大幹部、最高法院の閣僚に迎え入れられる栄誉を迎えるのです。シーガーは結社員ではありますが、高位の会員ではありませんでした。深夜、パーマーは森の中でイニシエーションの儀式に臨み、さらにトルーマン大統領を暗殺する命令を受けますが、その場面を覗き見ている人物がいました。シーガーの孫娘で、ミス・アメリカに選ばれたマリーが、好奇心にかられて潜んでいたのです。マリーに見られたこと知ったパーマーは、マリーの口を塞ごうとしますが、逃げ出したマリーは、ワシントン・ポスト紙のパール記者に救われます。パールは、影の結社を追っていた同僚が変死した理由を突き止めるため、シーガー家の周囲を探っていたのです。マリーを連れてワシントンに戻ったパールは、信頼できる隣人、日本人の芸術家・西恭之の部屋にマリーを匿います。
実は日本の対米諜報機関・東機関のエージェントである西は、影の世界政府のことや、その影響を受けているアメリカ政府の動きも把握していました。これまで影の政府の傀儡だったトルーマン大統領が、それに反する動きを見せており、そのためパーマーに暗殺指令が下ったことも察せられます。また、米軍内部でアイゼンハワー、マッカーサー、レーガンの3将軍によるクーデター計画が進んでいることも知っていました。
やがて、絵を購入したいという理由でホワイトハウスに招かれた西(とマリー)は、ノーマン国務長官やマッカーサーに会うこととなります。
一方、影の世界政府はヒトラーに接近し、トルーマン暗殺を実行させようとしていました。ヴェルナー中将が率いるドイツ超原潜による米本土攻撃部隊は、北極海経由でハドソン湾へ侵入し、五大湖沿岸の工業地帯を爆撃する計画でしたが、新たな命令書により、ピンポイントでワシントンのホワイトハウスを爆撃することとなります。爆撃は成功し、ホワイトハウスは瓦礫の山となりますが――。

オススメ度:☆☆☆


旭日の艦隊3 - 英本土上陸開始・影の帝国 (中公文庫) - 荒巻 義雄
旭日の艦隊3 - 英本土上陸開始・影の帝国 (中公文庫) - 荒巻 義雄

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