血と薔薇の誘う夜に ☆☆☆

(血と薔薇の誘う夜に / 東 雅夫:編 / 角川ホラー文庫 2005)

日本人作家による『吸血鬼』をテーマとした小説やエッセイを集めたアンソロジー。テーマ別アンソロジーではありますが、『異形コレクション』のような書下ろしではなく、すべて過去に発表されたものです。全部で16作品が収録されていますが、他の短篇集などで読んだことのある作品も5篇ありました。

「仲間」(三島 由紀夫):父とふたりでロンドンの街を徘徊する少年。古い家で暮らす謎の紳士と知り合った父子は、紳士の留守中、そこで暮らすことになりますが――。

「契」(須永 朝彦):バルカン半島から帰国した青年は、その後毎年、新聞広告でチェンバロが弾ける美青年を募集します。青年が主宰する小グループは、毎年ひとりずつ増えていきます。

「影の狩人」(中井 英夫):青年は、夜の様々な事物を愛し、それを話題にする“彼”の訪れを、夜ごと待ち続けていました。『とらんぷ譚』の1冊、「真珠母の匣」に収録されており、高校時代に読んでいました。

「ヴァンピールの会」(倉橋 由美子):「倉橋由美子の怪奇掌編」の冒頭を飾る1篇。高級フレンチ・レストランで月に一度、開かれる「ヴァンピールの会」では、常に変わったワインが賞味されていました。

「吸血鬼入門」(種村 季弘):吸血鬼をテーマとしたエッセイ「吸血鬼幻想」や、吸血鬼小説アンソロジー「ドラキュラ ドラキュラ」を編纂し、このテーマには欠かすことのできない種村さんの小説ふうエッセイ(エッセイふう小説?)。「吸血鬼幻想」の出版にまつわる思い出を語りながら、自ら"吸血鬼の幻想"に巻き込まれていきます。

「かわいい生贄」(夢枕 獏):ロリコンの変態中年男(吸血鬼?)が、自分が餌食にした幼女たちから逆襲をくらいます。メルヘン調の語り口がアンバランスで実に不気味(^^;

「干し若」(梶尾 真治):短篇集「泣き婆伝説」の巻頭に収録されています。産廃業者の伊策は、古タイヤを投棄に行く途中、立ち寄った食堂で、吸血鬼がらみの奇怪な事件に巻き込まれます(詳細は「泣き婆伝説」の記事をご覧ください)。

「週に一度のお食事を」(新井 素子):吸血鬼になるのはダイエットに有効なようですが、それをいいことに全国民が吸血鬼になってしまうと、新たな食糧問題が発生します。

「白い国から」(菊地 秀行):ある冬の日、北国の学校へ転校してきた少女は、まるで吸血鬼のようでした。いえ、まるで吸血鬼のよう――ではなく、まぎれもない・・・。

「吸血鬼の静かな眠り」(赤川 次郎):敏子と和郎が両親と共に休みを過ごすことにした別荘は、オーナーの外国人が行方不明になっているという"訳あり物件"でした。家の中を探検していたふたりは、地下室で豪華な西洋風の棺桶を発見します。やがて、一家に異変が――。

「吸血鬼」(江戸川 乱歩):乱歩は「吸血鬼」という長篇小説も書いていますが、こちらは戦前に書かれた吸血鬼(スラブや東欧の生ける死者たちや「早すぎる埋葬」に関する内容です)に関するエッセイ。「江戸川乱歩随筆選」(ちくま文庫)にも収録されています。

「吸血鬼」(柴田 錬三郎):精神病理学者の加田は、学生時代の友人、野呂俊作の義姉・みち子から、俊作が狂ってしまったという手紙を受け取り、野呂家に駆けつけます。俊策は、みち子の妹るみと結婚したのですが、病死したるみを生きていると信じ、墓を暴いて遺体を離れに収め、誰にも近づけさせないといいます。俊作を正気に戻すべく、加田はみち子の協力で一芝居打つことにしますが――。

「吸血鬼」(中河 与一):父が後妻をめとって以降、ひとり娘の語り手は若さを失い、代わりに後妻が生き生きと若返っていきます。

「吸血鬼」(城 昌幸):エジプト旅行中、画家の中西と同行していた友人の佐分利は、奇妙な状況下で行方不明になってしまいます。血を吸うという噂の現地人の集落へ出入りした結果でした。ところが数年後、中西は銀座の街で思いがけず佐分利と再会します。「城昌幸宗」(ちくま文庫)にも収録されています。

「血を吸う怪」(松居 松葉):英国の作家ヘロンの吸血鬼小説を翻案したもの。原作の邦訳は「ベールブラウ荘奇談」というタイトルで、アンソロジー「ドラキュラのライヴァルたち」(ハヤカワ文庫NV)に収録されています(昔、読んだはずで、タイトルは記憶にありましたが、ストーリーはまったく忘れていました(^^;)。

「日本にも吸血鬼はいた」(百目鬼 恭三郎):「奇談の時代」で知られるエッセイストが、「吸血鬼」という概念が西洋から輸入される以前に日本(インドや中国を含め)で成立していた吸血鬼にまつわるエピソードを、「今昔物語集」や「御伽草子」を題材に紹介しています。

オススメ度:☆☆☆


血と薔薇の誘う夜に―吸血鬼ホラー傑作選 (角川ホラー文庫)
血と薔薇の誘う夜に―吸血鬼ホラー傑作選 (角川ホラー文庫)

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