悠久の銀河帝国 ☆☆☆

(悠久の銀河帝国 / アーサー・C・クラーク&グレゴリイ・ベンフォード / ハヤカワ文庫SF 2005)

クラークとベンフォードという新旧の宇宙SFの第一人者による合作――という触れ込みですが、厳密な意味での合作ではありません。
クラークのデビュー長篇(中篇?)である「銀河帝国の崩壊」(単独の邦訳――本書とは翻訳者が違います――は創元SF文庫から出ていますが、現在は絶版で入手困難)を第1部とし、ベンフォードがその後日譚を第2部として書き加えたのが本書です。もっとも、クラーク自身は、オリジナルの「銀河帝国の崩壊」の古めかしさを気にして、全面的にリニューアルした「都市と星」(ハヤカワ文庫SF)も発表していますので、事情はなかなか複雑ですが。

かつて銀河全体に版図を広げ、広大な帝国を構築していた人類ですが、謎の異星人の侵略を受け、故郷の地球に閉じこめられてしまいます。それから数億年にわたり、人類は地球上の各地に建設された都市に引きこもり、宇宙に目を向けることもなく、いつか異星人が攻撃しているのではないかと怯えてひっそりと暮らしてきました。やがて、ほとんどの都市は滅亡し、唯一、ダイアスパー市とその住人だけが、細々と生き延びています。しかし、ここ数千年で初めて誕生したアルヴィン少年だけは、他の人々がなくしてしまった冒険心や好奇心を持ち続け、いつかダイアスパーの外部へ出て、憧れの星空――宇宙を目指すことまで考えていました。町の外れで、古代文字で書かれた都市を出るためのヒントを発見したアルヴィンは、記録管理人のローデンのもとへ赴き、人類やダイアスパーのはるかな歴史を学ぶことになります(もちろん、目を通せるのは公開を許された情報だけですが)。
数年が経ち、ローデンの協力を得てダイアスパーの地下深くへ下ったアルヴィンは、各都市を結んでいた網の目のような輸送ルートを発見し、唯一稼働している輸送機械に乗り込んで、リスの町へ向かいます。リスの住人は、ダイアスパーの閉鎖的な住人と比べて精神的に成熟しており、テレパシー能力すら有していました。評議会の一員であるテレパスの女性セラニスから様々な新事実を聞かされますが、やがてリスに残るかダイアスパーへ戻るか(その場合はリスに関する記憶はすべて抹消されることになります)決めなければならないことになります。決断するまでには時間があるため、アルヴィンはセラニスの息子セオンと一緒に付近の探検に出かけます。太古に侵略してきた異星人と勇敢に戦ったという都市シャルミレインの廃墟に行きついた二人は、過去に地球を去った“グレート・ワンズ”の帰還を信じ続ける孤独な老人と、老人を補佐する3体の万能ロボットに出会います。ロボットの複製を手に入れたアルヴィンは、セラニスらリスの評議会を出し抜いて、記憶を保ったままダイアスパーへ帰還します。
シャルミレインの地下に眠る宇宙船の存在を知ったアルヴィンは、セオンと共に宇宙船に乗り込むと、“グレート・ワンズ”や侵略者の手掛かりを求めて、伝説の“七つの太陽”へ向かいます。そして、自らのアイデンティティを求め続けていた精神生命体ヴァナモンドに出会うのでした。そして、ヴァナモンドの記憶から、かつて人類が創造した純粋知性が“狂った頭脳”となって銀河帝国を崩壊へ導き、ついには“黒い太陽”(つまりはブラックホール)に閉じ込められたことが判明します。(ここまでがオリジナルの「銀河帝国の崩壊」のストーリー)

地球上の一画では、原始人のような人類(実際には記録保管所の遺伝子プールから復活させられた旧人類)が、飛行機械をあやつる別の人類に光線銃で焼き尽くされようとしていました。ただ一人生き残った若い女性クレイは、アライグマの遺伝子を継ぐ高等生物シーカーに救われ、ダイアスパーから救助に来た男性アルヴィンと出会います。謎の侵略者(実は“狂った頭脳”が送り込んだプロジェクションでした)は、人類文明が遺伝子コードを保管している資料庫を攻撃し、大半の遺伝子コードを破壊してしまっていました。クレイは、ある意味では最後の旧人類とも言える貴重な存在になっていたのです。
生き延びるために――そして、どこかで生き残っているかもしれない同胞を探すために、シーカーと一緒にアルヴィンのもとを脱出したクレイは、果てしない旅を続けることになります。最初は荒れ果てた地上を、次には大気圏を突き抜けて延びる巨大な風車に乗って宇宙空間へと移り、さらには宇宙区間を旅する巨大生物レビヤタンの体内に潜入して太陽系内をさまよいます。しかし、クレイを追う“狂った頭脳”の魔手は、宇宙空間にも伸びてきていました。ジュピター系でアルヴィンと再会したクレイは、シーカーを交えて、“狂った頭脳”と敵対する生命形態との対決に立ち会うこととなります。

ベンフォードの第2部は、ニーヴンの「インテグラル・ツリー」や「スモーク・リング」を彷彿させるユニークな生命形態と生息環境がきめ細かに構築されている一方、彼の代表作である機械生命と有機生命の対決を描く『銀河の中心』シリーズに匹敵する強大な敵との壮大な戦いが描かれています。

オススメ度:☆☆☆


悠久の銀河帝国
悠久の銀河帝国

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