神の剣 悪魔の剣 ☆☆☆

(神の剣 悪魔の剣 / リチャード・A・ルポフ / 創元推理文庫 1979)

副題が「ファンタジー日本神話」とあるように、本作は、作者ルポフが日本の神話や説話に登場するキャラクターやエピソードを、かなり自由に(笑)解釈して練り上げた、"なんちゃって純日本風異世界冒険ファンタジー"とでも言えるものです。キャラクターを別にすれば、エキゾチックな異世界を舞台にした、ごく普通の『剣と魔法』のヒロイックファンタジー(主人公はジレルのような女性)でしょう。
ルポフの作品は、過去にP・J・ファーマーとの共作で『ダンジョン・ワールド』(これも角川Fシリーズで、3巻までで邦訳打ち止めとなっています)の第1巻「暗黒の塔」を読んでいるだけです。他の作品は純粋SFらしく、「宇宙多重人格者」が近日登場予定。

どことも知れぬ世界で、名もない黄色の両性具有者が黒い無性者に追われ、傷つけられて別の世界に転移します。気付くと、両性具有者は女性になっていました。当てもなく異世界をさまよう彼女は、理解できない言葉を話す男と出会い、一緒に巨大なスズメバチのような生き物の背に乗って旅立ち、霧に覆われた広大な海を進む大きな船に乗り込みます。
女性は、船室で「弥勒」と名乗る童子に出会い、自分は「鬼子母」と呼ばれる“送り込まれた者”だと知らされます。そして、彼女を連れてきた男は「愛染」で、『綱の国』の侵略をめぐって弥勒と敵対する勢力の首領だということでした。甲板に出た鬼子母は愛染と合流し、自分が弥勒と愛染のどちらに与するかもわからないまま、愛染に連れられて大船の船底深くに降りていきます。到着した先は地下世界で、そこには愛染の配下である悪魔族「醜目」の集団が、頭目の「茨木」に率いられて出撃の時を待っていました。愛染や茨木に乞われ、不思議な青い炎の中で未来を幻視しようとした鬼子母は、気づくと大船の甲板に戻っており、そこでは熾烈な戦いが繰り広げられていました。海中に潜む妖怪「河童」の一軍が攻め寄せ、弥勒の配下の兵士たちと戦っていたのです。武器を手にした鬼子母は自ら戦いに身を投じ、河童の群を叩き伏せますが、河童の船に入り込んでしまったため、大船から引き離されてしまいます。船倉で氷のトンネルを見つけた鬼子母は降りていき、氷漬けにされた愛染を発見、自らの体温で氷を溶かし、愛染を救い出します。
愛染は綱の国に向かうため、同行を申し出た鬼子母と共に海底へ向かい、壮大な海底都市に入り込みます。そこは、竜王が支配する竜宮城ならぬ『黄泉の国』でした。ここの住人は、海上の戦いで命を落とした戦士や兵士ですが、戦いで死んでも翌朝になると蘇り、再び戦いを続けるという無限の時を繰り返していました。ここにとどまることを拒み、『綱の国』へ向かうというふたりに、竜王は玉手箱――じゃない、海の満ち引きを自由にできる満珠と干珠を与え、侍従の「須佐之男」を案内役兼護衛としてつけてくれます。須佐之男は、家宝である草薙剣を八岐大蛇に奪われ、恥辱にまみれて黄泉の国に落とされていましたが、なんとしても大蛇を倒して剣を取り戻し、名誉挽回したいと決意していました。
海から出て上陸し、断崖の上に達した一行は、精霊の支配者である「大国主」に出会います。愛染や須佐之男の目的が達成できるか助言を求められた大国主は、ふたりの予言者「稗田阿礼」と「太安万侶」を召喚し、未来を告げさせます。予言に基づいて、大国主も八岐大蛇のもとへ向かう一行と同行することとなります。
“氷の森”を抜け、出雲の地へ至った一行は、絶望した村人たちと出会います。八岐大蛇が8年に一度、8人の幼子を生贄に捧げるよう要求してくるというのです。鬼子母の干珠の力で、八岐大蛇が潜む水中洞窟の入口を発見した須佐之男は、口八丁で(笑)大蛇の8つの頭に酒を飲ませ、泥酔させてしまいます。眠り込んだ大蛇の頭をすべて切り落として退治した須佐之男は、家宝の草薙剣を取り戻すと、取り戻した剣で見事に切腹し、姉の天照のもとへ昇天します。草薙剣を鬼子母に託して――。
いよいよ『綱の国』へ向かおうとする愛染は、大国主に茨木と醜目たちを呼び出してもらい、弥勒の乗る大船が近くにいることを知ります。愛染と茨木は宙を飛んで大船へ向かい、鬼子母と大国主は筏を造ると、それに乗って大船へ向かいます。鬼子母と大国主から愛染の行動を聞いた弥勒は、「一寸法師」に化身し、配下の兵士を叱咤して大船を『綱の国』に向かわせます。『綱の国』では、一足早く愛染の率いる醜目の軍が守備隊を一掃していました。『綱の国』をめぐる醜目たちと弥勒の兵士たちの戦いは永遠に続き、愛染と一寸法師は鬼子母の意見を受け入れて、新たな異世界を求めて旅立つことになります。

とまあ、ルポフの描くキャラクターが、オリジナルの神話や説話とどこまで、どのように違っているのかの認識は、読者自身がどこまで原典を知っているかに左右されます(翻訳者の厚木淳さんも、武器や衣装など小道具の記載のミスについては「訳注」としてツッコミを入れていますが、キャラクターやストーリーに関しては、作者のオリジナリティを尊重してか、あまり突っ込んでいません)。原典を尊重する人には噴飯ものかもしれませんが、おおらかに受け入れるのが賢明というものでしょう。

オススメ度:☆☆☆


神の剣悪魔の剣―ファンタジー日本神話 (創元推理文庫 660-1) - リチャード A.ルポフ, 厚木 淳
神の剣悪魔の剣―ファンタジー日本神話 (創元推理文庫 660-1) - リチャード A.ルポフ, 厚木 淳

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