蜃気楼の戦士 ☆☆☆☆

(蜃気楼の戦士 / A・メリット / ハヤカワ文庫SF 1970)

メリット作品を読むのは、学生時代に「黄金郷の蛇母神」、「イシュタルの船」以来、数十年(笑)ぶりです。
読んだのはハヤカワ文庫の初版で、末尾の作品紹介リストを見ると、もともとは「蜃気楼に住む人」(原題の直訳)というタイトルで出る予定だったらしいことがわかります。

ヴァイキングの血を引くアメリカ人冒険家リーフ・ラングドンは、かつて学術探検隊の一員としてモンゴルへ赴いた際、古代文明人の末裔と言われるウイグル人に導かれ、クラーケンのような(というより、クトゥルーのような、と言うほうがイメージに合っていると思います)異次元の邪神カルク・ルに生贄を捧げる儀式に立ち会います。そして、ウイグル人の老僧から、自分は古代ウイグルの英雄ドワヤヌの生まれ変わり(?)だと告げられ、カルク・ルの姿を刻んだ指輪を託されます。いったんは文明の地に戻ったリーフですが、「カルク・ルに呼ばれたならば、そこへ行かなければならない」という老僧の言葉が耳から離れませんでした。
3年後、戦友で義兄弟でもあるチェロキー・インディアンのジムとアラスカで金鉱探しをしていたリーフは、北方から響いてくる太鼓の音を耳にします。それは、ウイグルの砂漠で彼を秘境へ導いた音と同じでした。祖先の霊の声を聞いたジムは、北へ向かうのは不吉で過酷な運命に出会うことになると告げますが、太鼓の音を追うと決意したリーフに同行することを申し出ます。
険しい山岳地帯に至った二人は、氷に覆われた細く深い谷を見つけ、谷底へ下りていきます。湖の蜃気楼を越え、深い霧を抜けた果てに待っていたのは、アラスカとは全く異なる気候を持つ、温かく湿った深い森林地帯でした。そこで二人は吸血植物に襲われていた小人族の男女を救い、彼らの集落へ向かう途中、狼や鷹を操る女戦士のグループに遭遇します。美しいリーダーに声をかけられたリーフは、なぜか相手が魔女だとわかり、相手と同じ未知の言語で相手の誘いをはねつけます。その際、彼は自分をドワヤヌと呼んでいました。
小人族(ルルルヤ族という名前でした)の集落で、リーフはエヴァリーという美しい娘(小人族ではなく、リーフと同じような人間です)と出会います。エヴァリーの話によれば、この神秘の谷間は“陰影の国”と呼ばれ、ナンブという川を隔ててルルルヤ族とアイジア族(リーフが途中で出会った種族で、どうやら古代に新大陸へ渡ったウイグル人の子孫のようです)が住んでおり、互いに不可侵条約を結んでいました。ナンブの川にはナンサアという橋が架けられており、両岸を結ぶ唯一の手段でした。川にはルルルヤ族が巨大なヒルの群れを放しており、川を泳いで渡ろうとすることは自殺行為だったのです。アイジア族の都カラクを支配しているのは、リーフが遭遇した魔女ラーと軍司令官チブール、そしてカルク・ルを祀る高僧ヨデインでした。また、この両種族以外に、陰影の国にはカラクを逃げ出した人々が築いた町サークも存在しています。サークの町は難攻不落の崖の上に築かれており、強大なカラク軍の侵攻を何度もはねつけていました。
やがて、ルルルヤ族の長老の命により、リーフはナンサアの橋へ向かうことになります。対岸で待つラーやチブールと対峙したリーフの内部で、突然ドワヤヌの意識が優勢となり、エヴァリーが止めるのも聞かず、チブールの挑発に乗ってナンブの川を泳ぎ渡り、カラク軍の捕虜となってしまいます。ラーもチブールも、リーフのことをサークが送り込んだスパイだと考えていましたが、リーフがカルク・ルの指環を掲げてカラク市民たちを従わせてしまったのを見て、認識を改めます。今やリーフはドワヤヌとなり、リーフが愛していたエヴァリーのことも記憶から流れ去っていました。ドワヤヌはカラクの軍司令官として、チブールを副官とし、ラーを愛人として(実際にはラーもチブールも腹に一物あってドワヤヌに従っているわけですが)、ヨデインの求めに応じてカルク・ルを召喚する儀式に臨みます。
その後、サークを偵察したドワヤヌは、難攻不落と言われるサークの弱点を見つけ、綿密に作戦を練ってサーク侵攻に着手します。ラーもチブールも信用していなかったドワヤヌは、信頼できる女戦士たちを親衛隊とし、作戦を実行しますが、サーク守備隊の中に義兄弟であるジムの顔を見つけることになります。多大な犠牲を出しながらサークを落としたドワヤヌは(サークで起きた悲劇のため、リーフの精神が目覚めて優勢となっています)、カラクの指導者として続いてルルルヤ族の平定に向かい、和平交渉の中でエヴァリーと再会します。しかし、それは新たな悲劇の始まりでした……。

オススメ度:☆☆☆☆




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