その男 凶暴につき ☆☆☆☆

(その男 凶暴につき / ハドリー・チェイス / 創元推理文庫 1972)

この後しばらく、チェイス作品の庫入(違)が多くなりますが、某古書市で安く(1冊100~200円)まとめ買いしたからです。
本作は、フロリダの架空の地方都市パラダイス・シティを舞台にした『パラダイス・シティ警察署』シリーズのひとつで、半年前に読んだ「射撃の報酬5万ドル」と同じく、かなり後期の作品です(「射撃の~」にも、本作で活躍するパラダイス・シティ警察のレプスキ刑事が登場します)。

ロケット研究の第一人者ポール・フォレスターは、鋼鉄よりもはるかに軽くて丈夫な、ロケットの外装にぴったりの超合金(笑)の製法を発見しますが、他国に漏れて悪用されるのを恐れ、方程式を暗号で記録していました。ところが、尻軽の妻セアが信頼していた助手と密通している現場を見つけたポールは、助手を刺し殺した後、セアが逃げ込んだ浴室のドアを壊そうとしていたところを確保されます。その後、ポールは自分の殻に閉じこもったまま、誰の問いかけにも反応せず、サナトリウムで厳重な監視を受けています。
一方、国際的な政財界の黒幕ラドニッツは、ソ連や中国がポールの発明の秘密を入手したがっていることに目を付け、方程式を解読して引き渡すという条件で、ソ連の情報部から400万ドルを受け取る密約を取り付けることに成功します。しかし、研究所の職員を脅して方程式を手に入れたものの(当然、職員はその後、変死体となって発見されます)、方程式の暗号を解くには、ポール自身を誘拐し、正気に返らせなければなりません。ラドニッツの指令を受けた腹心の参謀リンゼーは、綿密な調査の末に水も漏らさぬ計画を立て、配下のふたりの殺し屋――金のためならどんなに非常で冷酷な行動もやってのけるシルクとキーガンを使って、実行に移します。
サナトリウムでポールを担当している看護人フレッドが、ゴーゴーガール(日本で言えばキャバクラ嬢)のドレナにぞっこんになっている情報を得たリンゼーは、ドレナに大金をちらつかせてフレッドを説得させ、シルクとキーガンがサナトリウムに忍び込む手引きをさせることに成功します。ポールがフレッドを椅子で殴り殺し、鍵を奪って逃走したように偽装したシルクとキーガンは、ポールを鉱山跡の洞窟に収容します。そこには、ポールを正気に戻すためにリンゼーが考えつく限りの手段が揃っていました。
ドイツ出身の一流の精神科医クンツは、ナチスドイツの戦犯という過去を握られ、リンゼーの言うなりになっています。また、ポールに精神的ショックを与える切り札として、ポールの助手を務めていた女性ノナを罠にかけて拉致し(宝飾品の万引き犯に仕立て上げて収監させ、釈放された際に刑事に化けた私立探偵が否応なしに連行しています。また、トラブルの元になりそうなノナの恋人、「パラダイス・ヘラルド」紙の記者アレックは袋叩きにして病院送りにするという念の入れよう)、サディストのキーガンに麻薬中毒にさせられて奴隷となっているシェイラの世話(兼見張り)を受けています。
一方、ポールが脱走したと通報を受けたパラダイス・シティ警察署では、署長テレルの命令一過、部長刑事ペイグラーを中心に刑事たちが捜査にかかります。すぐに、フレッドを殺した凶器が椅子ではないことが判明し、事件は単なる脱走ではなく、ポールが拉致されたのではないかという疑問が湧いてきました。さらに、捜査から外されて若い娘の溺死事件を割り当てられていじけていたレプスキ刑事が、死人のドレナ(もちろん、口封じのためにシルクに運河に突き落とされたのです)がフレッドの恋人だったことを突き止め、事件の複雑さが明らかになってきます。さらに、重傷を負って入院していたアレックから、行方不明になっている恋人ノナがポールの助手だったことが判明し、荷物をまとめて故郷へ帰ったとされるノナの失踪も偽装だと明らかになります。
ポールの上司でロケット研究グループの長ウォーレンもワシントンからパラダイス・シティに到着し、ベルベディア・ホテルのスイートルームを捜査本部として、テレル署長、CIAやFBIの捜査官らと共に作戦会議を開いていましたが、この部屋はリンゼーによって盗聴器が仕掛けられていました。会議を盗聴していたリンゼーは、完璧だったはずの自分の計画にほころびが現れ始めていることに不安になり(ラドニッツは部下の失敗を決して見逃してくれません)、ついにポールとノナの対面を実行に移します。リンゼーが睨んだ通り、ノナの顔を認めたポールは記憶を取り戻し、正常に戻ります。リンゼーはポールを脅迫して方程式の暗号を解くよう命じますが、ポールは首を縦に振りません。業を煮やしたリンゼーはノナを拷問にかけると脅しますが、ポールには切り札がありました。他国のスパイに秘密を漏らす羽目になることを予想し、青酸カリのカプセルを奥歯に仕込んでいたのです。手を出せばカプセルを噛み潰すと脅して逆襲に転じたポールは、ノナを連れて洞窟を抜け出すことに成功し、友人宅に潜伏します。
警察に出頭したノナから事情を知ったウォーレンは、ポールと連絡を取りますが、方程式を解く条件としてポールが出したのは、妻セアを連れて来いということでした。セアはポールが脱走した直後から、狂ったポールが命を狙ってくることを恐れて、警官の護衛を付けたまま閉じこもっています。ウォーレンはやむを得ず、セアを連れてこようとしますが、その頃セアの身には思いがけない運命が降りかかっていました。

オススメ度:☆☆☆☆


その男凶暴につき (創元推理文庫 133-20) - ハドリー・チェイス, 佐和 誠
その男凶暴につき (創元推理文庫 133-20) - ハドリー・チェイス, 佐和 誠

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