ギャラクシー 上 ☆☆☆☆

(ギャラクシー 上 / フレデリック・ポール、マーティン・グリーンバーグ、ジョセフ・オランダ―:編 / 創元推理文庫 1987)

『ギャラクシー』は、1950年に創刊されたアメリカのSF雑誌ですが、ジョン・キャンベルの『アスタウンディング』などの先行するパルプマガジンと異なり、最初からハイクラスの雑誌として生まれました。そして、初代編集者ホーレス・ゴールドは独自の編集方針のもと、従来のSFにはあまり見られなかった視点――SF的ガジェットや発想が、現実の社会や人類文明にどのような影響を与えるのか、そのテーマに関して徹底的な思考実験を作家たちに要求したのです。それがどれほど画期的なブレークスルーだったか、それらの経緯やゴールドの人となりについては、本書の冒頭に掲載されたフレデリック・ポール(言わずと知れたSF作家であり、ゴールドに続く2代目の編集長でもあります)やゴールド自身の序文、作家として以外に編集補佐兼レビュアーとして活躍したアルジス・バドリスの覚書などを読めば、よく理解できます。
本書は、1980年に『ギャラクシー』の創刊30周年を記念して(同じ年に、『ギャラクシー』は歴史に幕を下ろすのですが)出版された『ギャラクシー』に掲載された短篇作品の「ベスト・オブ・ザ・ベスト」を精選した作品集です。邦訳版は上下巻に分かれており、今回は上巻のみの紹介となります(下巻も入手済みなのですが、事情により登場は当分先になります(^^;)。
上巻には、13作品が収録されています(名前も知らなかった初読みの作家が5人もいました)。また、各作品の冒頭に、その作品や『ギャラクシー』との関わりなどについて、作者自身のコメントが記されているのも(その時点での物故者を除く)興味深いところです。

「性的魅力」(フリッツ・ライバー):商用でイギリスからアメリカへやって来た語り手は、人前ではマスクをして顔を隠しているアメリカ人女性の風俗(つまり、顔をさらすのは裸体をさらすのと一緒の、恥ずかしいことと考えられています)に驚き、違和感を覚えます。語り手は、暴力を受けかけていた若い娘から誘われますが――。

「人類供応のしおり」(デーモン・ナイト):人類が初めて接触した異星人、カナーマ人は、豚と人間を合わせたような外見でしたが、友好的な意図をもって到来したことは、嘘発見器によるインタビューの結果からも明らかでした。しかし、外交官としてカナーマ人と接していたグレゴリは、彼らが保有していた書物を解読し、驚くべき事実を知ります。

「幸福の代償」(ロバート・シェクリー):完全な管理社会で、何一つ苦労することなく暮らしている語り手は、規則正しく工場で働く自分の生き方がいかに幸福かを息子に伝えようとしますが――。

「審査の基準」(ウィリアム・モリスン):地球人にない鋭敏な味覚を持つ異生物ロニーは、その能力を買われ、絶対的に公平な判断基準の持ち主として、ケーキのコンテストの審査員となります。しかし、ロニーが有している鋭敏な感覚は、味覚だけではありませんでした。

「火星を回る穴・穴・穴」(ジェローム・ビクスビイ):初めて火星の大地に足を下した第1回の火星探検隊のメンバーは、地面に近い岩山や植物などに、くっきりした円形の穴が穿たれていることを発見します。付近を調査したところ、穴は一直線上に並んでおり。しかもごく最近できたことを示す痕跡がありました。火星の原住民も、穴のことは意識しているようでしたが、穴をもたらしたものの正体は?

「ホラーハウス」(マーガレット・セント・クレア):究極のホラーハウスを作ろうとしているフリーマンのもとに、テーマパークの経営者ディクソンがデモンストレーションを見にやってきます。フリーマンが止めるのも聞かず、最もショッキングなアトラクションを実体験したディクソンを待っていた運命は――。

「人間スープ」(アラン・アーキン):ボニーとボブの姉弟は、両親が出かけている間に自宅の台所で様々なものを組合せ、「動物元素」を創り出そうとしていました。

「光るもの」(ゼナ・ヘンダースン):貧しい家庭で暮らす11歳の少女アナは、近所の裕福なクレビティ夫人に頼まれ、ご主人が留守にしている間、夜は夫人の家に泊まることになります。夜な夜な、夫人はベッドの下を詳しく調べますが、アナが見ても、特に変わったものは見つかりません。ところが、ある晩、ベッドの下の奥の方がほのかに光っているのを目にします。光の中に見えたものとは――。作者の短篇集「悪魔はぼくのペット」には「ベッドの下の世界」というタイトルで収録されています。

「星の海に魂の帆をかけた女」(コードウェイナー・スミス):『人類補完機構』シリーズの一篇で、「鼠と竜のゲーム」にも収録されています。過激な女性解放論者の娘として私生児として生を受けた天才ヘレン・アメリカは、光の圧力を受けて宇宙空間を飛翔する宇宙帆船のパイロットとして初めて生還したグレイ=ノー=モアと面談し、女性初のパイロットを目指そうとします。

「深層のドラゴン」(ジュディス・メリル):表紙イラストが先に描かれていて、それに合わせてストーリーを創るよう要求された作品だそうです。ルースとチャールスは、それぞれ火星の砂漠で恐竜(?)に襲われる、リアルな幻影(現代で言えば、ヴァーチャル・リアリティでしょうか)を見せられ、互いに助かる(助ける)ために適切な行動を取らなければなりません。作者メリルは、SF作家としてよりも、「年刊SF傑作選」などの編集者として著名ですね。

「クリスタルの壁、夜の目」(アルジス・バドリス):人々の深層心理に直に訴えるビデオ技術を利用したテレビ放送会社の社長サラナーは、ライバルのバーを取り除くべく、バーのオフィスを襲って銃撃します。弾は急所に当たったはずなのにバーは即死せず、サラナーはバーが大切に持っていたボール状の装置を奪取することはできませんでした。その後、サラナーは周辺に出没するバーに悩まされ、メディアを統括する特殊広報活動局のアーミンに相談しますが――。

「シカゴのあった場所」(ジム・ハーモン):国際紛争を解決する手段として、戦争の代わりに仮想的な「戦争ゲーム」が行われるようになった近未来。世界中の人類は、大脳皮質に働きかける電波によって殺人ができない精神状態にされています。しかし、ゲームのターゲットとなって“消滅”した都市は20年間、外界から隔絶され、そこの住人は飢餓にさいなまれることとなります。“戦死者”として忌避される存在となっているダニエルズには、人類が陥っている慢性的な飢餓状態を解決するアイディアがありましたが、それを実行するには、外界との接触を断っているシカゴの研究所へ入り込まなければなりませんでした。

「大いなるネブラスカ海」(アラン・ダンジグ):小松左京さんは綿密な科学的シミュレーションのもと日本列島を沈没させましたが、作者ダンジグも、大胆な地質学的シミュレーションに基づいて北米大陸の半分を沈没させました。

オススメ度:☆☆☆☆


ギャラクシー〈上〉 (創元推理文庫)
ギャラクシー〈上〉 (創元推理文庫)

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