世界をおれのポケットに ☆☆☆

(世界をおれのポケットに / ハドリー・チェイス / 創元推理文庫 1974)

チェイス中期の長篇です(原書の出版は1958年)。

フランク・モーガンをリーダーとする4人組のギャングは、それまで、実入りはそのれほど多くなくても、比較的安全な仕事(とはいっても酒場強盗やカジノの金庫破りですが)を堅実に(笑)こなしていました。モーガンは肝が座っている強面で、メンバーは誰も逆らえません。ナンバー・ツーのエド・ブレックは刑務所でモーガンと出会い、その腕に惹かれて仲間になっていますが、口で言うほど度胸や他に秀でた技術があるわけではありません。イタリア人のジュセッペ(ジポ)はお人好しで臆病な性格で荒仕事には向いていませんが、錠前破りの腕はピカ一で、一味になくてはならない存在です。いちばん若いキトスンはプロボクサー上がりで車の運転技術は一流です。
しかし、今回モーガンが持ち込んできた計画は、リスクもべらぼうに大きいものの、成功すれば100万ドルが手に入るというものでした。ロケット研究所の給料を運ぶ現金輸送車を襲うという計画に、一時期ですが研究所に勤めていて警戒の厳重さを知っているキトスンや、臆病なジポは反対しますが、モーガンが5人目のメンバーに加えたジニーという娘が持ち込んだ計画は、成功の可能性が高いものでした。ジニーの身元ははっきりせず、まだ二十歳そこそこでしたが、度胸はモーガンも舌を巻くほど座っており、彼女に冷ややかに見つめられたメンバーは、計画に賛成せざるを得なくなります。女好きのブレックと純情な(笑)キトスンは、ジニーにめろめろに(笑)なってしまいますが、モーガンは事が済むまでは恋愛沙汰(と、それにまつわるトラブル)は御法度だときつく言い渡します。
ロケット研究所の給料100万ドルは、ウェリング運送店が誇る装甲トラックが運んでいます。トラックは特別の合金で装甲され、決して買収されない運転手と屈強な護衛が乗り込んでおり、ドアは時限錠で施錠されています。異変が起きれば、運転手が非常ボタンを押すだけで錠はロックされ、開かなくなります。同時に窓には鋼鉄の扉が下り、無線で救難信号が間断なく送り出されます。道路上でトラックを襲って止めることができたとしても、乗員がスイッチを押して車内に閉じこもってしまえば、警察の救援が駆け付けるまで、襲った側は手をこまねいているしかありません。しかし、ジニーの計画は、その盲点をついたものでした。
国道から研究所へつながる森の中の隘路で、事故を起こしたと偽装したジニーが血まみれで道路に倒れていれば、トラックは停車せざるを得ず、おそらく護衛が様子を見に外へ出てくるでしょう。ジニーが護衛を、モーガンが運転手を拳銃で脅し(おそらく、脅すだけでは済まないでしょう)、トラックごと強奪します。トラック自体を、あらかじめ調達しておいた大型のキャンピングカーの内部に収めてしまい、キトスンが運転して、目立たないキャンプ場の一画に停めます。キトスンとジニーが新婚カップルとして振る舞っている間に、キャンピングカー内部ではジポが時間をかけて時限錠を解除し、100万ドルをせしめようというわけです。分け前は、ひとり20万ドル――そうなれば、一味は解散し、それぞれ好きなことができるはずでした。
資金調達と予行演習をかねて、深夜酒場の強盗を決行したモーガン一味ですが、結果わかったのは、ジニーの度胸と実行力が予想以上だったことと、ブレックが口だけのヘタレ(笑)だったことでした。それでも懲りないブレックは、ジニーを自信たっぷりに口説いて一蹴されても、あることないことをキトスンに吹聴して、ジニーを諦めさせようとします。
そういった不安要素もありましたが、計画は実行に移されます。ジニーの計画通り、装甲トラックを停車させることには成功したものの、ライフルで援護するはずだったブレックがしくじったせいで、護衛を射殺したもののモーガンは撃たれて重傷を負い、運転手も瀕死の重傷を負いながらスイッチを入れ、窓には鉄板が下り、時限錠はロックされてしまいます。それでもどうにかキャンピングカーにトラックを押し込み、予定していたキャンプ場に運び込んで作業を始めようとしますが、運転手が死に際に放った弾丸でモーガンが死亡し、一味は抑えの利くリーダーを失ってしまいます。
ブレックがリーダーの座を引き継いだものの、モーガンとの違いは明らかで、次第に一味はぎくしゃくしていきます。キトスンとジニーが新婚夫婦を装っているのが気に入らないブレックは、イライラをジポにぶつけ、厄介な時限錠に取り組むジポは次第に自信を失っていきます。一方、現金輸送車が奪われたことを知った軍と警察はしらみつぶしに捜索を進めますが、さすがにキャンピングカーの内部に隠されていることには気付きませんでした。ところが、同じキャンプ場に滞在していたブラッドフォード家の息子で10歳のフレッドは、探偵好きで可愛げのないガキですが(笑)、付近のキャンピングカーを片っ端から調べている際、内部でブレックとジポが口論しているのを聞いてしまいます。フレッドが周辺をうろつくのに不安を覚えたブレックは、人の来ない山中に移動して、ゆっくり作業できるようにしようとしますが、ジポが逃げ出してしまいます。
そして、フレッドの情報を耳にした軍とFBIの捜査網も、確実に迫っていました。

オススメ度:☆☆☆


世界をおれのポケットに (1965年) (創元推理文庫) - ハドリー・チェイス
世界をおれのポケットに (1965年) (創元推理文庫) - ハドリー・チェイス

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