帝王の陰謀(上・下) ☆☆☆☆☆

(帝王の陰謀 上・下 / ロビン・ホブ / 創元推理文庫 2005)

異世界ファンタジー『ファーシーアの一族』三部作の第2部です。第1部「騎士の息子」の倍のボリュームがある質・量ともに重厚な一篇です。世界観や背景については、「騎士の息子」の記事をご覧ください。
物語は、第1部の直後から始まります。

六公国の王座の簒奪を狙った第3王子リーガルの計画を阻止したフィッツ(亡き第一王子シヴァルリの庶子)ですが、リーガル一味による暴行と毒薬のせいで極度に衰弱し、第2王子(現在は王位継承者=“継ぎの王”)ヴェリティの妃に決まった山の王国の王女ケトリッケンらとともにバックキープへ戻る気力すら失っていました。しかし、ある晩、ファーシーア一族の血がもたらす“技”(つまりはテレパシー)によってシュルード王の精神と同化したフィッツは、港町シルトベイが“赤い船団”に襲撃されていることを知ります。そして、シルトベイの惨劇の中、自分のもとを去っていった恋人モリーが海賊に襲われている姿を垣間見たフィッツは、バックキープに戻る決心をするのでした。
厩舎頭ブリッチとともにバックキープへ戻ったフィッツは、モリーがシヴァルリの未亡人ペイシェンスの小間使いとして無事なのを知って喜びますが、フィッツの出自を初めて知ったモリーは騙されたと言ってフィッツをなじり、冷たい態度を崩しません。状況を誤解したペイシェンスからもモリーに近づくことを禁止され、フィッツはすべて自分の間違った思い込みとかつての優柔不断な態度が原因だったと悟ります。
うつろな心のままバックキープの町をさまよっていたフィッツは、動物商の店でやせ衰えた狼の子供を見つけ、つい買い取ってしまいます。後にナイトアイズと名付けられる仔狼は、フィッツと意思を通じさせ、フィッツはあれほどブリッチから止められていた動物との絆を再び結んでしまいます。しかし、この絆のおかげで、フィッツは何度も命を救われることになります。
一方、ヴェリティと結婚し“継ぎの王妃”となったケトリッケンは、生まれ育った山の王国との文化や習慣の違いに戸惑っていました。故郷では王家の一員として、民のために犠牲となる覚悟で行動していたのに対し、このバックでは王妃は“お飾り”であり、その活動は上流階級の社交に限られています。おまけに新婚の夫ヴェリティは“赤い船団”の脅威を見張るため、四六時中“塔”の小部屋に詰めて“技”を駆使しており、夫婦らしい触れ合いすらほとんどない状態でした。ケトリッケンの悩みを知ったフィッツは、たびたび王妃のもとを訪れ、アドバイスを与えるようになります。また、気持ちを抑えきれず、禁を破ってモリーの部屋を訪れたフィッツは、初めて素直に想いを告げ、モリーもそれに応えてくれるのでした。
シュルード王やヴェリティから、先の陰謀は「なかったこと」にされているリーガルは、相変わらず取り巻きの貴族たちと軽薄に過ごしていますが、彼の計画をつぶしたフィッツに対しては思うところがあるようでした。それを察知したフィッツは、できる限りリーガルとの間に距離を置こうとしますが、リーガルがモリーに対して接近しているのを知り、心穏やかではありません(暗殺者として自分が果たした役割をモリーに知らせるわけにもいかないため、リーガルの真意をモリーに納得させることもできません)。また、死んだガレンの後継者である“技”を操る“連”の女性リーダー、セリーンや連のメンバーも、フィッツへの敵意を隠しませんでした。
