鬼面村の殺人 ☆☆☆

(鬼面村の殺人 / 折原 一 / 光文社文庫 2003)

「七つの棺」で、迷探偵ぶりを遺憾なく発揮した黒星警部の長篇初登場作。発表時のタイトル「鬼が来たりてホラを吹く」(当然、某横溝作品のタイトルのパロディ)からも、探偵役のキャラクターからも想像がつくように、ジャンルはいわゆる“バカミス”ですが、大がかりなトリックも取り入れられており、本格謎解きミステリの骨格も有しています。

休暇を取って飛騨高山の叔母を見舞った帰り、黒星警部は白川郷で開かれている“どぶろく祭”で只酒にありつこうと、バスで現地に向かっていました。ところが、たまたまバスで隣り合わせたムチムチボディの若手編集者、葉山虹子と関わり合ったために、白河郷のさらに奥地にある過疎の村、鬼面村(一堂零クンがリーダーのグループが村を仕切っているわけではありません(^^; “おにつら”村と読みますが、丹那刑事の上司の故郷でもありません――ちなみに、本書の解説を鮎川哲也さんにオファーしたのは、編集部の洒落っ気というか好プレーですね(^^;)へ赴く羽目になります。そこで待っていたのは、横溝ミステリもかくやという怪奇な事件でした。
鬼面村では、村興しのために国際芸術週間なる催しが開かれており、村を挙げての推理劇を上演することになっていました。そこで村長は、旅行雑誌の編集部にミステリ作家をひとり取材のために派遣してほしいと依頼したのですが、編集部では作家を用意できず、フリーライターの葉山虹子が新進ミステリ作家に化けてやってきたというわけです。ところが、虹子は白川郷でどぶろくを飲み過ぎてへろへろになり、黒星警部は虹子が置き忘れた封筒を拾ったのが運の尽き、寝込んでしまった虹子をエスコートして、鬼面村にたどり着きます。そうすると、迎えに現れた鬼面村観光課の美青年・内ケ島は、黒星警部をミステリ作家の葉山だと思い込み、行き掛かり上、黒星警部は虹子を姪だということにします。村に着いた途端、鎌を握ったもんぺに手ぬぐい姿の不気味な女が現れ、脅し文句を残して姿を消しますが、おミネという名前を聞いた内ケ島は青ざめます。
黒星は村長の重森太郎をはじめ、村の主だった面との歓迎会に臨みます。村長の弟の重森二郎は名古屋方面で成功した実業家ですが、久しぶりに村興しの計画を持って村に舞い戻ってきています。国際芸術週間も二郎の発案のようで、デーモン閣下のような白塗りで素顔を隠した大物(?)マジシャン、聖鬼魔王も、イベントとして家をまるごと消失させてみせると宣言します。また、内ケ島が村はずれでミネ子を名乗る女に出会ったことを聞かされた二郎の顔も、青ざめます。実はミネ子は内ケ島の姉で、二郎に手籠めにされたことを苦にして谷に身を投げ、死んだと思われていました(ただし、遺体は見つかっていません)。
黒星は、酔いつぶれている虹子とともに(村長の妻・花代は、虹子は黒星の愛人だと決め込んで、ふたりに一つ部屋をあてがいます)合掌造りの家の2階に泊まります。夜中に目を覚ました虹子は、向かい側にある合掌造りの家の2階で、二人の人物(ひとりは聖鬼魔王のようでした)が争っているのを目撃しますが、例によって寝ぼけた黒星警部ともつれ合い、気を失ってしまいます。そして目が覚めると、目の前にあった合掌造りの建物が消え去っていました。黒星は、自信たっぷりにクイーンの「神の灯」のトリックが使われていると主張して、村中を調べて回りますが、トリックに仕えるような配置の建物は見つかりません。おまけに虹子から「既存のトリックをパクるようでは、ミステリの存在価値はない」とツッコまれる始末(笑)。
さらに、聖鬼魔王の死体が現れたり消えたり、幽霊か生身かわからないミネ子が出没したり、奇妙な出来事が続くうちに、とうとう重森二郎が内側から鍵がかかった室内で、ミネ子の着物を着た人形と一緒に死んでいるのが発見されます。さらに、(当然ながら(^^;)崖崩れで道が通れなくなったため、外部から警察の応援はなく、黒星警部は身分を隠したまま孤軍奮闘(しなきゃいいのに)せざるを得なくなるのでした。そして、得意げに披露した黒星推理は、脱力系の意外な真相を前ににすべてを否定され、警部は虹子と共にすごすごと村を去ることになるのですが――。

オススメ度:☆☆☆




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