ガラスの鍵 ☆☆☆

(ガラスの鍵 / ダシール・ハメット / 創元推理文庫 1972)

作者ハメットの第4長篇で、「自分が最も愛している作品」というものですが、探偵役のコンチネンタル・オプもサム・スペードも登場しません。
主人公は自称“賭博師”のネド・ボーモンです。彼は、アメリカ東部の都市の暗黒街の顔役の一人ポール・マドヴィッグと親しい仲(配下というわけではなく、客分扱い)ですが、最近はツキに恵まれず、博奕でも負けが込んでいました。一方、ポールは政界に暗然たる影響力を振るうため、上院議員ラルフ・ヘンリーを資金的にバックアップしていましたが、ヘンリーの娘ジャネットに惚れ込み、結婚を考えています(正直、ネドは、のぼせ上っているポールを冷ややかに眺めていますが)。ところが、ポールがヘンリー家の晩餐に訪れた晩、ヘンリーの息子テイラーが歩道で撲殺され、それを最初に発見したのはネドでした。テイラーの頭からは、かぶっているはずの帽子が消えていました。
同じ晩、ネドは久しぶりに競馬で大穴を当て、翌朝、勝ち金を受け取るためにノミ屋のバーニーを訪ねますが、バーニーは姿を消していました。バーニーの情婦ウィルシャの話では、バーニーは殺されたテイラーと借金がらみでもめ事を起こしており、証拠としてテイラーの借用証文も残っているといいます。ネドは、ポールの娘オパルがテイラーと恋仲だったことを知っており、前日の午後オパルがテイラーと一緒だったことを聞き出します。ポールの影響力で、一時的に地方検事局の特別捜査官に任命されたネドは、テイラー殺しの謎を(表向きは)追うことになります。
バーニーがテイラー殺しの犯人かどうかは別として、競馬の勝ち金を取り立てたいネドは、親しくしている便利屋ジャック(「始末屋ジャック」ではない(^^;)からの情報を得て、バーニーを見かけたという酒場に乗り込みます。しかし、バーニーの連れ、チンピラのキッドに一撃でのされてしまいます。再度ジャックから情報を得たネドは、バーニーが潜伏しているアパートへ乗り込み、特別捜査官のバッジをちらつかせてバーニーを脅し、殴りかかったキッドを射殺して、首尾よく競馬の勝ち金をせしめます。
地方検事局へ顔を出したネドは、上司のファー検事から、検事局に届いたという手紙を見せられます。そこには、テイラー殺しに関する関係者しか知らない事実に関する質問が書かれていました。そして、ネドの部屋にも同じ人間からと思われる怪しい質問状(内容は真実を突いています)が届きます。どうやら、同じような手紙が、かなりの数の関係者に届けられているようでした。
一方、ポールは、近づく選挙で窮地にあるヘンリーを助けるべく、対立候補を支持するシャド・オロリ(ポールのライヴァルで、暗黒街を二分する顔役)へ容赦ない攻撃を開始します。ネドは強硬策はまずいとヘンリーに忠告しますが、ポールは聞き入れず、ネドとポールは袂を分かつことになります。そんなネドにオロリが声をかけ、ポールを失脚させる計画に手を貸すように誘ってきますが、ネドは首を縦に振りません。業を煮やしたオロリはネドを監禁したうえ、手下のジェフとラスティを使って徹底したリンチにかけます。半死半生になりながら、隙を見てようやく脱出したネドは、気を失って病院へ収容されます。
見舞いに来たポールと和解したネドは、テイラーの妹ジャネット、ポールの娘オパルなどの見舞いを受け、ジャックからも様々な情報を得ます。相変わらず、例の怪文書は関係者のもとへ届いているようでした。そして、オロリの息がかかっている『オブザーバー』紙が、ポールがテイラー殺しの犯人だと主張する社説を載せ、ポールを(そしてポールが援助しているヘンリー上院議員を)失脚させようとするキャンぺーンを繰り広げます。
ネドは、『オブザーバー』紙の発行人マシューズの家を訪ねますが、そこにはマシューズ夫妻とオロリ一味のほか、オパルまでいました。ネドは、マシューズがオロリからの借金で首が回らず、オロリの命令に無条件で従わなければならないと告発し、マシューズは拳銃自殺(?)してしまいます。
ネドは、ジャネットから、テイラーが殺された夜、晩餐に訪れたポールがジャネットにキスしようとしたため、怒ったテイラーがポールを追って飛び出して行ったことを聞き出します。また、テイラーが殺される前に、歩道でポール(らしき人物)と口論しているのを見たという目撃者の証言も聞き、ポールからも当夜に起きたことを聞き出そうとします。やがて、怪文書を送り付けた人物を突き止めたネドは、オロリ(や手下たち)との落とし前もつけ、テイラー殺しの真実を暴き出します。

読んでいて驚いたのは、すべてネド・ボーモンの視点から描かれているにもかかわらず、ネドの内面の心理描写が1行もないことでした。あくまで読者は、ネドの発言や行動から彼の心情を推測するしかありません。まさにこれが、ハメットが確立させた「ハードボイルド」の真髄なのでしょう。

オススメ度:☆☆☆


ガラスの鍵 (創元推理文庫 130-3) - ダシール・ハメット, 大久保 康雄
ガラスの鍵 (創元推理文庫 130-3) - ダシール・ハメット, 大久保 康雄

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