血と薔薇 コレクション1 ☆☆

(血と薔薇 コレクション1 / 澁澤 龍彦:責任編集 / 河出文庫 2005)

雑誌「血と薔薇」は、1968年に創刊された雑誌で、「エロティシズムと残酷の綜合研究誌」を標榜していました(当然、リアルタイムで目にとめたことはありません(^^;)。ご覧になればおわかりのように、昭和の錚々たる異端の作家・写真家・エッセイストが執筆しており、現代であればネットで大炎上すること必至(笑)の過激なテーマの記事・作品が集結していたようです。結局は戦後のカストリ雑誌と同じ運命をたどり、3号で潰れてしまったわけですが、河出文庫から3巻に分けて復刊されています。本書は、その第1巻。
※蛇足ながら「カストリ」とは「粕取り(糟取り)」で、元々は酒粕から作った粗悪な焼酎(粕取り焼酎)を指します。この焼酎は「3合飲めば酔い潰れてしまう」ため、「3号で潰れてしまう」ような雑誌のことを「カストリ雑誌」と呼んだわけです。
ただし、完全な復刊というわけではなく(巻末に掲載されているオリジナルの目次と比較してみればわかります)、版権の関係で収録できなかった作品がちらほらある他、連載された作品は3号分まとめて収録されています。
では、内容を簡単に紹介していきます。

「『血と薔薇』宣言」:いわゆる編集者からの「巻頭言」

<特集1 男の死>:神話などをモチーフにした「男の死」をテーマに、一流の写真家が個性的なモデルを使って撮影した作品。
 「サルダナパルスの死」(モデル:澁澤 龍彦 撮影:奈良原 一高)
 「オルフェの死」(モデル:中山 仁 撮影:細江 英公)
 「情死」(モデル:土方 巽・萩原 朔美 撮影:深瀬 昌久)
 「横死」(モデル:唐 十郎 撮影:深瀬 昌久)
 「決闘死」(モデル:三田 明 撮影:細江 英公)
 「ピエタ」(モデル:土方 巽 撮影:早崎 治)
 「キリストの昇天」(モデル:土方 巽 撮影:早崎 治)

「All Japanese are perverse」(三島 由紀夫):タイトルを日本語にすれば「日本人ってのは、みんなへんてこな連中だなぁ」とでもなるでしょうか。筆者がロンドン滞在中に親しくしていたアメリカ人作家の言だそうです。そこから説き起こして、日本人に内在する性や情欲について、論理的かつ無意味に(笑)詳細な分析を展開します。

「アフロディテ=ウラニア ―感想私録―」(稲垣 足穂):「女性の美」の中には必ず「美少年的要素」がある、という命題を、おなじみの「A感覚とV感覚」と関連させながら、様々な神話・伝説・小説・絵画を例に引いて論証します。

「ポール・デルヴォー」:ベルギーの画家ポール・デルヴォーは、憑かれたように裸女を描き続けていました。その作品のいくつかを掲載しています。

「一枚の魔女の図に」(埴谷 雄高):エンソールの作品に描かれた「魔女」の姿から、男性が投げ込まれる「極楽と地獄」を考察します。

「東洋のエロス1 特に中近東を中心に」(大場 正史):「千夜一夜物語」に収録されている数々のエピソードから、中近東やアラブ、イスラム教社会の性風俗や性生活を分析し、アラブ女性は決して抑圧されているわけではないという結論に至ります。

<特集2 吸血鬼>:「吸血鬼」をテーマにしたエッセイ(吸血鬼幻想)と絵画・写真作品を掲載。
「吸血鬼幻想」(種村 季弘):小説や映画に登場する吸血鬼から、それらの原型である中欧やアラブ、ギリシャなどの「生ける死者」、吸血行為の濃密なエロティシズムなどを分析・紹介する吸血鬼エッセイの古典。同じ河出文庫から、より充実した内容のものが同じタイトルで出ています。
「吸血鬼の城」(亀山 巌)
「吸血鬼A」(野中 ユリ)
「アルバム・吸血鬼」(堀内 誠一)

