とむらいは俺がする ☆☆☆☆

(とむらいは俺がする / ハドリー・チェイス / 創元推理文庫 1974)

チェイスの初期作品です(邦訳された中では5作目)。

ニック・イングリッシュは無一文から苦労を重ねて成功し、今や一流のプロモーターとして政財界にも影響力を持つ資産家となっています。現在は、新設される病院に自分の名を冠するべく上院議員ボーモントに働きかけ、金にものを言わせてなかば強引な手段を策しています。秘書のロイスは貧乏時代からニックを支え、献身的に使えてきた有能な女性で、ニックに深く想いを寄せていますが、分をわきまえているため、ニックはまったく気づいておらず、顔とプロポーションは抜群な歌姫ジュリーを情婦にしています。ところが、ジュリーはジュリーで、ニックの側近の総支配人(翻訳が古いのでしょうけれど、おそらく原文はGeneral Manager)、堅物の(と思われている)ハリーと真剣に恋に落ちています。
そんな中、私立探偵をしているニックの弟ロイが事務所で拳銃自殺しているのが発見されます。職についても長く続かず、金がなくなれば自分を頼ってくるロイをなんとか一本立ちさせようとして、ニックは1年前にアラート探偵社を買い取り、ロイを所長にして任せていたわけですが――。ニックから知らせを受けたロイの妻コリーンは、ニックがロイを助けなかったことをなじり、最後はロイを殺したのはニックだとまで言い出します。
秘書のロイス、顧問弁護士クレイルらにロイの事務所の調査を指せたニックは、奇妙なことに気付きます。帳簿には、最初の半年はきちんと金の出入りが記載されていたにもかかわらず、直近の半年はまったく白紙のままで、引き出しからは顧客の名刺がなくなっています。おまけに金庫には2万ドルの現金が入っており、ロイが秘書のメアリーと深い仲になっていたことも判明します。メアリーの部屋へ駆けつけると、彼女は首を吊って死んでいました。ロイの自殺を知ったメアリーが後追い自殺をしたと考えられましたが、現場を捜査した警察のモリリ警部補は、メアリーが殺された証拠を発見します。ロイのスキャンダルが公になれば、ニックの評判に傷がつくため、ニックはクレイルを使って「ここしばらく、ロイは神経衰弱に陥っており、発作的に自殺した」というストーリーに基づいて、検死裁判を乗り切ります(もちろん、しかるべき証人がしかるべき証言をするように大金をばらまき、特にメアリーが殺された証拠を握りつぶした悪徳警官(笑)モリリには言い値の5千ドルを支払っています)。
ロイもメアリーと同じように殺されたに違いないと考えたニックは、犯人を突き止めるべく、旧知の私立探偵レオンを呼び寄せます。レオンはロイの後釜としてアラート探偵社の所長として仕事を始めますが、さっそく事務所に盗聴器が仕掛けられているのを発見します。また、ビルの管理人から、ロイが自殺(?)した時間帯にフロアを訪れた人々の特徴を聞き出しますが、そのうちの一人はジュリーにそっくりでした。さらに、ロイが死んだことを知らずに事務所を訪れたへネッシーという商店主から、ロイに恐喝されていたことを聞き出します。しかし、直後にへネッシーは車に轢き殺され、へネッシーから教えてもらった別の被害者の女性メイも、レオンの努力もむなしく、暴漢に刺し殺されてしまいます。
メイを殺した男の特徴を聞いたニックは、自分の高級アパートメントの同じ階に住むディレッタント、シャーマンに違いないと気付きます。そして、ロイが自殺した晩、シャーマンがアラート探偵社のあるフロアを訪れていたこともわかります。ニックはシャーマンの部屋に乗り込んで事情を聞きますが、シャーマンは、ロイに恐喝されていたジュリーが、金を払いに行った際にトラブルになり、ロイを射殺してしまったのだろうとうそぶきます(実際、ジュリーはハリーとの情事をネタにロイに強請られていました)。しかし、ロイには他人を強請るほどの才覚はない(笑)と知っているニックは、シャーマンこそがロイを窓口に恐喝を働いていた黒幕だと看破しますが、シャーマンは動じず、ロイの恐喝行為が公表されればニックの評判も大きなダメージを受けると指摘します。ニックは、週末までに町を出てかない限り、あらゆる手段を使ってシャーマンを逮捕させ、殺人犯として電気椅子に送り込むと宣言するのでした。
ニックが一筋縄ではいかない強敵だと感じたシャーマンは、先手を打って狡猾な罠をめぐらせます。ロイの妻コリーンを焚きつけて、酒場の大勢の客がいる面前でニックをなじらせ、ジュリーとハリーの関係を告発させます。ジュリーの家へ向かったニックが到着する前に、シャーマンは盗み出したニックの銃でハリーとジュリーを撃ち、情事の現場を見つけたニックがふたりを射殺したように見せかけます。しかし、ニックが駆けつけた時、まだジュリーは息があり、犯人はシャーマンだと告げてこと切れます。クレイルとレオン、ロイスに連絡を取ったニックは、警察にすべてを話せというクレイルのアドバイスを無視し、自らの手でシャーマンとの決着をつけるべく行動を開始しようとします。コリーンにシャーマンのことを証言させようと、ロイスをコリーンの家に向かわせますが、そこにはシャーマンが先回りしていました。ニックに命令されたレオンが駆けつけると、コリーンはメアリーと同じように首を吊って死んでおり、ロイスの姿は消えていました。警察の手が回り、ニックはモリリ警部補に連行されますが、モリリは自分の汚職がばれないよう、ニックを殺して闇に葬ろうと考えていました。後をつけてきた腹心の運転手チャックの手で危うく救われたニックは、レオンがもたらした情報から、シャーマンが所有する豪華ヨットが沖合に浮かんでいることを知り、ロイスもそこにいるに違いないと考えて(ようやくニックも、ロイスこそが自分にとって最も大切な相手だと気付きました)、最後の対決に乗り込む決意を固めます。

オススメ度:☆☆☆☆


とむらいは俺がする (創元推理文庫 133-5) - ハドリー・チェイス, 井上 勇
とむらいは俺がする (創元推理文庫 133-5) - ハドリー・チェイス, 井上 勇

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