女囮捜査官1 触覚 ☆☆☆☆

(女囮捜査官1 触覚 / 山田 正紀 / 幻冬舎文庫 1998)

『五感推理シリーズ』の第1巻です。1巻の「触覚」から始まって、「視覚」、「聴覚」、「嗅覚」、「味覚」と続きます。読んだのは幻冬舎文庫版ですが、直近では朝日文庫から「おとり捜査官」というタイトルで再刊されていますので、そちらのほうが入手しやすいかもしれません(同じシリーズですから、間違ってダブって買わないように(^^;)。

タイトルからおわかりのように、主人公の北見志穂は、警視庁の科捜研の関連部門「特別被害者部」に所属する女囮捜査官のひとりです。「特別被害者部」という部署(もちろん架空の組織)は、第一級の犯罪心理学者・遠藤慎一郎を部長とする組織です。遠藤は、法曹界の大物一族に連なるエリートで(血筋とコネでは、ドラよけお涼さんといい勝負かもしれません(^^;)、特に「被害者学」の研究に集中し、特定の犯罪の被害者になりやすいタイプのプロファイリングに成功しています。一方、志穂は北海道出身ですが、男好きのする外見(派手な顔立ちでナイスバディ)が災いし、そんなつもりもないのに誤解されてストーカーに付きまとわれたり、暗がりで男に襲われそうになったり、痴漢に遭うのは日常だったり、散々な思春期を過ごしてきました。大学へ通うため東京へ出てきたものの、状況は変わらず、うんざりしていましたが、たまたま遠藤が講師を務める犯罪心理学の授業で「被害者学」の講義を受けたのがきっかけで、「特別被害者部」の採用試験に応募し、合格したのでした。厳しい研修と訓練を経て、志穂は巡査待遇のみなし公務員として「特別被害者部」のスタッフとなり、囮捜査官として事件の最前線に出ることとなります。旧弊で縄張り意識が強い警察組織の中で、新顔の「特別被害者部」は白い目で見られ、「囮捜査」を是としない検事や本庁の刑事たちからはお荷物扱いでした。
今回、北見志穂は、JR品川駅で起きた「OL通り魔殺人事件」の捜査に参加していました。容疑者として浮かび上がったアルバイト学生・目黒と同じ山手線の車両に乗り込み、相手の注意を引いて犯行を誘い、現行犯で逮捕しようというわけですが、護衛役はロートルの袴田刑事(叩き上げですが、頼りになるのかならないのか不明)ひとりという、甚だ心細いものでした。もちろん、志穂自身、護身術は習っていますし、武器代わりの金属製のブレスレットも身に着けていますが――。被害者の檜垣恵子は、浜松町に勤めるOLでしたが、なぜか乗換駅でもない品川駅の女子トイレで絞殺されているのが発見されていました。スカートがはぎ取られて持ち去られていますが、体内に男の体液の痕跡はありませんでした。事件が起きたのは火曜日で、駅の構内清掃のアルバイトをしている目黒が、非番のはずの火曜日も品川駅に出てきていたことがわかっています。決定的な証拠がつかめないため、捜査本部もしぶしぶ囮捜査を認めたのですが――。
1週間前に恵子が殺されていた女子トイレへ入った志穂は、後ろからいきなり襲われて首を絞められます――しかし、襲ってきたのは品川駅を根城とする泥酔したホームレスの黒木で、悲鳴を聞いて駆けつけたのは容疑者の目黒でした。所轄の刑事たちが黒木を逮捕して、目撃者の目黒から事情を聞いている最中に、品川駅の別のトイレでOLが同じように殺されているのが発見されます。被害者の深山律子も殺害の手口や遺体の状況はまったく同じで、間違いなく同一犯人と思われました。結果的に目黒青年はシロと判明したわけですが、真犯人に出し抜かれた格好の刑事たちは心穏やかではありません。警視庁捜査一課の井原警部補や若手地方検事の那矢らは、あからさまに志穂に八つ当たりしてきます。ところが、ホームレスの黒木の口から、有力な容疑者の情報がもたらされます。黒木を初めとするホームレスたちが、駅の女子トイレに潜んでいた熟年のサラリーマンを見つけ、袋叩きにした(笑)ことがあるというのです。黒木が持っていた名詞から、相手は福岡から単身赴任してデパートに勤務している古田隆義とわかります。古田は50代の禿頭で脂ぎった男で、盛り場で女子高生に付きまとって職質を受けたことがあり、しかも勤務先のデパートは火曜日が定休日でした。ある火曜日、女子高生ともめ事を起こした古田は井原をはじめとする刑事たちに取り押さえられますが、何日も古田を尾行していた志穂の観察と推理で、古田の行動の理由が明らかにされ、彼も容疑から外れてしまいます。しかし、だとすれば、古田が品川駅の女子トイレに隠れていたという黒木の証言はどうなるのでしょうか。志穂と袴田は黒木が留意されている所轄署を訪れますが、なぜか黒木は釈放され、姿を消していました。
同じ火曜日、今度は大崎駅近くの公園で、専門学校生の清原静江が殺されているのが発見されます。それまでの被害者ふたりと違っていたのは、石で殴られた後に絞殺されていること、抵抗したらしく、爪に犯人のものらしい血がついていたこと、スカートは残っており、その代わり髪の毛がごっそり切り取られていることでした。そして、スプリングコートから男の体液が発見されます。聞き込みを続けるうちに、静江は山手線内でしつこい痴漢に悩まされていたらしいこと、駅のキオスクの公衆電話から、どこかへ電話をかけていたらしいことが、キオスクの女性店員と雑誌を配送に来ていた物流会社の青年の証言で明らかにされます。女性らしく切られた髪の毛が気になっていた志穂は、駅から看板が見える相沢理恵美容室に目を付け、火曜日に予約の電話がなかったか尋ねます。理恵の夫が電話を取ったそうですが、定休日なので断ったとのことでした。電話を受けた本人、相沢義彦は、パチンコと酒が好きな下衆野郎で、スナックで女性を罵倒したり暴力を振るう常習犯でした。しかも、相沢の外見や服装は、電車内で静江を悩ませていた痴漢とよく似ていました。志穂は再び囮となって相沢が犯行に出るのを待ち、志穂を襲おうとした相沢は逮捕されます。しかし、相沢は静江を石で殴ったことは認めたものの、倒れた静江を公園に置き去りにしただけだと言い張ります。手口の点でも、性格からのプロファイリングでも、相沢が連続通り魔殺人の犯人とは思えませんでした。最後に残ったのは、雑誌配送の担当者、夕張武史でしたが、彼の妻・直美を見た志穂は、直美が殺された3人の女性と(ついでに自分とも)まったく同じタイプであることに気付きます。みたび囮となって夕張と同じ山手線内に乗り込む志穂ですが――。

ストーリー(というか、事件)は1話完結ですが、今後に向けての伏線も、いろいろと敷かれているようです。
残り4作も、そのうち登場。

オススメ度:☆☆☆☆

【またもキリ番】本書は、自分にとって(読み終わって保有している)7000冊目の文庫本でした(^^


女囮捜査官〈1〉触覚―五感推理シリーズ (幻冬舎文庫) - 山田 正紀
女囮捜査官〈1〉触覚―五感推理シリーズ (幻冬舎文庫) - 山田 正紀

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