<特集4 オナニー機械>:「アダルトグッズ専門店」では売っていないようなものばかり(笑)。
「push the top」(堀内 正和)
「(無題)」(金子 国義)
「(無題)」(池田 満寿夫)
「吐息の相互交換機」(中西 夏之)
「レントゲン方式採用大発展オナニー機械」(鈴木 康司)
「神風恍惚切根之図」(横尾 忠則)
「独身者の機械 オナニー機械資料篇」(種村 季弘):紹介されている機械は全て、実用に供すことはできません(笑)。また、後半の<特集3>と対比されるように、恍惚と苦痛は紙一重なのです。

「悦楽園園丁辞典」(塚本 邦雄):「花」「獣」「笛」「銃」「臍」「星」「香」「謎」「色」「嚢」といったテーマに分けて、これらの世界構成する様々な要素から連想されるエロチックな妄想をマニアックかつ綿密に描き出しています。

「膣内楽」:語り手(自称シラノ)は、自分から分離したドッペルゲンガーのベツジュラックと共に、ロクサーヌと名付けた女性(実は少年時代のシラノの童貞を奪った相手)の膣の内部(!)に住むことになります。べらんめぇ調の老大工に家具を整えさせ、マダム・ボヴァリーを名乗る妖艶な家政婦を雇い入れ、奇妙な共同生活が始まります。

「アポリネールの猥褻小説―『一万一千の鞭』」(飯島 耕一):アポリネールの「一万一千の鞭」のあらすじを紹介したもの。当時はまだ邦訳されていませんでした。

「ムッシュー・ニコラ」(レチフ・ド・ラ・ブルトンヌ):作者ブルトンヌは、サド侯爵と並んで18世紀フランス文学界の「破廉恥三人組」に数えられる作家で、「ムッシュー・ニコラ」は、作者が関係した400人に及ぶ女性との情事を(当時のフランス社会の風俗と併せて)克明に描く自伝的小説(!)とのことです。収録されているのは、その長大な作品の冒頭部分で、7歳にも満たない主人公の性の目覚めが描かれています。

「沈黙といけにえ」(宗谷 真爾):宗教におけるエロティシズムと残酷性を、聖テレジアやカーリー女神を題材に分析しています。

「ダフネスとクロエ」(立木 義浩):写真家の立木義弘さんによる、男女のエロティシズムを切り取ったフォトエッセイ。掲載当時はカラーだったようですが、今回は残念ながら(笑)モノクロ。

「インド古詩 シュリンガーラ・ティラカ」:「シュリンガーラ」とは、ヒンズー語で「性愛情緒」を意味するそうです。そのタイトル通り、古代インドの性愛、愛欲を、あるときは生々しく、あるときは象徴的に描く詩が23連、翻訳した松山俊太郎さんの詳細な注釈付きで収められています。

「太初に足ありき」(長沢 節):足フェチ(ちなみに「脚フェチ」と「足フェチ」は似て非なるものです)の少年の回想記。

「処女である男たち」(小川 徹):現在のようにLGBTが市民権を得ていなかった時代、「男の体と女の心を持つ」人は、どのように生きればよかったのでしょうか。

<特集3 苦痛と快楽>:つまりは、サディズムとマゾヒズム? 澁澤さんにかかると、それだけでは済まないような・・・
「拷問について」(澁澤 龍彦):解説文よりも、豊富に掲載されている図版のほうがインパクトがあります。

「斜めになった狭い道を歩いていくと」(植草 甚一):海外小説を片っ端から読破した博覧強記のエッセイスト植草さんが、アメリカを中心としたホモセクシャル文学をマニアックに概説します。もちろんエイズの流行もBL小説の勃興も、まったく予想されていなかった時代のことです。

第2巻、第3巻も出ています。そのうち登場。

オススメ度:☆☆



血と薔薇コレクション 1 (河出文庫) - 澁澤 龍彦
血と薔薇コレクション 1 (河出文庫) - 澁澤 龍彦

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