SF戦争10のスタイル ☆☆☆☆

(SF戦争10のスタイル / ジョー・ホールドマン:編 / 講談社文庫 1979)

昭和50年代、初期の講談社文庫から、海外ミステリやSFのアンソロジーが、かなり刊行されていました。当時は、創元とハヤカワで手一杯(笑)でしたので、横目で見るだけで(←意識はしていたらしい)ほとんど手を出していませんでした。その後、古書店などで見かけるたびに少しずつ入手しており、本書もその1冊です。今後も黒背表紙版(笑)講談社文庫が、ちらほら登場すると思います。
本書はタイトル通り、「SFが戦争をどう扱ったか」というテーマのもとに編集されたものです。ただし、編者がホールドマン(ベトナム戦争に兵士として従軍して下半身に重傷を負い、その経験から「終わりなき戦い」を書いてヒューゴー賞・ネビュラ賞を受賞しています)ですから、勇壮なミリタリーSFや宇宙戦争SFを集めたアンソロジーではありません。未来では「国家間、惑星間、星系間の対立を解決するため、全面戦争に代わってどのような手段が取られるのか」あるいは「戦争を起こせなくするために、どのような手段が考えられるのか」というテーマについて、各作家が思考実験を行い、出された結論が10作品で紹介されているわけです。作家もビッグネームが多く、知らない(読んだことがない)作家は一人だけ(ネイバーズ)だけでした。
それでは、各作品を簡単に紹介していきます。

「バシリスク」(ハーラン・エリスン):ベトナム戦争(明記されてはいませんが)に従軍していたレスティグ兵長は、夜間パトロールの途中、ジャングルでベトコンの罠にかかり、捕虜になってしまいます。執拗な拷問を受け、軍機をしゃべってしまったレスティグは、なんとか生還して帰国しますが、傷痍軍人となった彼を待っていたのは「軍事機密を敵方に漏らした売国奴」という手ひどい扱いでした。生家は破壊され、家族も身を隠してしまっており、かつての隣人や友人たちを含んだ暴徒が、レスティグをリンチにかけようと迫ってきます。しかし、レスティグは、ある異界の存在から、恐るべき武器を授けられていました。

「決闘機械」(ベン・ボーヴァ):天才科学者レオ博士は、人類固有の闘争本能をバーチャル世界で昇華させる「決闘機械」を発明し、個人間の諍いはすべて「決闘機械」で解決するよう政府に働きかけて、必要な法制度を整備させました。現実世界での深刻な喧嘩や対立も、バーチャル世界での戦い(互いに好きな世界や武器を選べます)で決着をつけ、現実の当事者は肉体的にも精神的にもまったく傷を負いません。ところが、レオが思ってもみなかった事態が発生します。独裁者ケナスが支配する惑星国家ケイナスの士官オーダルが、対立するアクアテイン連邦の政治家たちを個人的に挑発して、「決闘機械」で決着をつけることになりますが、負けて「決闘機械」から出てきたアクアテインの政治家たちは精神的ショックを受け、ついに首相のデュラクが人事不省に陥ってしまいます。レオは自らアクアテインへ赴き、宇宙監察軍から派遣されたヘクター大尉と共に真相を究明しようとしますが、ケナスに命じられたオーダルは、レオを次のターゲットに選んでいました。しかし、不器用でおっちょこちょいで数学の天才(笑)のヘクターが、代わりに「決闘機械」に入ることになります。

「暗殺者」(ポール・アンダースン):対立する相手国をねじ伏せるには、全面戦争するよりも、指導者をピンポイントで殺すほうが効率的です。そのため、未来の中国とアメリカの間では、様々な暗殺者が送り込まれ、ターゲットを虎視眈々と狙っていました。その範囲は徐々に広がっていきます。

