地軸変更計画 ☆☆

(地軸変更計画 / ジュール・ヴェルヌ / 創元SF文庫 2005)

ヴェルヌ後期のSF。「月世界旅行」「月世界へ行く」で活躍した"大砲クラブ"の一部メンバーが主役を務めますが、正直ハズレとしか言えない出来です。

19世紀末(書かれた時から見れば近未来)のある日、アメリカ政府から世界各国の新聞社宛に、驚くべき内容の通達文が届けられます。いまだ人類が足を踏み入れたことがない北緯84度以北の北極圏(ピアリーが実際に北極点に到達するのは1909年)の土地の所有権を競売にかけるというのです。バルティモアに本部を置く「北極実用化協会」なる団体が競売を取り仕切ることになり、最高値を入札して落札した国が、氷に閉ざされた北極の土地を入手できるのですが、そんな不毛の土地を手に入れて、どんなメリットがあるというのでしょうか。
当然、各国政府は上記のような疑問を抱きますが、もともと北極に近い領土を持っているロシアや北欧各国、世界中を植民地支配しているオランダやイギリスは、代表をバルティモアへ送り込んできます。各国代表とも、一方では馬鹿馬鹿しいと思いながらも、アメリカが伊達や酔狂でこんな馬鹿げたイベントを実施するわけがなく、なにか裏があるに違いないと考えていました。彼らは駆け引きを繰り返し、アメリカの関係者に探りを入れようとしますが、成果は得られません。結局、競売では大方の予想通り、アメリカが落札することとなります。
実は、前半では、北極圏を手に入れたアメリカにどんなメリットがあるのか、アメリカは北極圏をどうしようとしているのか、という点が物語の興味の焦点になるはずなのですが、邦訳版ではタイトルで盛大にネタバラシがされてしまっています(^^; この計画の裏で糸を引いていたのは、かつて巨大な大砲から発射された砲弾に乗って月世界旅行をやってのけた"大砲クラブ"の幹部たちで、北極実用化協会を運営していたのは、"大砲クラブ"の会長が経営するバービケイン社でした。彼らは、クラブの書記を務める孤高の数学者、J・T・マストンの緻密な計算に基づき、「月世界旅行」をはるかにしのぐ超巨大な大砲を特殊な角度で発射することにより、地球の地軸を狂わせ(つまり人工的にポール・シフトを引き起こそうというわけですね――どこかのカルト団体が考えそうなアイディアです)、北極圏を温帯地方にしてしまおうと目論んでいたのです。マストンは、計画への最大の資金提供者である資産家の未亡人エヴァンジェリーナの(ある意味、ありがた迷惑な)応援を受けつつ、計算を完成させ、大砲を設置すべき場所を正確に指定します。ところが、フランス人技師で数学者のアルシッドが独自の計算を行って、地軸変更計画を暴いてしまいます。当然、地軸を狂わされたら環境が激変して、世界中の住民が災難に遭うわけですから、当事者のはずのアメリカ政府すら事態を重く見て、計画を中止させようとします。マストンは逮捕され、収監されて執拗な尋問を受けますが、大砲の設置場所を白状しようとしません。この時点で、すでにバービケインをはじめとする実行メンバーは行方をくらませていました。やがて、東アフリカのサバンナの奥地(現在のケニアかタンザニア)で、大規模な土木工事が行われているという情報がもたらされます。
最終的には、「大砲鳴動鼠一匹」といった竜頭蛇尾な結果に終わるわけですが――。

オススメ度:☆☆


地軸変更計画 (創元SF文庫)
地軸変更計画 (創元SF文庫)

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この記事へのコメント

2019年09月28日 23:21
子どもの頃に、ジュブナイル版を読んだ記憶があります。確かマストン博士が計算中にトラブルが起こっ結果0が3つ余計についた数値をさらに3乗したので・・・といった落ちでしたよね。
X^2
2019年09月29日 18:27
昨晩のコメントが途中で切れていました。

確かマストン博士が計算中にトラブルが起こった結果、0が3つ余計についた数値をさらに3乗したので・・・といった落ちでしたよね。ここまで大幅に数値が違うのを気づかないのは、さすがに迂闊すぎるだろうと思いますが、現実にもこのレベルの計算間違いをして堂々としている人もいるので何とも言えないかな。

> 正直ハズレとしか言えない出来です。

これは落ちに無理がありすぎるという点でしょうか、それともそれ以外の部分も今一つに感じましたか?
○に
2019年09月30日 21:12
コメント、ありがとうございます(^^

オチに関しては、特に気になるようなものではないのですが、もし成功した場合、世界のかなりの部分が破滅するかもしれないというのに、そんなことは一切気にせず、「大砲クラブ」の面々が嬉々として計画を進めるあたりが、いかにもアメリカ(というか現職の某大統領)的で、拒否反応を起こしてしまったと言いますか、結局は登場人物の誰にも感情移入できないという点が大きかったと思います。
どうせなら、火星に向かって大砲でもぶっ放すことにすれば、誰にも迷惑がかからなかったのに・・・(^^;