宇宙のツァラトゥストラ ☆☆

(宇宙のツァラトゥストラ / 光瀬 龍 / 角川文庫 1978)

いかにも「昭和のSF」です(^^;

東京の中堅商社の営業部に勤める吉田謙造は、幼いころ、雲の切れ間に浮かぶ銀色をした不思議な飛行物体を目撃したことがあります(このエピソードは、短篇集「消えた神の顔」所収の「私のUFO」に描かれている光瀬さんの幼時体験そのものです)。それ以来、謙造には普通人にない能力が芽生え、「知りたくもない真相が見えてしまう」という難儀な人生を送らざるを得なくなっていました。高校時代には、教室で起きた窃盗事件の真犯人が見え、現在では自分の妻・弘子が娘・梨枝の音楽教師と不倫関係を続けている姿がありありと見えています。そして今、会社が社運をかけている提携事業に関して、営業部長が不正を働いていることを知ってしまいました。そのことで不審な態度をとったのを同僚の西村に見とがめられ、しつこく付きまとわれた謙造は、つい「提携が成立するわけがない」と言い放ってしまいます。そのネタを西村が業界誌に暴露し、謙造もあおりを食って会社をクビになってしまいます。
謙造の唯一の気晴らしは、喫茶店でオカルト雑誌に載っているUFO関連の記事を読み漁ることでした。特に目撃者の証言を読んでは、「不思議なものを見たのは自分だけじゃない」と安堵をおぼえるのでした。会社を飛び出したその日も、彼は行きつけの喫茶店で茫然としていましたが、そこに現れたのは、和服姿の妙齢の女性でした。「すま」(それは、口寄せのようなことをしていた曾祖母と同じ名前でした。謙造の曾祖母、吉田すまは、謙造が幼いころ、田舎で何者かに殺されています)と名乗るその女性は、謙造の能力について語り、その能力を持つ少数の人々は、敵対勢力に命を狙われていると警告します。それを証拠立てるように怪しい男たちに襲われたふたりは、初老の白人が運転する高級車で脱出します。運転手の白人男性は、トーマス・マンテルと名乗りました――間違いなく、1948年にケンタッキー州フォートノックス上空でUFOを追跡したまま殉職したと思われていた、マンテル大尉その人でした。実際にはマンテル大尉はUFOの乗員に呼びかけられ、秘密の使命を受けて生き延びていたのでした。彼にも謙造と同様、普通の人には見えないものが見える能力がありました。そして、すま自身も、謙造の曾祖母である吉田すま本人だと、信じられないようなことを言い出します。ふたりに導かれてビルの一室に入った謙造は、太古から続く様々なドラマを垣間見ることになります。
ひとつは室町後期、応仁の乱の直後に京の都の夜を騒がせた怪しい飛行物体にまつわる物語――権勢を誇る日野富子を襲った奇病を払った吉田兼倶は、天から降ったという神器を持ち込み、天皇に上奏します。しかし、兼倶の行動を邪魔する勢力によって、妨害が入ります。
もうひとつは紀元前のイスラエル――村長エゼキエルの前に現れた神の御使い(?)が奇跡を起こし、神がイスラエルの民を迎えに来ることを伝えます。エゼキエルは神の言葉を人々に広めようとしますが、それを妨げる勢力が会いました。狡猾なユダの策略によって、神の計画は成就しないままに終わります。
このような太古から続く真実の歴史を知った謙造は、神々(実は太古の太陽系第5惑星ヤァウェの爆発によって宇宙へ四散した人類の末裔)の計画に協力することになります。小惑星帯に散ってしまっているヤァウェの残骸を超科学の力で呼び集め、復活させようというのです。その計画は、かつての第5惑星の軌道上で、数千年にわたって続けられていました。しかし、現場へ赴いた謙造が目にしたのは、空しい目標に向かって無駄な努力を続ける、衰えゆく古き種族の姿でした。
そして結末は――いかにも「昭和のSF」です。

オススメ度:☆☆



宇宙のツァラトゥストラ (1978年) (角川文庫) - 光瀬 竜
宇宙のツァラトゥストラ (1978年) (角川文庫) - 光瀬 竜

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