失われた部屋 ☆☆☆☆

(失われた部屋 / フィッツ=ジェイムズ・オブライエン / サンリオSF文庫 1979)

作者オブライエンは、アイルランド出身の19世紀のアメリカ作家ですが、南北戦争に従軍して33歳で亡くなっています。SF的な要素を含んだものや、当時流行していたスピリチュアリズム(心霊主義)に影響された怪奇幻想作品を書いており、いくつかの作品は様々なアンソロジーに収録されています(読んだことがあるものは、各作品のところで記述しています)。本書には10作品が収録されていますが、サンリオ文庫の例に漏れず現在は絶版――ただし、さらに3作品を加えた決定版が「金剛石のレンズ」のタイトルで創元推理文庫から出ていますので、こちらなら入手しやすいと思います。

「失われた部屋」:様々な思い出の品と共に、世捨て人のような生活をしていた主人公は、夜の庭で出会った見知らぬ男に不気味な警告を受けます。部屋に戻ってみると、室内は見知らぬ男女に占領されており、思い出の品々もすべて別のものに置き換わっていました。創元推理文庫「怪談の悦び」にも「なくした部屋」というタイトルで収録されています。

「あれは何だったのか?」:幽霊屋敷として名高い屋敷が、下宿屋として使われることになります。ハリイは、深夜に天井から飛び降りてきた闖入者を格闘の末、取り押さえますが、灯りをつけてみると、ベッドには誰もいませんでした。下宿仲間のハモンドと共に、相手がそこに存在していることを確認したハリイは、自分たちが透明な生き物(どうやらヒューマノイドのようです)を捕らえたことに気付きます。創元推理文庫「怪奇小説傑作集」第3巻にも、「あれは何だったか?」というタイトルで収録されています。

「鬱金香の鉢」:タイトルの「鬱金香」はチューリップのことです。オランダ生まれの資産家ヴァン・コーレンは、妻が不貞を働いたと思い込み、一人息子アランは自分の子ではないと信じ込んで、一切の教育を受けさせませんでした。ヴァン・コーレン夫妻もアランも既にこの世を去り、アランの結婚相手と一人娘アリスは健在でした。しかし、ヴァン・コーレンの全財産は現金に換えられていたものの、死亡時には発見されず、その手掛かりすら残されておらず、アリス母娘はつつましい生活を余儀なくされています。アリスの恋人ハリイは、友人のジャスパーとヴァン・コーレンが遺した屋敷で一夏を過ごすことになりますが、夜な夜なヴァン・コーレンの幽霊に悩まされることになります。チューリップの鉢を抱えた幽霊は、何かを訴えかけようとしているようでした。青心社文庫「ウィアード」第2巻にも、「チューリップの鉢」というタイトルで収録されています。

「墓を愛した子供」:諍いを繰り返す両親に見放された男の子は、なぜか墓地の一画にある墓が大好きで、丁寧に手入れをしていました。しかし、そこに埋葬されていた子供の遺骨が別の場所に移されることになり――。角川文庫「怪奇と幻想」第3巻にも「墓を愛した少年」というタイトルで収録されています。

「手から口へ」:鍵を忘れて、寒い雪の晩に下宿屋を締め出されてしまったバンクラー青年は、通りかかったゴロプシャス伯爵と名乗る奇矯な紳士の誘いを受け、クー・ドゥイユ・ホテルに一夜の宿を求めることになります。そこは奇妙なホテルで、壁から床から階段の手すりから部屋のドアに至るまで、生きた目や耳や口や手がモザイク模様のように配置されていました(つまり、文字通り「壁に耳あり障子に目あり」で、客は常に監視されているわけです)。バンクラーは、宿代代わりに1日3つのコラムを書かねばならなくなりますが、隣室の金髪の芸術家ロザモンドから様々な情報を得て、彼女と一緒に逃げ出すことを考えます。しかし、そのためには、地下蔵に隠されているロザモンドの両脚を取り戻さねばなりませんでした。

「ダイヤモンドのレンズ」:顕微鏡と、それが映し出す微小世界に取り憑かれた主人公は、霊媒の力を借りて偉大な先達レーウェンフックの霊を呼び出し、最高のレンズを創り出す方法を伝授されます。同宿の古物商シモンが条件にぴったりのダイヤモンドを密輸して隠し持っていることを知った主人公は、自殺に見せかけてシモンを殺すとダイヤモンドを首尾よく入手します。レーウェンフックの指示通りに研磨して孔を穿ったダイヤモンドのレンズは極上の顕微鏡となり、小さな水滴を覗き込んだ主人公は、そこにプランクトンならぬ優美で可憐な乙女の姿を見出します。

「いかにして重力を克服したか」:アマチュア科学者(というよりマッドサイエンティスト?(^^;)の語り手は、たまたま入った科学道具店で見つけた道具(ジャイロスコープらしい)の原理を応用して、重力のくびきを逃れる装置を創り出そうとします。

「パイオウ・ルウの所有せる龍の牙」:清朝時代の中国を舞台にした伝奇ファンタジー。道士パイオウ・ルウは、天空を支配する龍ルンの牙を手に入れたことで様々な奇蹟を起こせるようになっており、その魔力を使って漢人による王朝を復活させようとします。

「世界を見る」:魔法医から“すべてを見通す能力”を手に入れた詩人を襲った皮肉な運命とは――。

「ワンダースミス」:オブライエン版「チャイルド・プレイ」または「アンドロイド0指令」(ウルトラセブン)と言えばいいでしょうか(笑)。ジプシーの魔法使いたちが、自分たちを虐げる白人に復讐すべく、人形に悪魔を宿らせて子供たちを殺戮しようと計画しています。首謀者ワンダースミスの娘(血縁関係はないようです)ゾーニラと恋人の詩人ソロンは、彼らの計画に気付きますが――。

オススメ度:☆☆☆☆


失われた部屋 (1979年) (サンリオSF文庫) - フィッツ=ジェイムズ・オブライエン, 大滝 啓裕
失われた部屋 (1979年) (サンリオSF文庫) - フィッツ=ジェイムズ・オブライエン, 大滝 啓裕

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