リーガルの陰謀は、徐々にですが確実に王室を蝕んでいました。老いたシュルード王の話し相手だったレディ・タイムは毒を盛られて亡くなり(実際にはレディ・タイムという架空の存在が消滅しただけですが)、新たに王の薬師となったウォーレスは、王の心身を弱らせるような処置を施して、道化を心配させます。さらに、リーガルに誘われて遠乗りに出かけたケトリッケンが置き去りにされ、熔化された者(“赤い船団”に拉致され、魂を抜かれてゾンビのようになった人々)に襲われます。たまたま現場に遭遇したフィッツ(とナイトアイズ)が加勢しますが、王妃自身も剣を振るって自らの身を守ります。この事件で自分のなすべきことを見出したケトリッケンは、兵士たちを率いて熔化された者たちに平安を取り戻させるべく出撃し、臣民の大きな支持を得るのでした。しかし、フィッツの師で暗殺者のシェイドは、これによってリーガルがケトリッケンを狙う可能性が高まったことを指摘し、警戒を促します。
一方、モリーとの仲を正式なものとしたいフィッツは、モリーとの結婚をシュルード王に許してもらおうとしますが、逆に王からベアルンズのブローンディ大公の娘セレリティとの婚約を打診されてしまいます。フィッツは進退窮まりました。
ヴェリティは“赤い船団”に対抗するために本格的な軍船団を組織することに決め、一冬をかけて船団を編成します。連絡用として連のメンバーが各船に乗り込みますが、ヴェリティと“技”で通じ合えるフィッツは秘密の連絡係として旗艦ルリスク号に乗り組みます。“赤い船団”との戦闘のさなか、フィッツは不思議な白い船を目にしますが、他には誰も白い船を見た者はいませんでした。
船団の奮戦も、“赤い船団”の脅威を取り除くことはできず、ヴェリティは古のウィズダム王の行動をなぞり、伝説に語られる“旧きもの”に助けを求め、最果ての地への探索行を決意します。ヴェリティは、周囲の反対を押し切って、ブリッチをはじめとする少数の腹心だけを連れ、山の王国を越えた先の古代の街道を目指して出発しますが、その直後、ケトリッケンが身ごもっていることが判明します。ヴェリティの不在とケトリッケンの妊娠によって、リーガルの陰謀はあからさまとなり、バックキープには不穏な空気が漂い始めます。リーガルは内陸の公国の貴族たちと結び、“赤い船団”の脅威にさらされるベアルンズ、リッポンといった海岸諸国には財政のひっ迫を理由に援助もしようとしません。そんな中、支援を要請しに訪れたベアルンズのブロンディ大公に対してケトリッケンは自分の宝石を与え、さらに“赤い船団”の襲撃を受けたリッポンのニートベイを救うため、自ら兵士を率いて駆けつけます。
そんな折、ヴェリティに同行していたブリッツが重傷を負った状態でバックキープに帰還します。ヴェリティの一行は、内陸公国内でリーガルの指示と思われる軍勢に待ち伏せを受け、メンバーのほとんどは死亡し、ヴェリティは単独で探索を続けているといいます。距離が離れたため、フィッツの“技”を使ってもヴェリティと接触することはできず、その生死すら明らかではありません。やがて、リーガルはヴェリティの死を公式に認め、自ら“継ぎの王”に即位しようとします。信じられないフィッツは、シュルード王と精神を融合させることで“技”を強化し、ヴェリティの生存を確認します(もちろん、その事実はリーガルには秘密にしています)。
ケトリッケンとお腹の子供の身を心配するシェイドとフィッツは、数少ない信頼できる面々――ペイシェンスと侍女レイシー、ブリッチに道化――と相談して、シュルード王とケトリッケンをバックキープから連れ出し、安全な場所に匿う計画を立てます。リーガルの即位に合わせて計画は実行に移されますが、意外な内通者の存在から、フィッツは反逆者として捕えられ、拷問の末の死刑を宣告されてしまいます。反逆者を嘲笑しに牢獄を訪れたブリッチは、こっそりフィッツに伝言するのでした……。

第三部「真実の帰還」は、いつか登場。

オススメ度:☆☆☆☆☆




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