裸体の森へ 感情のイコノグラフィー ☆☆

(裸体の森へ 感情のイコノグラフィー / 伊藤 俊治 / ちくま文庫 1988)

1980年代半ば、「20世紀の裸体」をテーマとして、写真雑誌やアート雑誌などに掲載されたエッセイをまとめたものだそうです。基本は「芸術論」「作家論」で、そこに「風俗論」や「文化論」を加味したアカデミックな内容ですから、先日の「乳房論」と同じく、実用(笑)には向きません。もっとも、題材がすべて20世紀のものですから、太古の昔から歴史を概観した「乳房論」よりも、内容的にはかなり過激になっています。
ただ、扱っているアーティストなどにはほとんど馴染がないため(まがりなりにも知識があったのは第5章くらい)、ついていけない部分が多かったように思います。
8章に分かれていますので、各タイトルと簡単な内容をご紹介しておきます。(知識不足のため、とんちんかんな紹介をしているケースもあるかもしれませんが、ご容赦ください(^^;)

1.「フェティシズムの黄金」:19世紀末から20世紀半ばまで、世界各地でつくられたエロチックな写真や絵ハガキを徹底的に収集したコレクター、リチャード・マーキンと、彼のコレクションの集大成である『ベルベット・エデン』について紹介しています。

2.「“愛”のマシニズム」:マン・レイ、ビル・ブラント、ユウジェーヌ・アッジェなどの特異な写真家とその作品を紹介し、ヌードと機械を対照的なものと捉える一方、肉体と機械的なものとの融合といった、エロティシズムを超越した世界を紹介します。

3.「さかしまのヌーディズム」:第一次世界大戦後、ドイツを中心にヌーディストが自然に暮らす村が各地に開かれました。ナチスの台頭により、ドイツのヌーディズムは消滅しましたが、一方ナチスの標榜したアーリア人至上主義の思想は、独自のヌード表現として異様な姿を咲かせました。

4.「二重の箱のなかの裸体」:マルセル・デュシャンの作品を紹介しています。セットを使ったヌード撮影を発展(収束?)させて、仕切られた箱に裸体を閉じ込める一方、見る側が箱の中から外部の裸体を覗き見るという逆転の発想まで、「仕切り」にこだわった写真の数々が見られます。

5.「セックス・シアターのフリークス」:20世紀の100年間を通じて、映画や雑誌で人気となった女性のタイプ(もちろん肉体の)の変遷をつづります。第二次大戦中から戦後のグラマー路線から、「プレイボーイ」誌の創刊、ハードコアなポルノ映画の出現、注目される箇所が上半身から下半身へと変わっていった経緯、そしてニューハーフの出現まで(当時はまだニューハーフと言う言葉はなく「シー・メール(she male)」と呼ばれていたそうです)、などが紹介されています。

6.「キネシクスとボディアート」:自らを被写体としてコスプレ(?)で別人になりきり、様々な女性像を発表しているシンディ・シャーマン、女性ボディビルダーの先駆者として多大な人気を誇るリサ・ライオンという、ふたりの突出した現代の「女性らしさ」の表現手法を分析します。

7.「電気の皮膚、電気の闇」:未来的でテクノロジカルな演出で不可思議な舞台を提供するパフォーマー、ローリー・アンダーソンと、彼女の奔放なパフォーマンスを紹介しています。

8.「痙攣する性の場所」:本来は秘められた場に置かれるべき「性」のイメージを、オープンな公共の場所に堂々と移動させ、ショッキングな情景を描く異能の画家エリック・フィッシュルと、その作品の変遷を紹介しています。

オススメ度:☆☆


裸体の森へ―感情のイコノグラフィー (ちくま文庫) - 俊治, 伊藤
裸体の森へ―感情のイコノグラフィー (ちくま文庫) - 俊治, 伊藤

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