「奇襲作戦」(ハリー・ハリソン):原住民の集落へ忍び寄った大尉と二等兵は、必要な情報を探り出すと、奇襲作戦を実行に移します。ですが、集落に対して用いられたのは、ベトナム戦争当時のような火炎放射器や枯葉剤ではなく、電化製品や医薬品など、文明の恩恵でした。

「カーテン」(ジョージ・アレク・エフィンガー):作者のカナ表記は「ジョージ・アレック・エフィンジャー」のほうがポピュラーです(本書が出たときは、まだ代表作「重力が衰えるとき」のシリーズは邦訳されていませんでした)。真剣に「戦争ごっこ」をする様々な撃団(劇団ではない)は、評論家の厳しい批評を受けつつ、戦いを続けていました。“真剣に”演じるわけですから、当然、死傷者もどんどん出ます。

「傭兵マウザー」(マック・レナルズ):企業や組合など、組織体同士の対立・紛争を解決するために、当事者の組織は自分で軍を編成し、指定された戦場で実際に戦闘を行い、雌雄を決します。ただし、使える兵器は19世紀に使われていたものに限り、核などの大量殺戮兵器は禁じられています。このような戦闘はメディアを通じて全国へ放送され、著名や将軍や傭兵には熱狂的なファンもついています。今、運輸市場を独占する「コンチネンタル」社と、それに戦いを挑んだ新興の「真空チューブ」社との間で、決戦が行われようとしています。有能な指揮官が統率し、強大な兵力を持つコンチネンタル社に対し、寄せ集めの傭兵部隊しか持たない真空チューブ社は圧倒的に不利でした。玄人筋に高評価されている傭兵マウザー大尉は、なぜか真空チューブ社の傭兵として志願します。彼には、大逆転勝利をつかむ秘策がありました。

「黄金律」(デーモン・ナイト):かつて核兵器の秘密開発が行われていたチリコシの軍事施設で、また新たな秘密研究が始まったことを察知したジャーナリストのダールは、紙面で告発すべく精力的に取材を進めていました。国防省の高官から招待を受けたダールは、実際にチリコシの施設に乗り込み、厳重に警備された地下室に幽閉されている異星生物を目の当たりにします。一見して、ラヴクラフトの描く“旧きもの”に似ている異星人はアザ・クラと名乗り、英語で意思疎通も可能ですが、重要な質問(特に地球へ飛来した意図)については答えようとしないといいます。しかし、ダールが他のスタッフとは違うと判断したのか、アザ・クラは脱出を手助けしてくれるよう頼み込んできます。軍の調査結果のレポートを熟読し、国内で起きていた数々の奇妙な事件と結び付けたダールは、アザ・クラに協力することを決意します――「人類からあらゆる争いごとを一掃し、平和をもたらすために来た」というアザ・クラの言葉を信じて。タイトルの「黄金律」は、一言で言えば「因果応報」です。

「平和このうえもなし」(ウィリアム・ネイバーズ):多くの戦争を勝利に導いてきた英雄でさえも、ウイルスに冒されれば狂ったように平和を追い求める人格になってしまいます。こういう生物兵器の使い方もあるんですね(^^

「番号礼賛」(アイザック・アシモフ):これは、小説ではなくアシモフのもうひとつの十八番、科学エッセイの1篇です。コンピュータを使って、すべてをデジタルで管理すれば、感情や曖昧さが入り込む余地なく、政府は正当かつ公平に国民を統治できる、という論旨なのですが、日本はこれと正反対のような(^^;

「ホワード・ヒューズに――控え目な提案」(ジョー・ホールドマン):世界一の金持ちが、全財産を投げうって実行したのは、世界から核兵器を一掃する計画でした。手段は違いますが、根本的な発想は「沈黙の艦隊」と共通するものがあります。

オススメ度:☆☆☆☆


SF戦争10のスタイル (講談社文庫) - ジョー・ホールドマン, 岡部 宏之
SF戦争10のスタイル (講談社文庫) - ジョー・ホールドマン, 岡部 宏之

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