詐欺師の楽園 ☆☆☆

(詐欺師の楽園 / 種村 季弘 / 河出文庫 1990)

同じ著者による「ぺてん師列伝」(未読)の姉妹編。ヨーロッパの歴史を彩った著名な(悪名高い?)詐欺師たちが引き起こした事件を描いたノンフィクションです。この分野では、「詐欺とペテンの大百科」という名著が出ていますが、これは有名な詐欺師の事績から、プラクティカルな詐欺の手口まで、あらゆる「詐欺とペテン」を網羅した百科全書的な内容でした。それに対して、本書は著名な大物に焦点を当て、職業的な詐欺師ばかりでなく、大規模な欺瞞や悪戯で世間を煙に巻いた人物たちまで、ドキュメンタリータッチで紹介しています(というか、語り口は庄司浅水さんの「奇談シリーズ」や牧逸馬さんの「世界怪奇実話」に近い、コクのあるものです)。

章ごとに、簡単に内容を紹介していきましょう。それにしても、どんな稀代の詐欺師も、その末路は哀れなものですね。因果応報と言うべきでしょうか。あるいは、真の詐欺師は世間に知られないまま大成功しているのかもしれません。

「贋エチオピア皇帝の訪れ」:ケンブリッジ大学の学生を中心にした若者グループが、英国海軍を相手に仕掛けた悪ふざけです。悪戯好きのヴェア・コールを中心に、エチオピア皇帝とその側近、通訳に扮した一行が(かのヴァージニア・ウルフも、その一員でした)、演習中の英国艦隊を表敬訪問(?)し、まったく疑われずに国賓待遇の歓迎を受けたという次第。

「バルムベックの王様」:1920年代のハンブルグの暗黒街を牛耳った大盗賊団の首領、アドルフ・ペーターセンの半生記。

「ルーマニアの泥棒英雄」:19世紀末から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパとアメリカをまたにかけ、上流社会を席巻したダンディな泥棒王、ルーマニア生まれのゲオルク・マノレスコの成功の軌跡と数奇な人生を描きます。

「モナ・リザ泥棒」:世紀の名画「モナ・リザ」も、1911年にルーブル美術館から盗まれたことがあります。犯人として疑われたのは、詩人のギヨーム・アポリネールでした。そもそも、今ルーブルにある「モナ・リザ」は本物なのでしょうか?(^^;

「詐欺師の哲学」:薔薇十字団(←この魔術結社そのものが、壮大なペテンだったという話もありますが)のオカルティストを自称して、貴族の婦人たちの間を渡り歩いた性豪カザノヴァの手口とは。

「華やかな鉄仮面」:女装の剣士として、フランス王室の秘密情報員として、18世紀ヨーロッパの外交史に深い爪痕を残したデオン・ド・ボーモン(真の両性具有者だったと言われています)の波乱万丈の人生を紹介します。

「大革命の時計師」:上記ボーモンの同時代人で、ボーモンと対決したこともある“もめごと処理屋”は、元は時計屋ピエール・オーギュスタン・カロンでしたが、長じてボーマルシェと名乗り、オペラとして有名になった「セヴィリャの理髪師」と「フィガロの結婚」の原作を書きました。

「夢の機械魔術師」:19世紀にヨーロッパ各地で様々な魔術を見せ、自動人形の製作にも情熱を燃やしたロベール-ウーダンの半生記。

「悪魔博士の正体」:スピリチュアリズム(心霊主義)華やかなりし20世紀初頭、交霊術を通じて様々な奇蹟を見せたオカルト学者シュレンク=ノッチング。彼が見せた霊現象は、トリックだったのでしょうか。

「二十世紀に蘇る救世主」:イエス・キリストと同じように、手をかざすだけで不治の病人を治したブルーノ・グレーニングの力は、本物の奇跡の力だったのでしょうか。

「顔のない男」:第二次大戦中の上海で死んだチャオ・クン博士と名乗る人物は、世界に神出鬼没の行動を演じ、あまりにも多くの名前や経歴を偽ってきたため、ハンガリー人のイグナツ・トレビッチとして生まれたこと以外、正確な事績が描けないようです。

「史上最大の贋金造り」:大金をつくるには、造幣局へ忍び込んで勝手に紙幣を印刷してしまえばいい――というエピソードが、「ルパン三世」の第一期TVシリーズにありましたが(「罠にかかったルパン」)、それを実際にやってのけた男がいました(笑)。微妙に手口は違いますが、正規の紙幣の印刷所を騙して印刷させたことには変わりありません。

「詐欺師の楽園」:これといった特徴がないのが、真の詐欺師です。(例として挙げられているのが、三億円事件の犯人のモンタージュ。確かに、誰でもあって誰でもなさそうな日本人の顔ですよね)

オススメ度:☆☆☆


詐欺師の楽園 (河出文庫) - 種村 季弘
詐欺師の楽園 (河出文庫) - 種村 季弘

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