くくり姫 ☆☆

(くくり姫 / 佐々木 禎子 / ハルキ・ホラー文庫 2001)

作者(この人は初読みです)の第2長篇。

札幌で両親と暮らす小学5年生の坂本綾香は、幼いころから実の父親に性的虐待を受けていました。その日も、会社を早退してきた父に淫らな要求をされた綾香は、ついに恐怖と怒りを爆発させ、果物ナイフで父親を刺し殺してしまいます。茫然として街をさまよっていた綾香に声をかけたのは、古代史専攻の大学院生シンジでした。事情を聞いたシンジは、自分も人を殺してきたばかりだと平然と語り、綾香の家へ一緒に入り込むと、綾香の父の遺体に白い布をかぶせ、てるてる坊主のように吊るします。
シンジは、日本書紀にわずかに言及されている謎の多い神、菊理媛(ゲームの「女神転生」にも「キクリヒメ」という名前で登場しますね)を研究しており、この女神は「くくり姫」と呼ぶのが正しく、旱魃や暴風雨などで農作物ができず飢饉に陥った農民たちが若い娘を生贄として捧げて祈る恐ろしい神性だったと考えていました(実際、マイナーながら、そういう解釈をしている学説もあるらしい)。シンジは、昔の農民と同じように綾香の父の死体を「くくり姫」に捧げたのでした。童謡「てるてるぼうず」を口ずさみながら――。
こうして綾香は、菊理姫が主神となっている石川県の白山神社を目指すシンジの旅に同行することになります。UFO信者でもあるシンジは、綾香の父が持っていたオカルト雑誌に載っていた“UFO銀座”(日本各地でUFOの出現・目撃例が多い土地)に立ち寄りながら、白山神社へ向かうのでsが、それは毎日のように見知らぬ相手を殺しては「くくり姫」に捧げる連続殺人の旅でもありました。通りがかりの女性、泊まったホテルの従業員、シンジが手に入れたくなった車の運転手――サイコパスのシンジは平然とそれらの人々を殺し、権威ある人間の命令には逆らえないようになっていた綾香は、言われるがままに死体の始末を手伝わざるを得ないのでした。綾香自身、いつかはシンジの気まぐれで殺されるかもしれないと不安になっていますが、せめて命令に従っていれば、殺されずに済むという希望にすがっていました。綾香を不安に陥れていたのは、そればかりではありません。旅を始めたころから、シンジがいない時に限って、綾香の周辺に怪しいものが出没していました。最初は音や気配だけだったものが、鏡に映るおぼろげな影となり、ついには骸骨、さらに女性の腐乱死体となって、次第に実体感を持つようになっていました。
旅を続ける途中、シンジは小学3年生の的場一矢に声をかけ、行きがかり上、誘拐も同然に一矢を同行させることになります。UFOやオカルトに詳しい一矢は、シンジと話が合うため、綾香は自分が邪魔者として排除されるのではないかと不安になります。ある日、シンジが外出中、一矢は何かに憑かれたかのように別人の声で、「くくり姫を封じろ」と訴えます。どうやら、「くくり姫」と対立する超自然の存在(一矢ならチャネリングしてきた宇宙人とでも言うでしょう)がメッセージをよこしたようでした。しかし、今度は「くくり姫」が実力行使したのか、一矢は廃屋の天井裏を踏み抜いて首括り状態になって死んでしまいます。
この頃には、坂本家で発生した殺人は公のものとなり、坂本家に侵入したシンジが父親を殺して綾香を拉致したと考えられていました。そしてついに、公開捜査されていたシンジと綾香は通行人に発見されますが、綾香は目撃者を殺そうとしたシンジの邪魔をします。こうして綾香は、チェーンソーを持ったシンジに追い回され、「悪魔のいけにえ」さながらの逃亡追跡劇を繰り広げることになります。それは、「くくり姫」をめぐって対立する(デニケン風に言えば)神々の代理戦争とも呼べるものでした・・・。

生理的に痛いスプラッターホラー、シリアルキラーであるシンジを焦点に据えたサイコホラー、「くくり姫」伝説をめぐる伝奇ホラー、UFOがらみのSF・スピリチュアルホラーなど、テーマを盛り込み過ぎたために、消化不良気味になっていることは否めません。とってつけたようなエピローグも、不条理ホラーの趣ですが、効果を上げていないように思います。

オススメ度:☆☆


くくり姫 (ハルキ・ホラー文庫) - 佐々木 禎子
くくり姫 (ハルキ・ホラー文庫) - 佐々木 禎子

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