日本怪談集 ―幽霊篇― ☆☆☆

(日本怪談集 ―幽霊篇― / 今野 圓輔 / 現代教養文庫 1978)

著者の今野さんは、柳田國男さん、折口信夫さんらの流れを汲む民俗学者です。全国に伝わる幽霊譚や妖怪譚といった怪奇幻想譚を収集し、それらが説話や民間伝承として生き延び、長い歴史を有している理由を民俗学的に解明しようと試みた成果の一つが本作であり、前提となる「怪談 民俗学の立場から」や姉妹篇「日本怪談集 ―妖怪篇―」も現代教養文庫から出ています(いつか登場)。

古くは「今昔物語集」や江戸時代の「耳袋」や「甲子夜話」といった文献に始まり、明治以降昭和までを通じて、各地の実話怪談集、新聞や週刊誌、宗教雑誌などに掲載された様々な記事を渉猟し、自ら体験者に取材したものまで、幽霊に関する無数のエピソードを収集・分類整理して、そこに反映されている日本人の民俗・文化的背景を考察しています(引用元の文献は、すべて巻末の索引に記載されています)。ある意味では、「実話怪談集」のはしりとも言えるものですが、著者本人も断言しているように、読者を怖がらせる目的は一切ないそうです。けっこう不気味で怖いエピソードもあるのですが、それで読者が恐怖を感じたとしたら、著者にとっては「望外の喜び」とのこと。

全部で10章(+番外編)に分かれており、幽霊の出現パターンや背景などに基づいて分類されています。
「第一章 すがたなきマボロシ」:目に見えず、音や気配だけで、それと感じる幽霊について。
「第二章 人魂考」:いわゆる「ヒトダマ」や、様々な怪火を紹介。
「第三章 生霊の遊離」:死人の幽霊ではなく、生きている人の霊が肉体から分離して顕れる怪異さまざま。幽体離脱や離魂病など。
「第四章 たましいの別れ」:死の直前や瞬間、その霊は自分がもっとも会いたい人や行きたい場所に現れるものです。
「第五章 魂の寄集地」:現代風に言えば「心霊スポット」。
「第六章 浮かばれざる霊」:なんらかの理由で成仏できず、この世に縛り付けられた幽霊、「地縛霊」が代表でしょうか。
「第七章 死霊の働きかけ」:愛情から恨み憎しみまで、幽霊が出現するのには様々な理由があります。
「第八章 舟幽霊その他」:海や水難に関わる幽霊。
「第九章 タクシーに乗る幽霊」:江戸時代には駕籠、明治時代には人力車に乗ったそうです(笑)。アメリカならば「幻のヒッチハイカー」となるわけですが、ヒッチハイクという慣習が一般的でない日本では、タクシーが狙われるわけですね。
「第十章 親しき幽霊:近親者の周辺に現れる幽霊の中には、いいことをしてくれる霊もいます。
「幽霊外伝」:本書を書いた動機や、本編で扱いきれなかったテーマの拾遺など 

オススメ度:☆☆☆

【おまけ】本書に収録されそうな唯一の霊体験(らしきもの)は、今年の夏でした(第一章、第七章に関連するでしょうか)。手術後、ICUに入っていたとき、深夜にうつらうつらしていると、誰もいないのに左肩に手が置かれ、腕に沿って優しく撫で下ろされる、ということを、数晩続けて体験しました。まったく怖くなく、安らいだ気分になりましたので、「死んだばーちゃんが来てくれたんだ」と解釈しています。左側から延びていた酸素吸入用の太いチューブが、気体の流れで動いて肩に触れたんだ、という唯物論的な解釈もありますが(^^



日本怪談集〈幽霊篇〉 (1969年) (現代教養文庫)
日本怪談集〈幽霊篇〉 (1969年) (現代教養文庫)

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